工程を従来の3分の1以下に短縮 耐候性、耐久性は従来と同等の性能
首都高速道路 3号渋谷線で鋼製部材に無機塗料を採用
首都高速道路は、3号渋谷線の南平台付近や西麻布交差点付近の鋼橋脚や鋼桁下フランジなど約6,000㎡の塗り替えに無機塗料を採用している。同塗料は「従来のフッ素系樹脂塗料と同等以上の耐候性、耐久性を有し、かつ工程も従来塗料の3分の1以下に短縮できる」(首都高速道路 東京西局 第一保全工事事務所 谷岡所長)のが特徴。とりわけ高架下の交通規制回数を必要最小限に留めたい街路並行部やダブルデッキの上層部などの塗り替えに有効であり、採用が増えつつある。(井手迫瑞樹)
セラマックスMC工法を採用
2時間程度の養生で次工程の施工が可能
今回採用されたのは「セラマックスMC」工法。既にNEXCO西日本のガードレールや鋼製標識柱、阪神高速道路の鋼製橋脚や桁端塗装などで採用実績がある。塗装構成は、下塗り75μm、中塗り80μm、上塗り10μmの3層だ。塗り感は「水溶性の塗料に砂っぽいものを混ぜたような感じで塗装時に引っかかる感じ」(三井住友建設)で、「有機系塗料よりもダレは生じるが水系塗料ほどではない」(同)とのこと。セラマックスMCは低分子アルコキシシラン化合物で形成される無溶剤の無機系塗料であり、塗装後にアルコール成分が抜けることで無機塗料による塗膜が形成される。湿度や温度依存性が低く、塗装後の養生も2時間程度で次工程の施工が可能なため、場所によっては1日で3層の塗装を塗り終えることができる。また、既設塗膜との付着性が良いことから、3種ケレン程度で塗布することが可能だ。但し、安定した品質を保つため、「施工は(一社)無機質コーティング協会の技術講習会を受講した技能者に限定し、協会の指導員に各現場に一度は必ず来てもらい指導してもらっている」(谷岡所長)ということだ。
交通規制を少なくできる
材工コストは水系塗料の倍ほどであるが、「特に規制が必要な街路や高速道路上の塗り替えでは協議や実際の規制の手間および費用を考慮するとコストが逆転する場合もある」(谷岡所長)という。首都高速では「従来塗料の場合、5層塗り(有機ジンク、下塗り2層、中塗り、上塗り)となるため、最低5回の交通規制が必要となる。養生期間も各工程につき最低1日を要し、降雨時や高湿時は施工を控えなくてはならず、低温時は必要養生時間が長くなるため、実際は施工期間が増える傾向があった」(谷岡所長)。
下塗りの施工状況
12月14日には、首都高速道路3号渋谷線の西麻布付近で深夜に行われた鋼製橋脚の塗り替えを取材した。六本木通りを2車線規制して、高所作業車で塗り替えるもの。既に上塗りを残すのみだったが、汚れをふき取ったのちに橋脚の梁部10㎡程度を非常にスムーズに塗装し、30分程度で所定の作業を終えていた。施工作業をみているとダレもほとんど見られず、ひっかかりよく感じた。
上塗り施工前の橋脚梁部/ローラーでの上塗り施工
狭隘部も非常にスムーズに施工していた
30分弱で所定の作業を終えた
記者も試験用の鋼板に塗ったが、伸ばしやすくかつひっかかりがよく、ダレや伸びすぎを心配せず塗装することができた。半面、塗装の特徴でもある、非常に薄く塗れるため品質管理はしっかりと行う必要がありそうだ。本現場の元請は三井住友建設、塗装下請はジェイテック。
今後は、高所作業車による3種ケレン程度での塗り替えが可能な現場でも、構造・非構造部材を問わず、必要に応じて積極的に採用していく考えだ。(2017年12月25日掲載)