中日本高速道路名古屋支社は、北陸自動車道の米原IC~長浜IC間の小一条高架橋(上り線)で床版取替工事を実施している。同橋は昭和55年の供用から37年が経過しており、既設RC床版にひび割れやはく落などの損傷が発生していることから、名古屋支社管内および滋賀県内で初めての大規模更新事業として床版取替えを行う。その現場をレポートする。(大柴功治)
床版上面の鉄筋露出と土砂化
下面のひび割れとはく落などの損傷が発生
橋梁概要と損傷状況
小一条高架橋(上り線)は、橋長462m、有効幅員10mの鋼3径間連続非合成4主鈑桁橋×4連だが、今回は長浜IC側の2連(P6~A2)233mが対象となる。P6~A2間はごく緩やかな曲線形(R=1,000m)で、橋軸方向が3%のA2側への下り勾配、橋軸直角方向は4%の路肩側への下り勾配である。交通量は約26,000台/日(大型車混入率24.3%)で、凍結防止剤の散布量は約35t/km(過去5年平均)となっている。
(左)小一条高架橋位置図(右)橋梁全景
小一条高架橋 橋梁一般図
既設RC床版の厚さは220mで、過去に一部損傷部の断面修復を行っているが、床版増厚は行っていない。防水工は、P9~A2間を平成9年度にアスファルト系で、P6~P9間を平成22年度にウレタン系で施工している。
損傷は、床版上面での鉄筋の露出と土砂化、下面でのひび割れ、はく落、鉄筋の露出が発生していて、舗装面もポッドホールが生じて多数の補修跡がある状態となっていた。また、塩化物イオン量は平成28年度の調査で、P11~A2間の最高値が1.8kg/m3と1.2kg/m3の発錆限界値を超えていた(平均値は0.66 kg/m3)。このような状況から抜本的対策として、プレキャストPC床版への取替えを行うことにした。
床版上面の損傷
床版下面の損傷
舗装面の状況
蒸気養生と高炉スラグ使用で床版の高耐久化を実現
くさび型の間詰め部で角欠けを防止
既設床版の撤去と新設床版の架設
既設床版の撤去・新設プレキャストPCの架設は、10月24日から作業を開始して、夜間に既設床版の切断、昼間に既設床版の吊り上げ、新設床版の架設を行い、11月9日に完了している。施工区間の中央のP9からP6までを120tオールテレーンクレーンで、P9からA2までを170tオールテレーンクレーンで施工するが、「両開き施工にすることで、クレーンの配置、既設床版の搬出、新設床版の搬入などの作業効率性が向上するので、片押し施工に比べて工程を半減でき、対面交通規制期間も短縮できる」(NEXCO中日本)としている。
施工概要図(中央部から両開きで施工)
既設壁高欄はワイーヤーソーにより橋軸2m×橋軸直角方向4.95mもしくは6.5mのブロックに分割切断して撤去し、既設床版は橋軸2m×橋軸直角方向5~6m(重量約8t)のパネルを1日当たり10枚(片側5枚)ずつ合計119枚撤去し、橋軸1.64m×橋軸直角方向11.39m(重量約11.2t)の新設床版パネル109枚を、1日あたりの撤去枚数と同数を架設していった。
既設床版のはく離と撤去
新設床版パネルの厚さは既設床版とおなじ220m。耐久性を向上させるために、室内工場(エム・テック埼玉本庄工場)で温度管理をして製作し、蒸気養生を実施したほか、耐塩害性・耐中性化対策として、セメントの一部を高炉スラグ微粉末6000(ファインセラメント6000A)に置換して製作を行った。鉄筋は、プレキャストPC床版内部は裸鉄筋、間詰部など現場打ちを行う箇所のみ、コンクリートの付着性能が高いエポキシ樹脂塗装鉄筋(AG-エポキシバー)を採用した。
新設床版の架設と施工フロー
床版取替後の構造図