道路構造物ジャーナルNET

広島県 広島市、東広島市、竹原市、三原市

平成30年7月豪雨 被災現場を巡る①

公開日:2018.07.30

2.広島市-②
 さて、午後はまず安佐北区と同様、大きな被害を受けた、安芸区の瀬野川に架かる橋梁の損傷状況確認に向かった。同流域では5橋が損傷を受けていることは事前の広島市に対する取材で分かっており、塚地橋、石神橋、中原橋、一貫田橋、川島橋の5橋を取材した。
 最初に訪れたのは「同流域で最も被害が大きかった」(岡本社長)塚地橋だ。塚地橋は3径間の上部工および多数の橋脚が流失していた。それだけでなく「橋梁に流木や土砂が引っ掛かり水をせき止めたことで、多数の家屋が被災した」(付近住民)。


塚地橋 橋脚が無く、流失した桁がさかさまになっている

塚地橋 遠景。家屋も大きな被害をうけた(左)、桁上まで流下物が引っかかっている

 石神橋は左岸側橋台が大きく洗掘され、基礎が露呈していたものの、杭基礎であったため、落橋などの致命的な被害は免れていた。やはり河川に架かる位置にある下部工は杭基礎以上が良い。


石神橋 橋台の洗掘

石神橋 杭基礎だった

 中原橋は右岸側2径間が落橋していた。橋脚は1本中間にあったはずだが見当たらない。おそらくは洗掘でやられ、上部工が落橋したのだと思われる。


中原橋 右岸側2径間が落橋

 一貫田橋は右岸側2径間および橋脚1基が流失している。上流側にある歩道橋は無傷で、車道橋が損傷している。歩道橋の方が径間ごとのスパンが広く、車道橋の方が狭いことから、流木や土砂が車道橋で引っ掛かり橋脚が影響を受けて洗掘ないし倒壊し、桁が落ちたのではないだろうか。護岸には桁が擦った跡が残されていた。


一貫田橋 橋脚が流失し、桁が下に折れている

一貫田橋 横にある歩道橋(左)、桁が擦った後(右)

 最後に訪れた川原橋は、上流に位置する右岸の護岸が大きく損傷していた。落ちていた桁を見るとRC床版橋であり、1本の橋脚で支えていたようだ。上部工および橋脚は全て流失していた。橋台は生きていたことから、橋脚から先行して損傷したパターンであろうか。


川原橋 上部工流失

川原橋 河川内の岩や護岸に床版桁が引っかかっている

3.東広島市
 次いで2号線を北上し、志和ICから山陽道に上がり、河内ICでおり、さらに国道432号を北上して、東広島市の入野駅南にある満願寺橋に向かった。
 同橋は一目で分かるとおり、橋脚が洗掘により沈下している。また、水は桁上に達した形跡があり、両岸ともに橋台背面が大きく抉られている、左岸側は写真のように大きく抉られていた。また、両岸とも広い範囲で浸水の形跡が見て取れたことから、ここでも橋が堰化し、溢水をもたらした可能性は高い。


満願寺橋 橋脚が沈下し桁が下がっている(左)、橋台背面も大きく抉られている(右)

満願寺橋 遠景

4.竹原市
 さらに国道432号を南へ下り、竹原に向かう。目的は事前に同市から教えていただいた上成井橋。しかし、その道すがら、竹原病院から550mほど賀茂川上流にある橋梁の沈下に気付く。賀茂川の右岸に、同川に注ぐ小水路を跨ぐ形で架けられていたその橋は、パイルベント橋脚が完全に沈下していた。下流側の橋台背面も抉られており、小水路の水が溢水し、被害をもたらした可能性がある。


竹原市橋梁被災状況 7月27日、同市提供

パイルベント橋脚が沈下し、桁が下がっている
 そして上成井橋。同橋は竹原中の北側で賀茂川に架かる3径間連続鈑桁橋だ。右岸側の橋脚が沈下しているだけでなく、左岸側の橋脚は下流側に大きくひび割れしており、橋脚半分程度の高さまでまさ土で埋まっていた。


上成井橋 橋脚の沈下、桁が若干下がっている

上成井橋 ひび割れが走っている

 そして不思議な橋梁を示そう。国道432号を再び河内ICに向かって走らせている最中に、竹原市東野町付近で橋台背面の損傷を確認した水の口橋である。損傷は酷いがオーソドックスなものだ。しかし何かおかしい。よく見てみると、橋台はパラペットを護岸に載せただけで、竪壁がない。


水の口橋の損傷状況

水の口橋 内部に竪壁がないのだが・・・・・・

5.三原市
 最後に三原市の下畑橋へ。三原市内から国道432号を北上、国道2号線に分岐して東に向かい、沼田川を渡ったところで県道33号に左折、左に沼田川、右に山陽本線を見つつ、東広島市河内に向かって北上する。すると瀑雪の滝のある手前(南側)にある下畑橋(鋼トラス橋)が左岸側の数径間と橋脚を失っていた。ここも橋脚は無筋の煉瓦を用いた橋脚であった。付近にあるJR山陽本線の線路上には巨岩と倒木が横たわっていた。


ここも無筋橋脚が崩落している

下畑橋(左岸側が流失)

下畑橋付近のJR山陽本線

(2018年7月30日掲載、31日資料追加掲載)
2日目 呉編に続く

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