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上部工の追加鋼桁重量は3560t 下部工も全面的に耐震補強

首都高速道路小松川JCT渡河部工事の軌跡

公開日:2018.07.31

橋梁上部工の施工
 小松川JCT河川部の上部工架設は、2非出水期に分けて施工された。
 平成28年度非出水期はA連結路のABR-1(P79~P82)、B連結路のBBR-1およびBBR-2(P78~P82)を施工した。本記事では、P82以降、中川を渡って対岸に至るAP6およびBP6までを架設した平成29年度非出水期を主に記す。


全体平面図

①ベント設置
 架設のため、中央堤防部に6箇所のベントを設置した。基本的に堤防への負荷を最小限にするため、砕石盛土を設けた上でベントを設置している。
 6つのベントのうち、特徴を有するのはB4ベントとB6ベントだ。B4ベントを例にあげて説明すると、41.7mの支間長を有するトラス形式の仮橋「トライアス」を用いて、それを受台に桁架設時のベントを設置した。工事用トラス桁を用いて荒川左岸中堤へ直接反力を載荷することなくAおよびB連結路の新設桁を支えられる構造としている。
 具体的にはトライアスの支点は片方を中堤側、もう片方は河川内に置いている。トライアスは送り出し工法で架設するが、その際にどうしても堤防上にトラス桁組立用支点を設ける必要があった。しかし河川管理者の許可条件で鉛直荷重を10t/㎡以下に載荷重を抑えなければならない条件があり、それを満たすために砕石盛土とベント基礎部のH鋼を増やし反力を分散した。
 トラスを受けるA連結路側のベント高はさほどではないが、B連結路側のベント高が高くなる構造にならざるを得ない。しかし中堤部分はむやみに使えない。それを回避する策として河川内まで仮設桁を突っ込んだ。
 河川側に仮橋を受けるためのベントを設置する上で最初の課題になったのは杭の打ち込み方法だ。杭はH400 を1基礎あたり12本用いた。杭長は42mに達する。
 摩擦支持は見込んでいないにしても、河川内地盤をかき乱す施工はしたくない。そのためWJ併用圧入工法は採らなかった。さらに当地の地盤は河床以下20mぐらいまでがN値3前後で「極端な話、杭を打ってもプリンの中に楊枝を挿すような状態だった」(首都高速道路)。その際に水面上に出ている範囲だけで水平耐力を確保しなければならないことを考慮し、ベントの杭頭部には水平材や斜材を通常より多く入れている。架設はこうした組み立てを水面上でかつ短時間に最大限施工する必要があるため、「大潮の干潮時を見計らって施工した」(IHIインフラシステム)。
 仮橋の上にベントを建てて、連結路桁を支えるにあたって懸念されるのは仮橋のたわみであるが、トラス桁のキャンバーは128mmに設定されており、トラス桁上へ載荷される全ての死荷重が載っても残キャンバーが35%余るように設定しており、作業時の安全性を確保している。

 

②桁架設
 平成29年度非出水期は、P82から中川を渡河する部分である、A連結路の4径間連続鋼床版ラーメン箱桁橋(ABR-2 、P82~AP4間、228.0m)、単純鋼床版鈑桁橋(ABR-3、AP4~AP5間、47.5m)とB連結路の5径間連続鋼床版ラーメン箱桁橋(BBR-3、P82~BP6間、342.5m)を都合20回に分けて架設した(表)。


架設ステップ表

 当初計画では、首都高速7号小松川線と中央環状線を跨ぐ部分の架設のため、8回の通行止めを予定していた。しかし1月20日および2月13日の雪の影響で順番を組み替え、規模を工夫し、6回の通行止めで架設を完了した。7号小松川線のみならず、中央環状線を夜間全面通行止めにして架設するのは、「首都高でもあまり例を見ない規制規模」(首都高速道路)ということだ。
 さて、平成29年度非出水期の架設はA連結路部は全て120t吊FC船と200t吊クレーン付き台船により架設する。また、B連結路部は荒川高水敷が360t吊および550t吊オールテーレンクレーン、中川水域が120t吊FC船および200t吊クレーン付き台船、陸上部を360t吊オールテーレンクレーンによりそれぞれ架設した。とりわけ、河川水域内の架設については、架設ブロック重量が59.1tを超えるような作業は、FCで架設した。A連結路、B連結路ともに起重機船が小松川線をくぐって、上流側や下流側に行く必要があるため、起重機船の無駄な取り回しが極力無いようにした。
 また今回使用している120t吊FCは深田サルベージが保有する『HAKKEI-120』を採用した。河口から現場に搬送する際の横断している橋梁の桁下クリアランスを考えた時に、今回の工事水域に入域可能な最大のクレーンであるため。同FC船は、水面上高さが最大4mに抑えられる。河口では桁下クリアランスが10mあるが、葛西橋が3.7mしかなく、干潮時に通過できるFC船はこれしかなかった。施工もこのクレーンありきで出来る設計とブロック割で考えられている。そのため連結路のわりには小ぶりなブロック架設が多くなった。


平成29年度非出水期施工概要図

 平成29年度非出水期のブロック毎の施工手順は上図の丸数字の順となる。たとえば、B連結路側のBP4橋脚の前後の架設が1番目になって、手前のBP3橋脚の前後が2番目。3番目にBP3~BP4間を架設する。右図において水色で囲っている個所は添接部がボルト接合ではなく、全断面の溶接を示しており、そこからブロックを伸ばしていくような形の計画となる。安全性を考慮した施工計画ありきで設計されているといえる。B連結路側のP2は部分的にデッキおよび下フランジを溶接で繋ぐ構造であり、ここも架設の起点となる。
 もう少し詳細を示すと、B連結路のBP4であればJ30-31とJ32-33の架設はクレーン付き台船で架設、BP4が主桁全断面溶接になる箇所があり、溶接期間も長く要すため、そこを皮切りに作業を進めた。両ブロックは台船上クレーンにより架設した。交通規制と河川規制は、最初の架設で小松川線上り1車線規制と、上りのもう1車線についても先頭固定で本線の交通を一旦遮断して架設した。通行止め回数を減らすため、車線規制と先頭固定をうまく活用している。
 ハイライトの1つは2月27日の架設だ。B連結路J15~J16およびJ16~J19の架設を実施した。中央環状線を跨ぐ部分(ブロック長37m、幅員10m、鋼重163.7t)であり、同線の船堀橋~平井大橋間を22時~翌5時までの間、全面通行止めして行われた。当初はJ15~J16ブロック(ブロック長8m)を2月13日、J16~J19(ブロック長29m)を27日に行う予定だった。しかし、13日の架設は大雪の影響で断念。予備日も同様に流れてしまい、急遽27日に、両ブロックを架設することになった。今回架設する部分は、曲線が厳しい箇所で、本来ならJ15~16ブロックを架設した後、昼間に仕口を詳細に計測して、必要な処置を行い次の架設を行うものだが、今回は同ブロックを架設した後に短時間で計測し、J16~J19ブロックを架設しなければならない難易度が高い施工となった。「仕口合わせに時間を要した時は、最悪の場合、J16~J19ブロックを一度降ろして詳細に計測し、翌日深夜以降にもう一度架設する」(首都高速道路)ことも考慮に入れていたが、実際はスムーズに架設することができた。


J15~J19は2月27日に架設した

 施工は360t吊および550t吊オールテーレンクレーンを使用して架設している。とくに、J16-19の部材は120t大きく、しかも中央環状線の直上で、回転させて作業をなければならず、一番気を使った作業となった。


慎重に架設した

 もうひとつは4月21日深夜に行った小松川JCTのB連結路で7号小松川線と並走する部分J34~J40間の夜間架設である。小松川JCT新設工事では、昨年11月からA連結路(中央環状線→7号小松川線千葉方面)とB連結路の架設を順次行ってきたが、21日の工事はB連結路の河川部架設の最後となった。


桁を吊り上げて移動するFC船/7号小松川線の橋脚上に設置されたベント

 21日当日の夜間架設は、7号小松川線上り線左側車線を20時から1車線規制、22時から都道450号、区道、中川河川敷遊歩道の桁下部分を通行止めにして行われた。
 J34~J38の大ブロック(ブロック長約37.0m、幅3.2m、架設質量115.8t)はFC船による架設を行った。工事水域内に待機していた地組桁積載台船に120t吊FC船を接岸係留して玉掛け、地切り後、台船を引き抜き、0時ごろにFC船をアンカーウインチ操作で架設位置まで移動させた。架設桁を支持するために、7号小松川線の橋脚(AP5)に仮設横梁を設け、その上に高さ7.6mのベント(B5ベント)を予め設置しておいた。梁架台とベント基礎梁は、1架台あたり8本の高力ボルトで接続固定することにより、転倒防止を図っている。また、架設桁が下り勾配となっているため、桁とベントを面受けとするために、ベント上に高力ボルト固定の鋼製キャンバー材を用いて対応している。


仮設横梁を設けてその上にベントを立てた

 こうしたベントを採用した理由は「仮に同ベントがないと、FC船で吊ったまま、J34の添接をせねばならず、天候も考慮するとそうした事態は避けたいため」(IHIインフラシステム)としている。J39~J40張出ブロック(ブロック長9.2m、架設質量30.1t)は、河川左側の陸上ヤードから550t吊クレーンで吊上げ、22時すぎに7号小松川線上を旋回して、J40側の閉合を行った。クレーン旋回時は7号小松川線上下線の一時通行規制を行っている。J38~J39落し込みブロック(ブロック長9.1m、架設質量32.9t)も、0時すぎにJ39~J40と同様の方法で吊り上げ、旋回を行った。0時10分過ぎからのJ34~J38の架設、桁固定後、落し込みを行い、1時10分過ぎに完了した。その後、J37~J40の側床版の架設を行っている。


架設地に近づくFC船/J39~J40間のブロック架設

旋回中のJ38~J39間ブロック/FC船も近づき架設へ

J38~J39間ブロックの落としこみ/落とし込みが完了し連結した状況

 5月11日夜には小松川JCTのA連結路(中央環状線→7号小松川線千葉方面)で一級河川中川上のJ14~J18間の架設を行い、河川部工事の桁架設はすべてを完了した。


5月11日の施工状況

今後は舗装工などを進めていく予定だ。

施工はIHIインフラシステム大成建設JV。
(2018年7月31日掲載)

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