床版撤去および取替を10日で完了
ケレン作業は非常な苦労を伴う
床版取替の工程と詳細
床版の撤去・取替は1月中旬~3月末にかけて金武IC~許田IC間を対面通行規制して施工した。
同橋は端支点上で斜角を有するが、角度はそんなに大きくない(85°)。PC床版の数量は103枚。一枚当たりの大きさは11.7t、幅員10.15m×1.94m。版割ピッチは2.2m。撤去版は(半割のため)幅が4.8m、長さが1950mm、重さは6t。地覆・高欄は別途事前に切断撤去した。撤去・架設とも2班で中央から両側に施工する形で2台のクローラークレーン(120t吊)と施工班を入れて対応した。撤去チームは8人×2班、架設チームは5人×2班。10日間で床版を撤去・架設は完了させた。
既設床版ハンチ部/既設床版のジャッキアップ
既設床版の撤去
既設床版撤去直後の上フランジ部/上フランジ部に残る錆
既設床版の撤去は、まず舗装を撤去したのち、地覆・高欄を水平カッターで切断して撤去し、床版をロードカッターで切断した上でジャッキを使用して剥がし、撤去できない部分(縦桁上フランジ上面のずれ止め部など)はハツリやケレン処理を行い、新しいPC床版を架設するという作業を10日間繰り返す。
ここではケレン作業に非常な苦労が伴った。上フランジに設置された縦リブにハンチ筋が通してあるため、床版を剥ぎ取る時に縦桁上面のコンクリートがほとんど残ってしまう。そのためこのコンクリートを除去しないと、ハンチ筋が取れない。ジャッキで剥がしては、コンクリートをハツリ取り、鉄筋をガス切断するという工程で床版を撤去していった。もう一つの難所は、既設床版と縦桁の接合部にグレーチング床版底面の型枠として溶接され、そのまま残置されていた鉄板が非常に取りづらいことだ。「平鏨(ひらたがね)でばりばり叩いてめくっていくしかなく、このケレンには凄く時間がかかった」(川田建設)。福地川橋の縦桁のリブは一般の鈑桁より大きく、ピッチが短く、したがって溶接個所も多いため、非常に作業効率を悪くした。「既設床版の撤去が作業開始8時で11時までに終わったとしても、残部のハツリやハンチ筋の切断、上フランジのケレンで夕方の17時ぐらいまでかかってしまう」(同)。施工は、音が出るため日中に行い、片側当たり1日で12枚撤去した。
非常に手のかかる上フランジのケレン作業(井手迫瑞樹撮影)
非常に手のかかる上フランジのケレン作業②(井手迫瑞樹撮影)
PC床版の架設は21時から開始し23時半から24時までに作業を終えた。1日、片側6枚ずつ1日12枚設置した。PC床版と主桁はジベルで接合する。ジベル接合部は無収縮モルタルを打設する。施工時のノロ止め材は「モルトメールタイプK(クリヤマ)」を使った。同製品の型枠素材はポリウレタンフォームで、PC床版製作工場で架設実験を行い何種類か試し、形状も確認した上で決定した。PC床版同士の継手はKK合理化継手を採用した。床版継手幅は280mmと通常のループ継手に比べて50mm程度短くできる。PC床版継手部の間詰のコンクリートは50-21-20 Nで、高炉スラグ微粉末「エスメントスーパー60G」(日鉄住金高炉セメント製、50%置換)と膨張材「ハイパーエクスパン構造用」(太平洋マテリアル、20kg/m3)を採用した。エポキシ樹脂塗装鉄筋はPC床版・間詰、地覆・高欄全てで使用。PC床版および継手部の鉄筋はMKエポザク、現場打ちの間詰部、高欄・地覆鉄筋は地元の沖縄コーテック製を採用した。
プレキャストPC床版の架設
架設が完了したPC床版
KK合理化継手(井手迫瑞樹撮影)
間詰コンクリート部の養生(井手迫瑞樹撮影)
またコンクリートの長寿命化対策として、PC床版下面に工場製作時に「アクアシール1400」を、既設橋台の改良部ではパラペットをWJでハツリ取った後の水平の打ち継ぎ目処理に、「アクアシール2000」をマクロセル対策として使っている。桁端部と橋脚支点上の桁折れ点部は、扇形の異形PC床版で対応しており、場所打ち部の増加を抑制している。
地覆壁高欄のコンクリートは全て現場打ちで、2橋合わせると1km近くあるため労務を集めるのに苦労したが、工程通りに打設を完了することができた。地覆壁高欄コンクリートの初期ひび割れを抑制するためハイパーネットを入れている。伸縮装置は、橋梁メンテナンスのKMAジョイントを採用している。
地覆壁高欄の打設が完了したのち、最後に高性能床版防水工と舗装を施工する。
床版防水はダイフレックスの「レジテクトGS-M工法」を採用している。同工法を採用した理由は、珪砂を撒いて清掃する必要がなく工程を1日短縮できるためである。防水工の品質を高めるために3年前に明治山第二橋、第三橋で施工を担った業者(沖縄古賀防水工業)を採用した。舗装はレベリング層がFB13、表層が高機能舗装Ⅰ型を採用している。床版面積は2橋合計で4590㎡に達する。福地川橋だけでも2389㎡(防水は2000㎡強)だった。
高性能床版防水はレジテクトGS-M工法を採用した
施工が完了した福地川橋
今後は、塗替塗装や検査路の設置を行っていく。検査路は、現場の環境を考慮してFRP製検査路(宮地エンジニアリング)を設置する方針だ。また、塗替え面積は16442㎡で、既設塗膜のケレンは、3種の予定。一部の錆は硬く、鏨でハツリ、砥石で削り込まないと除去できない状況。既設塗膜には鉛が含有しており、作業者の安全や環境への配慮は万全の対策を採る。施工は沖縄神洋ペイント、塗料は関西ペイントとなる。縦桁端部は増し塗し、伸縮受台コンクリートは表面保護(塗装)工(ダイナミックレジン ストロンガードUコート工法(アイカ工業))、道路上のはく落防止工として、(ダイナミックレジン クリアタフレジン工法(アイカ工業))を施す予定だ。
元請は川田建設、一次下請は床版取替およびカッター工がトラスト工業(二次下請は丸尾組およびダイヤモンド工業)、足場工・検査路工がテックダイユウ、クレーンは天久重機。
(2018年4月16日更新)