東日本高速道路(NEXCO東日本)は、道央自動車道の恵庭IC~北広島IC間に架かる島松川橋(上り線)で床版取替工事を実施した。同区間は札幌と新千歳空港を結ぶ路線に位置するため、交通量が約39,500台/日(大型車混入率約16%)と北海道内でも重交通となっている。そのため、片側1車線の対面通行規制では工事期間中、連日激しい渋滞が発生することが予測されたことから、全国で初めて時間帯により規制車線数を変更する運用を行った。
塩化物イオン量の最大値は8.7 kg/m3
床版取替対象は橋梁全面積の3,469㎡
橋梁概要と既設床版の損傷状況
島松川橋(上り線)は橋長306.75m、有効幅員11.3mの鋼4径間連続鈑桁橋×2連で、1971年の供用から約47年が経過している。勾配は橋軸方向が0.9~1.6%、橋軸直角方向が2%となっている。
位置図と島松川橋(NEXCO東日本提供、注釈なき場合は同)
島松川橋 橋梁一般図
既設RC床版の厚さは210mmで、2003年に現在のグレードⅠに相当する防水工を敷設した。凍結防止剤の散布量は平均35.5t/㎞・年(2017年度 札幌JCT~新千歳空港IC間の平均散布量)と多く、パネル中央部での塩化物イオン量はA1~P4の最大値が8.7 kg/m3(平均2.6 kg/m3)、P4~A2では最大値7.7 kg/m3(平均2.9 kg/m3)に達していた。
凍結防止剤と車両の大型化による輪荷重の繰り返しが原因と推測される既設床版の損傷は走行車線側に多く発生していた。床版上面ではコンクリートの土砂化や一部に発錆をともなう鉄筋露出、床版下面ではうき・剥離のほか、エフロレッセンスをともなう亀甲状のひび割れが見られた。エフロレッセンスはつらら状まで進展しているものもあった。舗装面にはポッドホールが多く発生していた。
床版下面の損傷状況
床版上面の損傷状況と舗装面の状況
このような損傷状況から、同橋では大規模更新事業として床版取替をA1~A2の全面積(3,469㎡)で行うこととした。
交通量にあわせ午前と午後で車線数を変更
ロードジッパーシステムにより約15分で車線切替完了
通行規制の方法
工事期間中の5月29日から7月10日までの43日間、2.2kmにわたり終日対面通行規制を行った。施工現場となる恵庭IC~北広島IC間では、千歳方向の上り線が午前7時台に時間交通量2,070台/時(平日/昨年同時期の平均)とピークになり、その後交通量は減少していく。札幌方向の下り線はその反対で午後から交通量が増加して、午後5時台に時間交通量1,983台/時のピークを迎える。土曜日も平日と同じ傾向で、日曜日は上下線ともに午後に交通量が増加する。
平日の平均時間交通量
(左)土曜日の平均時間交通量 (右)日曜日・祝日の平均時間交通量
片側1車線の終日対面通行規制とした場合、1車線の交通容量1,400台/時を超えることから「上り線では午前中に、下り線では午後に渋滞が発生することが予測された」(NEXCO東日本)。渋滞発生予測は工事期間43日間のうち、上り線は42日、下り線は33日で、最大18kmとなった。
その渋滞を回避するためにNEXCO東日本では、全国で初めてロードジッパーシステムを活用した時間帯別車線運用を行った。現況の路肩幅員が3.25mであったことから、車線幅員を通常の3.5mから3.25mとして規制を行わない下り線に3車線を確保。午前に交通量が多い上り線を夜1時から昼12時までの間2車線(下り線1車線)とし、昼1時から夜12時までの間は下り線を2車線にして夕方の交通量増加に対応した。この時間帯別運用は月曜日から土曜日まで行い、日曜日は新千歳空港への定時性確保の観点から終日、上り線を2車線とした。
車線運用図
車線切替は昼12時から昼1時までと夜12時から夜1時までの各1時間で行ったが、移動式防護柵(ロードジッパーシステム)によってそれが可能となった。仮設中央分離帯として、1基あたり延長1,000×高さ810×幅460mm、重量680kgのコンクリート製防護柵を設置。それを中央分離帯のヤードに待機していた防護柵切替用車両(BTM:Barrier Transfer Machine)を用いて移動することで車線を切替えた。BTMは時速約10kmで走行し、仮設中央分離帯1.7kmを約15分で完了させることができた。運用はグループ会社のネクスコ・メンテナンス北海道が担当した。また、コンクリート製防護柵を使用することで、中央分離帯突破事故を回避することができ、安全性向上が図られた。
コンクリート製防護柵
BTMによる車線切替作業。通行止めを行うことなく、車線を切替える
時間帯別車線運用を行った結果、平日は対面通行規制が原因となる渋滞は発生せず、その効果は非常に大きかった。
渋滞削減効果。平日は対面通行規制が原因となる渋滞は発生しなかった