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水尻橋・立沢川橋・蛇王川橋・赤牛川橋・気仙沼湾横断橋P12

仙台河川国道 復旧・復興道路の現場を巡る

公開日:2017.11.16

30×40×25mの鋼管矢板を構築

気仙沼湾横断橋
 さて、仙台河川国道事務所のメイン構造物と言える気仙沼湾横断橋の現場には14時半過ぎに到着した。同橋は橋長1,344mの鋼3径間連続斜張橋+鋼7+3径間連続箱桁橋である。桁下クリアランスは既往最大通過船舶のマスト高に余裕高2m以上を加えた32mを確保するよう設計している。橋脚天端部は先の東日本大震災における津波時推移より上になること(鋼製主塔を海水にさらさないこと)、津波時漂流船舶の船首が主塔に衝突しない高さであること、平常時に既往最大船舶の船首が主塔に衝突しない高さである必要を鑑み、TP+15mとしている。当日取材したのは、その主塔を支える海中橋脚であるP12の建設現場である。同橋脚の基礎は縦30m×横40m、深さ25mに及ぶものである。外郭を鋼管矢板(φ1,500mm)井筒で覆い、基礎および橋脚を施工していく。施工手順としては周囲の鋼管矢板を打設して継手を勘合して閉合させ、鋼管矢板の中にコンクリートを充填させ、継手部の土を取り除いてモルタルを注入し、井筒の内外の縁を切り、そうして初めて井筒の中を掘削していく。


P12橋脚内部(井手迫瑞樹撮影)

日本に2台しかない大口径圧入機を使用した
カプセルホウ・パイラ工法を採用

 同橋脚基礎の鋼管矢板施工においては、下杭はバイブロハンマを使うが、上杭にはφ1500と言う大口径では日本に2台しかない圧入機を使用したカプセルホウ・パイラ工法(中掘圧入工法)を採用し、支持層である岩盤への確実な根入れを図っている。鋼管矢板の打設は1本分飛ばして打設し、次に間の鋼管矢板を打ち込むという手順を繰り返している(下図参照)。これは制約がない状態で最初の杭を施工し、精度を確保し、その後間の杭を打設することで、誤差の累積を防止できるためだ。


打設手順(鹿島・東亜JV提供)

鋼管杭の施工1(鹿島・東亜JV提供)

鋼管杭の施工2(鹿島・東亜JV提供)

 カプセルホウ・パイラ工法を使用したのは鋼管を確実に岩盤に根入れする必要があるため。最低でも1.5m(杭径)、深い箇所では5m以上掘削し確実に岩盤に打ち込んだ。鋼管の長さは47mであり、下杭30m・上杭17mの2本杭として現場で継杭溶接して施工した。
 鋼管矢板を構築した後は、10㎥クラムシェルバケットを用いて水中掘削を17~20m行い(掘削される土量は約20,000㎥に達した)、掘削後は水中で底盤コンクリート(厚さ2m)を打設した。打設後に水を排出し、井筒(締切)内をドライな状態に変えていくが、ドライ状態下では水圧が無く井筒内外の圧力が変わるため、支保工を事前に設けておく必要がある。

支保工3、4段目は水中環境下で構築

 その支保工は、橋脚躯体内構築の施工性・品質確保・工期短縮を目的として、従来の切梁・腹起構造から開口の大きい構造となるトラス構造の支保工を採用した。速さもさることながら、切梁や中間杭が橋脚躯体を貫通しないため、品質確保に対する寄与も大きい。同支保工は4段設けたが、1・2段、3・4段をそれぞれ一体化して、1,600t吊起重機船を用いて井筒内に水がある状態で一括架設した。また、鋼管矢板と支保工の間の間詰めコンクリートも水中で施工して固定した。通常はドライ化した状態で支保工を構築するものだが、これほど巨大な鋼管矢板構造となると、水を抜く前に支保工を構築しておかないと外部の水圧に本体の応力がもたないのだ。ただし、19mもの水深があり、潜水夫の作業は大きく制限される。水中での作業を出来るだけ軽減するため、3・4段目の支保工(550t)はPC鋼棒で吊って位置決めを行った。


1600吊起重機船でトラス支保工を架設(鹿島・東亜JV提供)

トラス支保工/間詰めコンクリートとPCの吊材(井手迫瑞樹撮影)

 支保工は立体的にもトラス構造のため座屈防止のための中間杭も必要なく施工を簡素化することができている。

厳しい塩害環境に対応したコンクリート品質

 供用後は厳しい塩害環境下にさらされるため、有害ひび割れの発生をできる限り減らす必要がある。そのため低熱セメントや低発熱収縮抑制型高炉セメント(編集部注:デイ・シイ製)を採用し、施工に伴う温度ひび割れと耐久性の観点から、配合検討し膨張材や混和剤の添加(編集部注:太平洋マテリアル製)などを実施している。加えて打設リフトの設定分割数においては、塩害環境下における耐久性に配慮した上で、温度応力解析を実施して、有害なひび割れを絶対に起こさないよう、コンクリート打設リフトを設定し、最大でも0.10mm幅に抑制している。


エポキシ樹脂塗装鉄筋も全面的に採用している(井手迫瑞樹撮影)

 加えて、凍結防止剤や飛来塩分によりアルカリ分が供給されてASRが引き起こされている事例がある。とりわけ現場は海水の中にコンクリートが突っ込まれている状態であるため、ASRに起因するひび割れ抑制を目的として、使用材料および配合条件を検討の上、通常の試験より厳しくコンクリートバー法及びSSW(塩害環境下)による確認試験(3%NaCl水溶液を用いた各種試験)を行い、高炉スラグを入れることでASRにおける耐久性は十分あると確認した上で施工に臨んでいた。(了)
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