カメレオンコード
現場では床版パネル一枚一枚にバーコードシールのようなものが貼付されていた。これはカメレオンコード(日本で初めてのカラーバーコード技術)というもので、このコードの中に、橋名、(床版の)製造工場、製造日、水中養生開始日および終了日、1週間強度、28日強度、工場出荷日、現場の入着日時、入着時受入担当者、据え付け日、据え付け担当者、出来型調書がデータとして入力されているものでICTを利用して品質管理の一元化を図っている。カメレオンコードそのものは現状、直射日光により2年程度で劣化するが、最終的にはカメレオンコードと床版のロット番号を紐付けることにより、製作時情報をロストせず、維持管理にもつなげていくことができる試みだ。床版でカメレオンコードを用いたのは初めて。
カメレオンコード(井手迫瑞樹撮影)
間詰コンクリートおよびプレキャスト壁高欄
架設後は継手部に間詰コンクリートを打設する。継手部には大林組が開発したスリムファスナーという技術が使われている。間詰コンクリートにスリムクリートという鋼繊維を2vol.%混入した180N/㎟に達する超高強度コンクリートを使用している。継手部の鉄筋は橋軸方向の非接触の重ね継手だけで良くなり、鉄筋同士の接合や橋軸直角方向の配筋も不要とし、かつ継ぎ手長さは210mmと従来よりも各段に短くなっている。スリムクリートは緻密性が高いコンクリートではあるが、100年間の長期耐久性を企図し、床版全面および継手部にはエポキシ樹脂塗装鉄筋(筒井工業、安治川鉄工、ケーティービー)を使用している。また、床版および壁高欄は高炉スラグ微粉末コンクリートを使用している。
スリムファスナー概要図/スリムファスナー継手部(井手迫瑞樹撮影)
スリムクリートは非常に粘り気を有している(井手迫瑞樹撮影)
壁高欄もEMC(Easy Maintenance&Construction)式壁高欄という新しいプレキャスト壁高欄を用いた。同製品は大林組と首都高速、プレキャストガードフェンス協会が開発したもので、高欄と床版、高欄どうしの連結をアンカーボルトおよび曲がりボルトにより接合し、連結後に切り欠き部へ無収縮モルタルを充填して仕上げる簡易な構造であるため、現場打ち壁高欄を製作することに比べて約3分の1まで工期短縮が可能だ。設計条件を大幅に上回る衝突事故が発生して、部分的に高欄が損壊した場合でも、1部材ごとに取り替えることができる維持管理性の高さも特徴だ。現場ではさらに壁高欄の長期耐久性を確実なものとするため、シラン系含浸材(『レジソークTYPE1』)を壁高欄表面に塗布した。
EMC壁高欄の設置及びモルタルの注入(中日本高速道路提供)
EMC壁高欄イメージ
なお、通常床版取替えの際に後追い施工となる間詰、壁高欄および床版と桁を接合するジベル孔充填作業などを床版撤去・架設サイクルに組込むことで7日間の工期短縮を実現している。
床版防水
床版防水は、床版全面2,700㎡をグレードⅡに基づき施工した(今回はニチレキ『HQハイブレンAU』工法)。その後、基層40mmにFB13、表層40mmに高機能舗装Ⅰ型を舗設、路上の現場作業を完了した。防水工は吹き付けにより施工しており、1日450㎡、3日間(6方)で施工を終えた。
床版防水工の施工(プライマー/防水層)(中日本高速道路提供)
接着剤の塗布/珪砂の散布/基層の施工(中日本高速道路提供)
表層の舗設(中日本高速道路提供)
塗替塗装、支承取替
新設時以外では、2004年に3種ケレンで塗り替えている。現在の塗膜構成および厚さは下塗35μm、中塗30μm、上塗25μm、タッチアップ35μmの4層で、基準値以上のコールタール、鉛が検出されている。幸いなことにPCBは基準値を下回っていた。塗替面積は約6千㎡を予定しており、塗り替え方法については今後詰めていく。また、既設支承(P1、P5、P8は鋼製支承、その他はゴム支承)も劣化が進んでいることから全てゴム支承に取り替える予定だ。
元請は大林組・JFEエンジニアリングJV。一次下請はアイチ建運、コンクリートコーリング(カッター)、日本通運、川口組(床版架設)。
(2018年7月25日掲載)