中日本高速道路は6月4日、中津川市の中央道園原IC~中津川ICに架かる松ヶ平橋床版取替工事を報道陣に公開した。同橋は1975年8月に供用された橋長297mの鋼3径間連続非合成鈑桁橋×3連で、床版全面約3千㎡を取り替える。そのほか、支承取替48基、伸縮装置取替4か所、塗替.塗装約6千㎡、新しい検査路の設置約900mもそれぞれ施工する。プレキャスト床版継手部の長さを約半分にし、プレキャスト壁高欄も新たな技術を導入し、徹底した合理化、工期短縮を図っていることが特徴だ。現場での床版取替~舗装までの工期は7月2日までの48日間。その間、同橋前後の約3.5kmは下り線を規制し、上り線を対面通行にする規制を実施した。(文:井手迫瑞樹)
松ヶ平橋の位置図(中日本高速道路提供、資料は以下同)
現場での工事実施内容
供用状況と既設床版の損傷状況
同橋の1日平均交通量は28,700台。大型車混入率は33.2%と高く、目安となる累計10t換算軸数3000万軸を上回っている。また、凍結防止剤の散布量も過去5年間の平均で年間約16t/kmと多く、疲労による影響と、凍結防止剤塩化ナトリウムの影響により(鉄筋近傍値は最大で塩化物イオン量が5kg/㎥に達した)、床版が大きく損傷しており、今回大規模更新事業の一環として床版取替を実施することになった。実際現場で撤去した床版を見てみると「過去に増厚した層で持っている感」(NEXCO中日本)がある。平成10年に5cmの増厚および床版防水工の設置を行っているが、既設床版側は下面が剥落および鉄筋腐食を起こしている。増厚のラインも相当に凹凸があり、かなり劣化が進んでいたことを物語っている。
床版・桁の劣化状況
床版撤去・取替
さて、床版取替の施工は、基本的にまず既設RC床版を撤去、足場を組み、新たにプレキャストPC床版を敷設し、継手部の間詰コンクリートを打設する。壁高欄は長さ方向に床版を3パネル(1パネル=約2m)設置するごとに4m分のプレキャスト壁高欄を配置していた。路線の外には側道がないため、人員や資機材は、全て本線を用いて搬出入した。具体的には中津川エマージェンシーエリアにプレキャスト床版の仮置きヤードを作り、落合チェーンベースに床版の破砕ヤードを設置し、対面通行区間の上下流に出入口を設けて、工事用車両や作業員もそうした個所から出入りしている。
資機材ヤードの計画
床版仮置きヤード(中日本高速道路提供)/仮置き床版(井手迫瑞樹撮影)
作業サイクルは午前中に既設床版を撤去し、昼間に新設プレキャストPC床版の準備工(既設スラブアンカーの撤去や上フランジ上面のケレンなど新設床版架設の準備)を施工、次いで夜間に床版・高欄の架設を実施するという工程を繰り返した。既設床版部はロードカッターで横断方向については2m間隔、縦断方向については構造物の中央で2分割に切断し、高欄部はワイヤーソーで床版部に合わせ2m間隔に切断した。そして2分割した床版(壁高欄付き)をデッキリムーバ―(油圧ジャッキ)を使用して、既設の主桁と床版に反力を取りジャッキアップした。3~10cm程度引き剥がした状態で平板に仮受し、桁と床版を繋ぐスラブアンカー筋をガス切断した後、オールテーレーンクレーンにて吊り上げ撤去していった。
1日間のタイムテーブル
床版の撤去(中日本高速道路提供)/高欄ごと撤去している(井手迫瑞樹撮影)
ケレン作業(中日本高速道路提供)/作業効率を利用して上段足場を作っている(井手迫瑞樹撮影)
足場は通常の2段足場ではなく、作業効率を考慮して、床版撤去後に上段足場を作り、桁上面のケレンなどの作業をしやすくしている。下段足場には、組み立てやすさとフラットな床面など安全性を考慮してエスアールジータカミヤの『スパイダーパネル』を採用している。
既設床版の撤去は、従来、まず壁高欄を切断し、その後に床版を2分割して撤去していたが、この現場では吊り方を工夫することで、壁高欄と床版の半分、床版の残り半分の2分割(2m×5m、最大重量9.566t)で撤去しており手間を大幅に省いた。その後、新設プレキャストPC床版を設置するが、これは全幅(1.85×10.14m、最大重量16.15t)で設置している。
施工は橋梁中央部から両橋台部へ2班に分かれて施工している。これは片押し施工の実績として施工期間約2ヵ月間では橋長200mが限界とされていたことや、今回は対面通行区間が長く、準備・復旧に約半月を要し、本体工事の期間が短くなることから2班体制での施工とした。
配置図
1班当たりで1日12枚(12m分)の既設床版を撤去、6枚(12m分)の新設床版を架設しており、わずか4日間で100m近い取替を実施している。新設プレキャストPCパネルの総数は147枚だが、取材当日までに約6割に当たる87枚の架設が完了していた。
スタッドの打設/床版の設置(中日本高速道路提供)
接合部の打設(左:中日本高速道路提供、右:井手迫瑞樹撮影)