夜間に切断、昼間に撤去・架設
間詰め部および両端の打ちおろし部を現場打ち
既設床版撤去・新設床版架設
既設床版の撤去、新設プレキャストPC床版の架設は、夜間に既設床版を切断し、昼間に既設床版の吊り上げ、新設床版の架設という工程で施工している。220tラフタークレーン1台を使って、1日当たり既設床版は橋軸2.3×橋軸直角方向5~6m(重量6~7t)のパネルを10枚ずつ撤去し、橋軸1.67m×橋軸直角方向10.48m、重量11tの新設床版パネル6枚ずつ架設していく。銭函側(札幌側)から朝里側(小樽側)に向かって撤去・架設を進めているが、これは施工完了後、速やかにクレーンが退出できることを考慮した。
床版の撤去・設置手法
既設床版は夜間に切断
既設床版の剥離/撤去
床版の撤去は地覆の縁切りはコア削孔、床版はダイヤモンドカッターにより切断し、床版撤去用油圧ジャッキによって桁から剥離させて220tクレーンで吊り上げて撤去し、トラックで外部に搬出する。上フランジと床版の間はジベルを除いてはずれ止め用の鋼棒のみで、一部ガス切断が必要な個所はあったが、ほとんどは切断後、ジャッキ剥離という簡易な工程で撤去することができた。撤去床版の橋軸直角方向の長さが異なるのは、3主桁のG2を避ける形で切断しているため。
主桁のケレン・清掃/ジンク塗布
撤去後は、上フランジ上面などの処理(ケレン・防錆、墨出しなど)や、床版との結合部周りのノロ止め対策としてシールスポンジを配置した後に、床版パネルを架設し、スタッドジベルを溶接、無収縮モルタルを打設し、床版パネル間には横断鉄筋を配置、間詰コンクリートを打設し、架設完了という工程を繰り返した。なお、両端の打ち下ろし部のみ正確性を期して場所打ち床版としている。結果的に床版撤去から床版架設までの期間を14日間で架設することを可能にした。
スタッド溶接およびシールスポンジの配置
苦労したのは「天候と労務」(元請のドーピー建設工業)。記者が現場を取材した9月19日も激しい雨が降ったり、日が差したりという不安定な天候、前日には台風も来襲するなど天候の影響を大きく受けた。労務の点では「思った時間に人が集まらず、作業員も高速道路床版の撤去・再架設という道内では初めての仕事であるため、夜間に既設床版お切断までを行い、明るい昼間に吊撤去・架設を行う」(同)など工程を配慮した。
床版の架設(井手迫瑞樹撮影)
床版の架設② 慎重に高さや位置を合わせていく(井手迫瑞樹撮影)
床版と地覆立ち上がり部を一体化した状態で工場製作
間詰め防錆鉄筋はMK-エポザクを採用
新しく設置するPCaPCパネルの厚さは既設床版と同じく220mm。荷重変化は生じない。橋軸直角方向の端部は床版面より150mmの地覆立ち上がり部分までを一体化した状態で工場製作している。耐久性を向上させるため、通常の2回にわたる蒸気養生に加え、工場外の仮置き場でも浸漬状態にする三次養生を加えた。
床版厚は220mm、床版は防護柵の立ち上がり部までを一体で製作
ループ式継ぎ手を採用、鉄筋は防錆を考慮しエポキシ樹脂塗装鉄筋/側面はウレタンで表面被覆した
(井手迫瑞樹撮影)
鉄筋は、プレキャストPC床版内部は裸鉄筋、間詰部など現場打ちを行う箇所のみ、コンクリートの付着性能が高いエポキシ樹脂塗装鉄筋(MK-エポザク)を採用した。
コンクリートはプレキャスト、現場打ち早強ポルトラントセメントを使用しており、特に高炉スラグやフライアッシュなどは用いていない。間詰コンクリートの強度は50N/㎟、スランプ12±2.5cmと標準通りのものを採用、ひび割れ対策として膨張材を使っている。継手部は標準のループ継手を採用した。
床版の継手構造
間詰め部コンクリートの打設①(井手迫瑞樹撮影)
間詰め部コンクリートの打設②/同養生(井手迫瑞樹撮影)