道路構造物ジャーナルNET

長寿命化と生活道路の整備も重要

仙台市 震災復興とコンパクトシティ・プラス・ネットワークを推進

公開日:2017.09.26

930橋を管理 橋齢30年以上が7割占める
 断面積比率では鋼橋が4割占める

保全
現在の管内の橋梁およびトンネルの内訳
 仙台市で管理している橋梁は930橋に上る。高度経済成長期に建設された橋梁が多く、平成29年度現在で完成後50年を経過する橋梁は185橋となっている。20年後には655橋となり、急速に高齢化が進行する。比率では、現在で50年以上が20%程度、10年後には約半分、20年後には70%に達する。


 橋梁の種類はコンクリート橋が69%、鋼橋が21%で、コンクリート橋が数としては多い状況だ。残りの1割は複合橋や溝橋など。橋長別では、15m未満の小規模な橋梁が約6割で、15m以上のものが約4割。橋齢別では30年以上の橋梁となると約7割に達する。橋種と断面積の関係で見ると、橋種ごとではコンクリート橋が7割で鋼橋が2割だが、断面積ではコンクリート橋が約半分で鋼橋が約4割と、鋼橋の割合が高くなる。橋長では、鋼橋や複合橋については100m以上の長大橋の占める割合が多くなっている。


 同市が管理するトンネルは8箇所10本(上下線をそれぞれ別に計算)を有する。50年以上経過したトンネルは平成27年度現在で1本だが、30年後には8本まで増加する。なお建設のピークは1980年代の5本。



 なお、市町村合併で、旧市の橋梁台帳はあるが、合併前の一部自治体の橋梁台帳がない、もしくは不完全で、復元設計から始めなければならないということが聞かれることも多い。「仙台市でも竣工図などの図面がない橋梁はかなりあって、実際に点検をして復元設計を行い、施工するケースも多くなっている。合併のみが原因ではなく、仙台市でも以前から管理していた橋梁で竣工図がないものはある」としており今後の保全を進めていく上での検討課題と言えそうだ。

平成25年度に807橋の長寿命化修繕計画を策定
 健全度3、2は減少傾向

点検を進めて見えてきた損傷状況
 点検結果は下表を参照。平成25年度に807橋の長寿命化修繕計画を策定して、健全度をA、C、Eで判定している。E判定は現在の健全度3(早期措置段階)で、C判定が現在の健全度2(予防保全段階)となる。平成28年度は、溝橋の増加や国からの国道移管などがあり、対象橋梁数が930橋に増えているが、健全な橋が61%と若干増えている。長寿命化対策工事などを行っているため、健全度3と2は割合としては若干減ってきている状況だ。

 橋種別にみると、鋼橋の健全度が全体的にPC橋や複合橋と比較すると悪い結果になっている。橋齢別でみると、当然古い橋梁の健全度が悪いという状況だ。

 実際の損傷事例では、伸縮装置からの漏水が原因と思われる桁端部の腐食や劣化が発生しており、伸縮装置の交換、非排水化や桁の塗装などでの対策を考慮している。コンクリートでは、古い橋梁で橋面防水がされていないところもあり、床版のひび割れや遊離石灰が発生している。冬期の融雪剤散布による下部工のコンクリート表面のはく離や、凍害の影響も出ている。現在、融雪剤は、近隣への環境影響が大きい塩化ナトリウムを使用せずに塩化カルシウムを使用しており、支承も漏水、排水の影響で腐食が進んでいるところが数多く見られている。

 健全度4判定(緊急措置)も3橋あるが、全て現在使用されていない橋であり、将来的には撤去予定だ。
 融雪剤散布の影響による損傷としては、昨今、ポストテンション方式の橋梁でグラウトの充填不良により定着部が損傷したり、内部のPC鋼材が腐食・破断するといった損傷が散見されている。仙台市でも以前に、植栽帯に土があり、そこからの水の供給を考慮して、改良事業にともなって橋梁を補強したことはあった。その際にX線診断も行った結果、シースの状況もよくなかった。ただ、「ほかではそこまでの状況は見受けられていない」ということだ。

トンネル 九ノ森トンネルで来年度対策予定

トンネルの対策状況
 九ノ森トンネルでは、覆工コンクリートアーチ部にひび割れが多数確認されているが、局部的なもので構造に影響を与えるものではないようだ。健全度も3であり、来年度に対策工事を行う予定だ。交通量が多く、完全なトンネル構造ではなく半地下構造の将監トンネルでは、桁部材に多数のうきを確認しており、叩き落しは実施済みだ、鉄筋が露出している。上から水が流れてくることもあり、その影響もあると市では考えている。ほかのトンネルについては特段大きな変状はないとしている。


耐震補強 平成31年度までに完成予定
 長寿命化修繕計画は見直し中 新5か年計画策定へ

耐震補強の進捗状況
 兵庫県南部地震後の平成8年度から工事に着手して、緊急輸送道路の落橋防止は完了している。橋脚補強についても、昭和55年以前の道路橋示方書で建設されている橋梁については今年度で全て完了する予定。平成8年以前の橋梁については、緊急輸送道路から優先して対策を実施していて、平成31年度までに完了させる予定となっている。
 今年度は、昭和55年以前の示方書で建設された橋梁1橋、平成8年度以前の示方書で建設された今年度4橋の耐震補強を行う。なお市管理の橋梁として、熊本地震で崩落したロッキングピアタイプの橋梁はない。

橋梁長寿命化修繕計画の進捗状況
 平成25年度から5カ年計画で対策をすることになっていたが、その後、対象橋梁が増えており、現在見直しをかけているところだ。実際に補修をしてみると、損傷が激しい橋梁もあり、計画よりは事業費がかさんでいるのが実情だ。緊急度が高いところは確実に行わなければならないため、増加分を入れながら新5カ年計画を作成している。


橋梁の損傷状況①

 経年劣化や疲労による上部工補修・補強については、平成26年度に4橋、27年度に5橋、28年度に1橋施工しており、今年度は8橋を予定している。耐震補強の観点と長寿命化の観点から複合的に橋梁の工事を行っているが、そのなかで上部工の補修・補強があった件数を示している。内容は鋼橋であれば主桁端部の交換や、コンクリート橋ならば断面修復など。大規模なものはあまりなく、「劣化がある箇所を新しく取り替えた程度」(仙台市)としている。

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