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ゲルバー部を無くし、3連の連続PC箱桁に集約

首都高速1号羽田線勝島地区高架橋 外ケーブルによる連続化225mは日本一の長さ

公開日:2017.11.28

 首都高速道路では、高速1号羽田線の勝島地区高架橋においてゲルバー構造で繋がれた8連の単純、2径間および3径間連続PC箱桁(延長518.8m)を、ゲルバー構造を無収縮モルタルで埋め、外ケーブルで連結することで3連にまで集約(8+6+6径間連続PC箱桁)する桁連続化工事を進めている。連結しないゲルバー部も新設橋脚および新設横梁を新たに構築して反力を受け換えることで、ゲルバー部に荷重が懸からないように改築する。特に東京側8径間の連続化は、225mを外ケーブルで連続化する計画であり、これは完成すれば日本一の長さの外ケーブルによる連続化となる。注目の現場を取材した。(井手迫瑞樹)

PC箱桁ゲルバー部に大きなひび割れを確認
 ゲルバー構造を無くし連続化

構造物の損傷状況と改良方針
 現場は大井競馬場に隣接し、交通量の多い都道海岸通り直上に昭和38年に供用されたPCゲルバー箱桁橋。平成19年度までに実施した定期点検により、PC箱桁ゲルバー部に大きなひび割れを確認すると共に支承の腐食、コンクリート剥落など多数の損傷が確認された。損傷原因は、伸縮継手からの漏水、支承アンカーの腐食、既設PC鋼材定着部後打ちコンクリートの劣化、支承の機能不全等の経年劣化と考えられた。劣化進行を極力抑制するため、応急的にゲルバー部を炭素繊維シート補強し、抜本的な構造の見直しや補強、改良方法を検討した。


ゲルバー部の損傷状況と応急対策(川田建設提供資料より抜粋、以下注釈なきは同)

 狭隘なゲルバー部は点検や維持管理が難しく、既設ゲルバー沓の取替えもままならない。加えて現行基準の桁かかり長も60㌢と満足していないことから、ゲルバー構造を無くし、連続化することにした。


下部工補強全体一般図

下部工
 工事は主に下部工を中心とした工事(完了)と、主桁を中心とした上部工工事の2つに分けて施工されている。
 下部工を中心とした補強は平成22年5月~28年8月に施工された。


下部工対策の概要

 補強内容は支承取替えが55基、橋脚再補強が32脚、基部補強が27脚、連続化しないゲルバー部を支持するための新設橋脚・新設横梁工が5脚、炭素繊維シート工が5,630㎡、剥落防止工が2,634㎡。
 上部工の連続化による全体構造の変化に対応するため、下部工については、橋脚の補強や支承構造の変更を伴う。


支承取替および耐震補強概要(左:2橋脚タイプ、右:4橋脚タイプ)

横梁支承取付ブラケット側面図/支承設置写真(2橋脚タイプ)

 まず必要なのは支承の交換だ。供用以後取り替えていなかったため腐食も進行し、耐震性能を満足していないため既設鋼製支承をタイプBタイプ支承に取り替える必要があった。通常の積層ゴム支承では柱頭部を拡幅しなければ設置できない。そのため、許容面圧が25M㎩で高硬度なウレタンゴムによる鉛直支持材を用いたDRB支承(川金コアテック)を採用し、柱頭部の拡幅を不要にした。上沓の定着は既設横梁にアンカーを差し込まなければならない。φ50㍉のアンカーの場合、既設横梁の既設PC鋼材をかわせないため、φ25㍉のアンカーを採用。横梁をU字型に覆う鋼製部材で下からだけでなく横からもアンカーを差込み、上沓と横梁を一体化した。


支承取替工の施工ステップ

 施工に当たっては、既設鉄筋やPC鋼材を切断しないよう電磁波レーダーを用いた非破壊検査で鉄筋位置を推定し、小口径ドリルで先行削孔し、安全性を確かめてからコア穿孔を行った。また、支承取替えに際しては、ジャッキアップベント設備で反力を受け換えた後、柱頭部を切断し作業スペースを高さ1.2m確保してから、沓を上面の横梁に固定した後、柱頭部を再び構築する手法が取られた。切断工は、隣接する大井競馬場への騒音および粉塵を最小限に抑えるため無水タイプのワイヤーソー工法を用いている。
 橋脚も再補強を行う。既に9mm厚・SM400の鋼板巻き立てにより補強されているが、連続化による構造系の変更に当たり、既設橋脚の補強鋼板9mmを撤去し、13mm厚・SM570の鋼板を改めて巻き立てる補強も行った。加えて基部の曲げ耐力不足が懸念される橋脚については定着ブラケットを設けアンカー筋(D41~D51,(SD345))を既設フーチングに打ち込む補強も施した。再補強橋脚を決定する際は、3次元骨組みモデルを用いた時刻歴応答解析を繰返し行い再補強橋脚数が最少となるよう設計している。


基部補強のSTEP図

 ゲルバー部の連続化が困難な箇所については、ゲルバー部支承を切断撤去し、その近傍に新たに橋脚および横梁を増設することで、荷重を受け替える。
この新設橋脚が非常に特徴的だ(下図は新設橋脚基礎工の側面図)


 橋脚の柱は、近傍の既設橋脚の基礎にφ1,000mmの場所打杭を2本追加施工し、底版を一体化した構造としている。次いで横梁は、通常のように橋脚と一体化したものではなく、上部工主桁と一体化した構造を採用している。これは街路(並行都道)の建築限界を確保することを考慮したためで、主桁内外に型枠を組み、横梁およびレア(上沓の台座)を現場打ちで打設した後、橋軸直角方向に外ケーブル(F360TS)を上下に6本配置して構築する。施工手順としては、新設橋脚の基礎・柱を施工し、次いで新設支承をその上に仮置きし、上記のように横梁およびレアを構築した後、ゲルバー部の反力を受け換える。既設のゲルバー沓9支点から新設橋脚・新設横梁の3支点に反力を移行するため支持条件が変更になることから、応力計測および変位計測を併用し、確実な反力移行を行っている。反力移行の施工手順は次のようになる。あらかじめ構築しておいたジャッキアップベント設備で荷重を仮受けして既設のゲルバー沓をワイヤーソーで切断除去し、路面の高さ調整を行い、その高さに合わせて新設支承を調整し無収縮モルタルで固定、最後にジャッキダウンして荷重を新設支承に受け換えた。


新設横梁の設置工

1487橋脚(井手迫瑞樹撮影)

 こうした橋脚補強工事と並行して、上部工主桁には炭素繊維シートを貼り付けて補強し、既設横梁天端には防水塗装(レジガード工法)を施した。残ったコンクリート表面は、美観向上と桁下街路への第三者被害防止のため、剥落防止工(バルーン工法)を実施した。

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