県道川崎町田との交差部
横浜市 高速横浜環状北西線で多軸式特殊台車を用いて夜間一括架設
横浜市が建設を進めている高速横浜環状北西線(東方・川向地区)の橋梁上部工において、県道川崎町田を交差する個所の夜間桁架設工事が、1月13日および20日の2回に分けて行われた。同工事は多軸式特殊台車を用いて施工されたもので、横浜市で同様の工事は近年珍しいという。初日の内回り桁の夜間架設には元請20人、橋梁鳶14人、クレーンおよび多軸式特殊台車に18人が携わった。(文・写真 井手迫瑞樹)
内回り架設計画図(横浜市提供)
本工事は鋼7径間連続細幅箱桁橋(合成床版)の内回り、外回りの2本の桁を架設するもの。下部工は8基のうち、5基で鋼製門型ラーメン橋脚を採用しており、鋼重は合計で4213tに達する。現在は下部工と、PH本4~PH本5の桁架設を完了している状況で、今回の夜間架設は、県道を跨ぐAH本1(橋台)~PH本1間45.2mの内回りおよび外回りの桁を2夜間で架けるものだ。桁は前日までに地組およびベント架設までを完了している。当日は桁長45.2m、桁架設重量240t、仮設機材も合わせると520tに達する桁を、6軸の多軸式特殊台車2両(最大積載重量490t)を前後に配置し、積載重量比を53%に抑制し、安全に配慮している。多軸式特殊台車の移動速度は分速2m程度で約39mの距離を送り出す。記者が取材した1回目の架設は午前零時ごろに交通規制を完了させ、前方に配置される多軸式特殊台車がヤード内から発進し、所定の位置に到達、ベントから台車側に荷重を盛り替えた後、1時ごろから10分程度でまず13.5m程度移動した。当地の路面はある程度平たんではあるが、それでも微妙な高低差を有している。その不陸に対応するため、多軸式特殊台車は上下にそれぞれ300mmのストロークがあり、最大600mmの高低差に対応できる機構を有しており、それが機能することで、桁そのものの水平を保ちながら移動することを可能にしている。
上写真および下左写真:所定の位置まで移動する前方台車/後方台車
何重にも安全対策を施す/所定の位置に前方台車が到達し移動開始
13.5m移動後、盛替えを始める/いったん台車を開放し、所定の箇所へ移動
これだけ下がる
13.5m移動後は、前方台車の位置をやや後方に移動させて盛り替えた。このまま進むと台車の位置が到達側の橋台に近くなりすぎるためだ。2回目の盛替えは少し時間を要し、盛替え開始から約1時間半経過後の3時前に再び移動を開始、25.5m移動して3時半ごろには、先端が橋台直上に達した。ここで課題は、PH1からAH1にかけては最大3.0%の下り勾配が存在することだ。桁の転倒を防ぐために後方台車に特殊なストッパーを設けているほか、桁の前後には橋軸および橋軸直角方向にH鋼を配置して滑動防止装置を設置している。
前方台車に桁を再び載荷して、2度目の送り出しを開始
徐々に近づき、ほぼ到達。後は降下させるだけ
所定の位置に到達後は、桁を降下して下部工に据え付ける作業が必要になる。通常は油圧ジャッキとサンドルで徐々に降下させるが、「時間内での作業完了を確実なものにするために」(元請の宮地・古河JV)、ここではストローク2,100mmのデッキリフトを前後台車に配置し、迅速な降下作業を可能にした。その際、降下作業中に桁の勾配が変化するため、桁回転を吸収する支承のような設備も設けて、スムーズな桁降下を可能にした。4時過ぎにはおおむね作業が完了、多軸式特殊台車が退出した。
ストローク2,100mmのデッキリフト(橙色の機材)を使って桁を降下、あっという間だった
PH1側もほぼ完了
ほぼ完了し、台車も退出へ/一夜明けた現場(横浜市提供)
そのほかの安全対策
その他の安全対策としては、近年起きてしまった事故を教訓にベント直下地盤の平板載荷試験などによる地耐力の確認を行っている。また、ベント設備の支持、転倒、滑動に対する安全対策として、ベント設備については、載荷時の安全計算を橋軸直角方向だけでなく、橋軸方向でも実施している。また、状況に応じて、形鋼との連結や、ベント基礎梁長さの延長、ベントと既設橋脚とのロープによる連結、近くに既設橋脚がない場合は、カウンターウェイトとの連結を行っている。また、ベント上に桁を架設した後はすぐに桁とベントをラッシングし、桁の落下を防いでいる。こうした施策は当該地区の上部工部会や横浜市・首都高速道路が協議し、北西線の統一的な対策として行っているものだ。
ベントの安全対策には細心の注意を払った(横浜市提供)
元請は宮地エンジニアリング・古河産機システムズJV。一次下請は黒崎建設(鳶)、内宮運輸機工(多軸式特殊台車)など。(2018年1月30日掲載)