中日本高速道路は6月12日、中央自動車道伊北IC~岡谷IC間に架かる平出高架橋(上り線)の、大規模リニューアル現場を公開した。同高架橋は1981年3月に供用された橋長約150m、幅員8.5mの4径間連続非合成鈑桁橋。同橋を含む区間は1km当たり年17tの塩分を含む凍結防止材を散布していること、断面交通量35,000台/日(片側17,500台/日)で大型車混入率は29.5%に達している。そうしたことから、疲労や塩害による損傷が進み、平成9年に40mmの床版増厚や防水(GⅠ)を行ったにも関わらず、鉄筋腐食の促進なども見られることから、既設床版を撤去し、新たにプレキャストPC床版に取り換える工事を行っているもの。工期は5月28日~7月13日までの49日間。同時に辰野トンネル上・下線の覆工コンクリートの補強および排水対策工も行った。その現場をレポートした。(井手迫瑞樹)
平出高架橋と辰野トンネルの位置(中日本高速道路提供)
曲線かつ斜角を有する(井手迫瑞樹撮影)
同橋は、曲線かつ斜角(69~82°)を有し、横断勾配も中分から路肩側に4%程度下り勾配を有している。そのため路肩側の床版や地覆、高欄の損傷が大きい。床版・舗装構成は、建設時が床版厚210mm+舗装厚75mmであったのを、平成9年の増厚時に床版厚250mm+舗装50mm(密粒)に変更した。それでも増厚界面に水平ひび割れが見られ、裏面には一部でエフロが発生していた。部分的に鉄筋が溶けて消失しているような所も見つかったという。また両側の張り出し床版水切り部の損傷も激しかった。一方で縦断勾配は0.4%とほぼ無きに等しい構造であった。
床版下面の劣化状況(中日本高速道路提供)
既設床版撤去と新設床版設置
撤去手順は、まず床版上の舗装を切削後、壁高欄・地覆をワイヤーソーで幅4m単位(約4t)に切断し、60tラフタークレーンで吊上げて撤去した。次いで既設床版を橋軸方向に2m強、橋軸直角方向を半割(4.8m)に切断して、160tオールテレーンクレーンで吊上げ撤去(1枚当たり約7t)し、10tダンプ車に積み込み搬出した。既設床版は、油圧ジャッキで床版を剥離させた後、吊り上げるが、現場では少しジャッキアップした後、本格的な剥離の邪魔になるスラブアンカーを床版下からガス切断した上で本格的に剥離させ、桁への負担をなくした。吊上げの際は、飛散防止のシートで外側をくるみ、コンクリートの剥落などによる二次災害を防いでいる。
準備工(左から既設ガードレールの撤去/目隠し版の設置/対面通行規制)(中日本高速道路提供)
舗装切削完了/墨出し/継ぎ目部の切断(中日本高速道路提供)
WJによる継ぎ目部のはつり/既設床版の切断(中日本高速道路提供)
壁高欄ブロックの撤去(中日本高速道路提供)/既設床版の撤去(井手迫瑞樹撮影)
ガラが落ちないように床版下部を覆って運ぶ(井手迫瑞樹撮影)/新設床版の組み立て(中日本高速道路提供)
上フランジ上面のコンクリートの残滓や既設スタッドなどを除去した後、プレキャストPC床版パネル(橋軸1.65×橋軸直角9.620m、11t)を設置する工程を繰り返す。PC床版の揚重はPC床版揚重用治具(300H鋼)と5tチェーンブロックを利用し、4点吊で施工した。
振動問題に配慮
一日当たり既設床版を12枚撤去し、新設床版を6枚設置していく。床版パネルは斜角を考慮して製作しており、端部などで現場打ちをする必要をなくしている。
民家が隣接しているため、騒音(85dB以下に抑制しなければならない)や振動の問題には配慮する必要がある。土日は撤去までで作業をやめ、騒音の出るケレンなどの作業は平日に行う。そのため土日はプレキャストPC床版パネルを架設することができないが、間詰めコンクリートの打設を進めた。
施工は伊北IC側から岡谷JCT側の方向にクレーンを用いての片押しで進めている。昨年の秋に伊北側の2径間分(32枚、約700㎡)は施工を終えており、今回の工事では残り40枚のプレキャストPC床版パネル(約800㎡)を設置する。
片押しで施工した(井手迫瑞樹撮影)