供用後50年を経過する橋梁は20年後には77%に
広島県 東広島高田道路(向原吉田道路)などの整備を推進
4,259橋、155トンネルを管理
供用後50年を経過する橋梁は2,276橋
保全
現在の管内の橋梁およびトンネルの内訳
広島県で管理している橋梁は4,259橋となる。1910年代から1950年代に460橋が、1960年代には722橋が供用され、平成29年度末時点で供用後50年を経過する橋梁は2,276橋(53%)である。20年後には3,260橋(77%)となり、急速に高齢化が進行することになる。
橋種別では、鋼橋が585橋(13.7%)、PC橋が1,151橋(27.0%)、RC橋が1,277橋(30.0%)、ボックスカルバート1,162橋、横断歩道橋82橋、その他2橋となっている。橋長別では、2m以上15m未満が2,944橋と約7割を占め、15m以上50m未満が965橋、50m以上100m未満が220橋で、100m以上の長大橋が130橋となる。路線別では、一般国道に架橋しているものが1,200橋、主要地方道が1,401橋、一般県道が1,658橋となっている。
同県が管理しているトンネルは155本を有する。1990年代以降に供用されたトンネルは66本だが、供用後50年以上経過したトンネルも平成29年度末で31本あり、20年後には80本までに増加する。工法別ではNATMが115本、矢板工法が40本で、延長別では500m未満が125本、500m以上1km未満が21本、1km以上3km未満が8本、3km以上が1本となっている。
早期措置段階の橋梁は約13.4%
トンネルは平成30年度までにすべての対策完了予定
点検を進めてみての損傷状況
平成25~29年度の鋼橋、PC橋およびRC橋の点検結果から橋梁の健全度は、対象橋梁3,013橋のうち判定区分Ⅰ(健全)が約39.1%、判定区分Ⅱ(予防保全段階)が約47.5%、判定区分Ⅲ(早期措置段階)が約13.4%で、判定区分Ⅳ(緊急措置段階)とされた橋梁はなかった。
内訳では、鋼橋でⅠが148橋、Ⅱが344橋、Ⅲが93橋、PC橋でⅠが664橋、Ⅱが413橋、Ⅲが74橋、RC橋でⅠが365橋、Ⅱが675橋、Ⅲが237橋だった。
実際の損傷事例では、鋼橋の桁で経年劣化や漏水、塩害が原因と考えられる防食機能の劣化が確認されている。コンクリート橋の桁部の損傷では、中性化や塩害、またはアルカリ骨材反応が原因と推察されるひび割れ、剥離、鉄筋露出、浮きが発生している。ひび割れについては活荷重などの外力もひとつの原因となっている。床版部も中性化、塩害、アルカリ骨材反応が原因と考えられる剥離、鉄筋露出、浮きが見られている。
損傷状況事例 鉄筋露出(江の浦橋)とひび割れ(翠橋)
トンネルの健全度は、Ⅰが12.9%(20本)、Ⅱが40%(62本)、Ⅲが47.1%(73本)で(Ⅳはなし)、平成30年度にすべての対策が完了する予定になっている。損傷は、各スパンでの評価となるが、覆工コンクリートのひび割れ、浮き、剥離に加え、変形や沈下、鋼材の腐食が一部で確認されている。原因としては、地山からの圧などの外力や材料劣化、予期せぬ漏水が考えられている。
トンネルの損傷状況事例 ひび割れと浮き
昭和55年以前の橋梁は耐震性能3対応が概ね完了
長寿命化修繕計画では2023年度までに判定区分Ⅲを解消
耐震補強の進捗状況
平成17度に国土交通省で策定された「緊急輸送道路の橋梁耐震補強3箇年プログラム」に基づいて、兵庫県南部地震で被害が大きかった昭和55年以前の基準で整備された橋梁のうち、緊急輸送道路上の橋長15m以上について、地震により落橋、倒壊しないレベル(耐震性能3)での対策を進めてきた。平成27年度までに、昭和55年以前の橋梁の耐震性能3の対策は概ね完了している。
現在は熊本地震などをふまえて、地震による損傷が限定的なものに留まり、橋としての機能の回復が速やかに行えるレベル(耐震性能2)への向上を進めているところで、今後は耐震性能2で管理していく予定となっている。平成29年度には、耐震性能2への向上のための耐震補強として落橋防止装置の設置を国道186号の翠橋ほか3橋で実施している。昭和55年以降の基準で整備された橋梁については、耐震性能の照査をしてから必要な対策をしていく予定だ。なお、熊本地震で崩落したロッキング橋脚タイプの県管理の橋梁はなしとなっている。
耐震補強事例 三原大橋 (左)施行前/(右)施工後
橋梁長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況
広島県では進捗状況を判定区分I・Ⅱの占める割合で管理していて、平成26年度時点でI・Ⅱの割合は87.9%である。それを2023年度までに100%とする、すなわち判定区分Ⅲをすべて解消する計画としている。平成29年度現在、Ⅲの橋梁数は438橋でI・Ⅱの占める割合では89.7%となっている。平成26年度からの近接目視点検により、Ⅲの橋梁が増えてきているが、現状では計画どおりに対策が進捗している。
具体的な対策事例としては、尾道水道を渡海する尾道大橋(橋長386.4m、3径間連続鋼床版2主桁斜張橋)で塗装塗替え工事を実施している。平成25年度の点検で塗装の割れと塗膜劣化が確認されたことから、平成27年度から平成31年度まで施工するもので、総面積は約25,000㎡。平成29年度はJR山陽本線を跨ぐ部分についてJR西日本に工事委託をして塗装塗替えを行っている。
尾道大橋
尾道大橋 塗装塗替え工事
経年劣化や疲労による上部工補修・補強については、平成27年度に61橋、平成28年度に43橋、平成29年度に43橋施工している。鋼床版の疲労き裂による補修実績は近年ではない。また、床版防水工は既設橋梁の補修として行う場合、部分的な補修が多く、現場環境によるが塗膜系防水での施工が多い。
上部工補修・補強 大長大橋 (左)施工前/(右)施工後
塩害、アルカリ骨材反応による劣化状況
平成28・29年度で補修・補強工事を実施する橋梁のうち、塩害、アルカリ骨材反応による劣化に対する補修工事を行っている事例は出ている。症状としては、コンクリートのひび割れやボックスカルバートでの断面欠損などである。
国道182号の道上陸橋では、床版、主桁、橋脚、橋台において塩化物イオン濃度が高く測定されたことから、亜硝酸リチウム(エレホン アルガード)を用いた表面含浸工および高分子系浸透性防水材(アイゾールEX)による表面被覆工の対策を行っている。
支承・伸縮装置の交換
支承交換については、平成29年度の実施はない。伸縮装置については、平成29年度は15箇所で交換を行い、そのうちゴム製への交換が3箇所、埋設ジョイントが4箇所となっている。
鋼橋塗替え 平成29年度は11橋約11,400㎡で実施
塗膜除去でインバイロワン工法を採用も
鋼橋の塗替え
平成28年度は一般県道水呑手城線の入江大橋(6,100㎡)ほか13橋で約18,400㎡、平成29年度は国道433号の式敷大橋(3,270㎡)ほか11橋で約11,400㎡の塗替えを実施している。
塗装塗替え事例 轟大橋(左)施工前/(右)施工後
塗膜除去は、ブラスト工法やディスクサンダーなどの電動工具を用いた従来の処理工法のほか、インバイロワン工法を採用した事例もある。
塗膜除去実施時にPCB含有が見込まれる場合は、案件ごとに含有試験を実施している。PCB含有が判明した場合は無害化処理施設に適切に搬入して処分を行っている。
耐候性鋼材の採用
既設橋では13橋で採用されている。点検結果では、判定区分Ⅰが9橋でⅡが4橋となっており、著しい損傷は見られていない。
のり面防災対策
平成25年度と平成27年度に合計9,171箇所ののり面点検を実施している。550箇所の要対策箇所が確認され、平成28年度末時点で56箇所の対策が完了している状況だ。主な対策工法は、落石対策としてストーンガード、ロックネット、のり面崩壊対策としてのり枠工が多い。
のり面防災対策事例 落石防止網
新技術の活用
平成26年度に「広島県長寿命化技術活用制度」を設置し、維持管理と長寿命化に資する技術の発掘を目指している。申請された技術は、年に1、2回開催される検討委員会で有識者の意見を聞き、審査会でその意見を反映して登録決定の判断をしている。登録期間は3年間で、その後は更新となり、現在は65技術が登録されている。
活用促進として、展示会と技術のプレゼンテーションを行う「長寿命技術フェア」を3回実施しているほか、平成29年度からは共通仕様書に比較対象として加えることを盛り込んでいる。
(2018年4月5日掲載 大柴功治)