道路構造物ジャーナルNET

本線上および供用中の街路上を一部使用して設置

外環道トンネル新設工事の掘削土を5.5kmにおよぶ長大コンベヤで搬出

公開日:2017.10.10

 国土交通省、東日本高速道路および中日本高速道路は関越道と東名高速を結ぶ外環道大泉JCT~東名JCT(仮称)間本線シールドトンネル工事(6車線、約16.2km)を進めている。その大泉側から掘進する本線シールドトンネル工事に伴って排出される掘削土をスムーズに搬出するため、既存の外環道を利用して約5.5kmにも渡ってベルトコンベヤ(ベルコン)を設置し、和光北ICに隣接する埼玉県の下水処理場(新河岸川水循環センター)敷地内に設けられた掘削土仮置き場まで運搬するための設備工事が進められている。こうした長距離、しかも本線構造物上を使用してのベルコン設置による掘削土の運搬は「例がない」(東日本高速道路)。その設置の背景と内容について取材した。(井手迫瑞樹)

 大泉JCTは、東名JCT(仮称)や中央JCT(仮称)など、他の工事地区と比較して施工ヤードが狭隘であり、東名JCTのように直近にシールド発生土の仮置きとなるスペースもなく、発生土の運搬車両の他、工事資機材等の運搬車両との輻輳が懸念されていた。また約290万㎥に達する発生土を運搬するダンプトラック台数の逼迫も課題とされていた。

 そうした中、外環本線が3車線を有し比較的幅員に余裕があったことや、既設の外環道に隣接する埼玉県の下水処理場を発生土仮置場として利用することが可能となるなど条件が整ったため、外環本線にベルコンを整備し仮置場までベルコンで運搬することで、工事車両の輻輳対策やダンプトラック台数の削減を行う計画を立て実行している。発生土運搬用ベルコンは、東日本高速道路発注の「東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事」(清水建設・熊谷組・東急建設・竹中土木・鴻池組JV)により設置し、中日本高速道路発注の「東京外かく環状道路 本線トンネル(北行)大泉南工事」(大成建設・安藤・間・五洋建設・飛島建設・大豊建設JV)の発生土も運搬する計画だ。
 大量の土をベルトコンベヤで高速搬送する技術は「東日本大震災の震災復興で培ったもの」(清水JV)。陸前高田において約3.0kmのベルコンを敷設して、気仙川にはベルトコンベヤ用の吊り橋(希望のかけ橋)を構築して、約510万㎥の土砂を1年半で運んだ」(同)実績があり、今回の現場でも十分実施できると判断した。

 ベルコンは、外環道の本線部(約4.8km)は現在の片側3車線を確保しつつ、2.5mの路肩部を1.0mに、3.5m/1車線の本線部を3.25m/1車線にそれぞれ縮めて車線を左側にシフトさせ、中央分離帯側にベルコン設置幅を確保した。本線を跨ぐカルバートボックス(現在は和光市の地域センターや公園となっている。一定期間許可を得て占有する)の上部で乗り継ぎ、新倉PAから掘削土仮置場まで(約0.8km)の間は、新倉PA内を通過し外環道高架橋の下を経由して掘削土仮置場に至る。

 本線部のベルコンは、長距離曲線対応ベルトコンベヤ(リターンパイプ式、ベルト幅1.4m)を採用している。上下2段式(高さは約5m、幅1850mm)のユニットの中に配置されており、ベルトは上部が半円状、下部が円状の形状を有している。これは外環道の本線上に設置することから、坑口から土砂を送る側は半円状(幅1400mm)にして単位当たりの発生土送り出し量を最大化するとともに、リターン側はベルトを円状のパイプにして内径350mm程度に縮めることで点検通路(幅約0.7m)を確保するとともに、路面を汚さないよう工夫したもの。一本のベルトが終点側で半円から全円に起点側で全円から半円に変化する構造だ。ベルトを支えるローラーの位置は設置場所の道路線形によって微妙に変えて設置しており、ベルトから運搬中の土砂が溢れないようにしている。


標準フレーム構造一般図(提供:東京外環プロジェクト、以下同)

 
ベルコン基部詳細図

 加えて約4.7kmを中間ブースター無しで外環道の道路線形(最小半径R700)に対応した曲線対応ベルコンとなっている。輸送能力は1,150t/時(10tダンプ約130台分相当)、ベルト速度は180m/分。
 設置は夜間通行規制した上で施工する。具体的にはコンクリート基礎を打設した後、高さ調整用のH鋼を配置、上下段別に持ってきたユニット(長さ8.7m、重さ約10t)を現場で組み立てて、事前に敷設した架設用レールで配置箇所まで押し込んで現場に運びアンカーで固定する作業を繰り返す(総計485ユニット)。中央分離帯を挟んで上下に多少振れる線形であり、曲線半径は700mほどになるため、フレームは設計時および現場での微調整で対応する。また、粉じんの漏出を防ぐため、外側に平滑部はプラスチック製、カルバート部へ上がる最後の勾配が生じる部分は鋼製のパネルを填めこむ。


外環道車線上設置断面図/外環道通行車両からのイメージ

コンベヤ設備を引き込むためのレール

設置されたベルコンフレーム

 本線を跨ぐカルバートボックスの上部で乗り継ぎ和光北ICオフランプを跨いで新倉PA内を経由して外環道高架橋下部付近を通過し、仮置き場に至る約800mのベルコンは、急な縦断変化(最大縦断角11°)に対応できるよう、上下とも全面を覆うパイプコンベヤを採用している。


外環道C-Box上部のベルトコンベヤ乗継部(フォトモンタージュ)

 コンベヤの内径は350mm。輸送能力は変わらない。ベルト速度は190m/分と若干早くなる。同区間は仮橋形式となっており、パイプを固定する仮設桁の重量は1mあたり1tに達し、鋼重総計は橋脚も含めて約1200tとちょっとした鋼橋を1橋架設するものと言える。基本的には既設ピアの間隔に合わせて仮設の鋼製橋脚を配置し、影響を最小限に抑えている。構造上門型橋脚にならざるを得ない箇所もあり、最大スパンは40mを超える。基本的にはトラッククレーン+ベントで施工していく。


最大スパンは40mを超える個所もある(フォトモンタージュ)

国道部に設置するベルトコンベヤ側面図

構造上、門型橋脚になる箇所もある(フォトモンタージュ)

 ベルコン設置工事そのものは、28年6月に開始し、大泉側から本線シールドが発進するまでに完了する予定。現在、本線上ではベルコンの基礎工事を進めており、基礎が完了した箇所からベルコンフレームの設置に取り掛かる予定で、29年9月中旬からユニットの配置も始めている。また、新倉PA~仮置場までに区間については1スパンのみ、仮設桁の施工を完了している。
 ベルコンの製作協力会社は本線部が古河産機システムズ。新倉PA内および橋梁下部が日本コンベヤ。

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