中日本高速道路(NEXCO中日本)八王子支社は、中央自動車道の調布ICランプ橋で床版取替工事を行っている。対象は、国道20号八王子方面へのOFFランプのGランプ橋と同新宿方面からのONランプのHランプ橋で、現在、Gランプ橋での工事が進められている。ランプ橋の床版取替工事はNEXCO中日本では初めてであり、高速道路リニューアルプロジェクトとして行われている同橋工事の現場ルポをまとめた。
橋長20.8m、供用後51年が経過
平成28年に床版補強工実施も下面全体にひび割れが点在
橋梁概要と損傷状況
調布ICランプ橋(Gランプ橋)は、昭和42年の供用から51年が経過している橋長20.8m、幅員7.6mの鋼単純箱桁橋(開断面)。今回の床版取替はそのほぼ全長(157.3㎡)が対象となっている。調布IC出入り交通量は、平成28年実績で約28,000台/日で、大型車混入率は約11%である。
位置図と橋梁図(注釈なきはNEXCO中日本提供)
施工前のGランプ橋
既設RC床版の厚さは160mmで、その薄さから輪荷重によるものと思われる疲労損傷が発生している。床版下面の一部では、遊離石灰をともなう亀甲状のひび割れが生じて剥離、鉄筋腐食が発生したことから平成28年1月に床版補強工事を実施した。損傷部に鋼板接着し、その鋼板を補強材(架台)で支える手法とした。
(左)鋼板接着と補強材による床版補強 (右)補強部材撤去後の状況
現況では中間床版上面全体に浮きが点在しており、下面にはひび割れや鉄筋露出が発生している。さらに、上鉄筋に沿って水平方向約1mm幅のひび割れが見られたほか、床版コンクリートのひび割れからの漏水により箱桁内も補剛材の腐食、塗膜のはがれなどの損傷が生じている。舗装面は全面的にひび割れが発生している状況だった。
床版下面の損傷状況
箱桁内の状況
舗装の損傷状況
クレーンの旋回半径は約26m
既設床版は小ブロックに分割して撤去
既設床版の撤去
同橋は交通量約40,000台/日の国道20号上に架橋されているため、本工事全体を通して「国道上に絶対にモノを落とさないこと」(元請のショーボンド建設)が求められた。そのため、落下防止対策と安全対策が極めて重要となり、既設床版の撤去でもその対応が行われた。
Gランプ橋の既設床版の撤去は、床版補強工で設置した補強材の撤去を2月1日から開始し、舗装切削、吊上げボルト用のコア削孔、地覆撤去などの後、2月22日から3月17日(実働18日)まで行った。
撤去にあたっては、「安全上からクレーンを国道上に旋回させることができなかったため、作業半径が約26mとなり、吊上げることができるブロック重量は約2tが限界」(同)となった。吊上げ重量の制限があったことで、撤去ブロックはスタッドジベルの位置によりサイズの違いはあるが、およそ橋軸方向2m×橋軸直角方向2mの小ブロックとして、全部で51ブロックとなった。これをランプのループ部に設置した75tラフタークレーンで、近接する供用中のランプに影響を与えない高さの1m程度まで吊上げ、旋回させて撤去している。
コンクリートカッターによる既設床版切断。小ブロックに分割した
クレーンでの既設床版吊上げ
張出床版の撤去では、H鋼を井桁に組んだ吊り冶具を使用して、ワイヤーが万一切れた場合でも吊り冶具が中間床版にかかることで落下を防ぐ安全対策を行った。また、国道上にコンクリートガラだけでなく、水も落とさないようにするために、乾式のワイヤーソーを使用して、床版や地覆などのコンクリート切断を行っている。
フェールセーフとして吊り冶具を使用した
乾式(無水)ワイヤーソーでの切断を行った
既設床版撤去後、桁上に残ったコンクリートなどはすべて手はつりで行った。スタッドジベルをワイヤーソーでコア削孔部とともに水平切断することも検討したが、最終的に一番安全に施工できる手はつりとしている。桁上のケレンは8人体制で行い、約1週間で完了している。
桁上ケレン作業