東日本高速道路は、東北自動車道仙台宮城IC~泉IC間の広瀬川渡河部にある広瀬川橋下り線について損傷した床版の取替を行っている。大型車交通量の増加や25t化などを誘因とした疲労による微細なひび割れや凍結防止剤による塩害、寒暖差による凍結融解などによる複合劣化により、全体的に二方向ひび割れによる遊離石灰が析出しており、張出部では鉄筋露出を伴う剥離が確認されている。同橋では、今回東日本高速道路で初めて床版取替工にループ継手構造以外となるエンドバンド鉄筋継手を採用している。その現場ルポをまとめた。(井手迫瑞樹)
橋梁概要(NEXCO東日本提供、以下注釈なきは同)
床版取替概要図
着手前の広瀬川橋下り線
P8からP6方向へ5%の下り勾配
鉄筋近傍の塩化物イオン量は最大で4.5kg/㎥
損傷状況および対策概要
同橋は1974年に建設された橋長105.3m、有効幅員9.0mの鋼2径間連続非合成4主鈑桁橋である。斜角は79°。既設RC床版の厚さは250mmで、平成9年に50mmの超速硬SFRCによる床版増厚を行っている。床版防水は増厚と同時に初めて現在のグレードⅠに相当する防水工を敷設した。それ以前、防水工は未設置だった。勾配は縦断(橋軸方向)がP8からP6方向へ5%という下り勾配となっており、サグの様相を呈している。横断方向(橋軸直角)の勾配は2%程度となっている。1日当たりの走行台数は上り線で14,600台、下り線で14,900台程度だが、大型車混入率はいずれも25%程度と、疲労損傷の目安になる3,000台を大きく超えている。凍結防止剤は20g/㎡/日とかなりの量を撒いており、コンクリート劣化部における鉄筋近傍の塩化物イオン量は、上り線で最大3.6kg/㎥、下り線で4.5kg/㎥に達していた。また、増厚も有効に機能したとは言えず、増厚界面部に開口した水平ひび割れが多数散見されたため、平成27年度に樹脂注入を行っている。舗装には所々ポットホールが生じており、舗装打替え工跡の下面にはエフロレッセンスを伴うひび割れが生じている箇所が多く見られている。
損傷状況
損傷状況2
こうした損傷状況から、同橋では床版取替を全面積(上下線:2,200㎡)で行うこととした。サグの影響からP6側端部では鋼桁や支承にも大きな腐食や孔食などの深刻な損傷が見られているが、塗装塗り替えなどの対策は今次床版取替えが完了してから行う。上り線は5月下旬から7月初頭までに大規模更新を完了しており、記者は10月23日に施工中の下り線の床版取替を取材した。下り線の工期は10月11日~11月22日までの43日間、下り線を通行止めし、上り線を対面通行規制にすることで施工している。
広瀬川橋の位置
クイックデッキを採用
足場設置・高欄撤去
具体的には、まず準備作業としてクイックデッキを用いた養生足場を設置した(設置図は右、拡大推奨)後、舗装を切削し、高欄を撤去した。クイックデッキは、ジョイスト、ノード、デッキパネル、吊チェーンから構成された吊足場で常に床を先行して設置するもの。トラス構造であり、高い強度を有している。水平旋回式の組み立て方法を採用し、「吊点からの跳ねだし最大2.5mの作業床版部分を先行施工できるため、高所での危険作業なしで安全に施工できる。従来の単管+足場板+板張り防護に比べ従来より組立・解体の工期を短縮でき、構築した足場(上下線各1,560m2)は開口部や段差がなく、上下のクリアランスも大きいため(主桁下フランジから床面まで約1.0m)、安全性や作業効率の向上に大きく寄与している」(オリエンタル白石)ということだ。
クイックデッキの設置
舗装除去
撤去はまず既設壁高欄から始める。切断はワイヤーソーを用いて6m間隔で壁高欄を切断後、コンクリートカッターにより壁高欄下端部を橋軸方向に切断したブロックに小割し、ブロックごとに吊り下げ孔を2か所配置して50tラフタークレーンで吊り上げて撤去した。
ワイヤーソーにより6m間隔で切断し、橋軸方向に下端をカッターで切断後、吊り上げて搬出した