主桁撤去は中央径間と側径間で別工法を採用
東京都 中央防波堤の廃棄物運搬関連車両専用橋・中潮橋を撤去
側径間の主桁73mは台船併用の引き出し工法で撤去
エンドレスローラー2台を用いて引き出し
側径間の主桁撤去
側径間の主桁撤去は、台船併用の引き出し工法で行った。中央径間の主桁撤去で用いた撤去用梁材での施工では、カウンターウエイトなどの反力管理が難しく、また2本目の主桁撤去への段取り替えにも時間がかかるうえに、陸上部のヤードが狭く工程調整が困難なため、工程を重視して採用した。工程は、主桁吊上げ、台船とエンドレスローラー(送り装置)挿入、主桁降下、主桁移動となっており、北径間西側、南径間東側、北径間東側、南径間西側の順番で撤去していった。
側径間の主桁撤去概要
北径間の撤去では、P1とA1側に門構を設置して、横行レール上にセットしたセンターホールジャッキで、P1側は台船が、A1側は橋台上の両脇に2台設置したエンドレスローラーが挿入できる高さまで主桁を吊上げた。干潮時に300t積台船の挿入を行い、潮の満ちていくタイミングに合わせて主桁を降下して、台船上のベントとエンドレスローラーへの受換えを行った。
潮の干満がなくなる満潮時に、エンドレスローラーを駆動させ主桁移動を開始したが、台船上の主桁端部のぶれを抑えるのに苦労したという。また、陸上部のヤードの長さが40m程度と余裕がなく、桁長73mの主桁を引き出すためには細かな工程管理が必要になった。そこで、約36m陸上部に引き出した段階で、主桁先端部約15mを一度切断して、200t吊クローラークレーンで撤去を行った。先端部撤去後は主桁にカウンターウエイト30tを載せて、引き出した主桁の安定化を図っている。
主桁の降下とエンドレスローラー
陸上部への引き出し
A1側に移動してきた台船付近の主桁は200t吊クローラークレーンで吊上げ、エンドレスローラーでさらに陸上部に移動させた。その後、台船から縁を切り、200t吊クローラークレーンで仮吊りをしながら、陸上部に主桁を移動した。陸上部に引き出した主桁は、カウンターウエイトでバランスをとりながら、切断する作業を繰り返し、橋軸方向に5分割して撤去と解体をおこなった。
クレーンでの仮吊り
陸上部の主桁と切断
側径間主桁撤去後
側径間盛替では事前にベントに圧力をかけ検証
個別工程
中央径間の張出床版は、安全に撤去できる荷重を確認するためにまず7t程度のピースで試し吊りをした後、全体約100mの撤去を行っている。中央床版は中央径間100mのうち40mを3ブロックに分割して200t吊クローラークレーンで吊上げ、撤去を完了している。片持桁は200t吊クローラークレーンで吊上げ、8ブロックに分割して撤去を行った。
中央径間の張出床版撤去と完了時
中央径間の中央床版の撤去
(左)中央径間の中央床版の撤去(完了)(右)片持桁の撤去
橋脚(P1・P2)の撤去は汚濁防止膜を設置して環境対策を行った後、まずは支承部に絡まない橋脚部をワイヤーソーで切断。切断は、橋脚R部両側と中央部に3分割、鉛直方向に2分割と合計6分割としている。
汚濁防止膜
橋脚部撤去
側径間の盛替では、海中ベントを設置しているが、基礎が十分な強度を保持しているかを確認するために、基礎からテストピースを採取して圧縮強度試験を実施して安全性を確認している。側径間の鋼材重量が600tで、橋上にクレーンを載せ、約60tの橋脚ブロックの吊上げ、旋回作業をすることになるので、設計段階でベントの荷重、応力、耐力の確認を行ったが、その照査にも非常に苦労している。盛替前には油圧ジャッキで側径間の荷重と同程度の圧力をベントの8箇所にかけて検証を行っている。さらに、底部が斜めになっている箱桁とベント上のH鋼に均等に荷重を伝達するために、硬木を加工して面受けできるようにして、盛替を完了させた。その後、支承部を切り離し、撤去を行った。
側径間の中間床版は、20m+20m+30.3mの3ブロックに分割して撤去している。
盛替完了
現場環境では、「東京オリンピック・パラリンピックの海の森水上競技場の工事エリア内であったために他工事との調整や、海上での作業で風が強かったこと、陸上部の限られたヤードなどにより、施工の安全確保が大きな課題だった」(エム・テック)という。
元請はエムテック・高橋組興業JV。
(2018年5月25日掲載 大柴功治)