道路構造物ジャーナルNET

長寿命化と生活道路の整備も重要

仙台市 震災復興とコンパクトシティ・プラス・ネットワークを推進

公開日:2017.09.26

 仙台市は、東北地方唯一の政令指定都市であり、同地方の政治・経済の中心地である。東日本大震災では、仙台港や若林地区が津波により甚大な損傷を受けたことは記憶に新しいが、目覚ましい勢いで復興が進み、往時の賑わいを取り戻している。今後、同市がどのような発展を目指し、その目標に資するための道路整備・維持管理を進めていこうとしているのか同市建設局の千葉部長をはじめとした現場を聞いた。(井手迫瑞樹) 

早い時期から集約型の街づくりを推進
 23年度に都市計画道路網を大幅に見直し

新設概要
 現在、同市は2つの大きな取り組みを有している。1つは震災復興で、復興計画期間の5年が過ぎて、生活者の再建や災害復旧事業はほぼ完了しているが、津波対策や地震対策での抜本的な事業を継続的に行っている。かさ上げ道路の整備などが中心的な事業だ。
 もう1つは、震災とは別に取り組んできた街づくりだ。国が推進している政策の一つに「コンパクトシティ・プラス・ネットワーク」があるが、仙台市では平成10年3月に早くもそうした基本計画を策定し、人口減少の時代にむけて集約型の街づくりを行う取り組みを全国的にも早い段階で始めていた。今後、郊外に街を広げないという考えのなかで、既存の市街地の利便性を公共交通のネットワークにより高め、機能を相互で使えるような街づくりを進めているのだ。その例の1つが地下鉄で、公共交通の利便性を高めるため、南北線に加えて、平成27年12月に東西線を開業した。
  道路についても、震災とは別に公共交通としての道路網の優先整備順位を考えながら事業を進めている。平成23年度には、都市計画道路網を大幅に見直し、郊外に新しい住宅地ができる前提で計画を立てていた路線など70区間約68kmを廃止して、新たな街づくりのなかで路線を選びながら事業を進めている。

 仙台市では、事業方針のひとつとして、骨格幹線道路網を中心とした道路整備がある。東西線が開通するまでは、東西線へのアクセス道路の整備を重点的に進めてきたが、それはほぼ完了した。また、広域交通ネットワークでの経済産業の振興、都市機能のさらなる強化を目指した道路整備も行っている。
 一方で、構造物の長寿命化も重要な課題だ。また、大規模な道路の事業進捗が難しいなかで、生活道路の整備に力を入れている。

五輪工区東側はアンダーパスで立体交差
 宮沢根白石線はアプローチ下部工を施工中

進捗中の事業路線
 仙台市の進捗中の代表的な事業路線としては元寺小路福室線や南小泉茂庭線・宮沢根白石線などがある。
 元寺小路福室線は、6車線で仙台駅西側(青葉区中央二丁目)から宮城野区福室まで仙台市中心部と東部の工業・流通地域を連結する延長8,240mの骨格幹線道路だ。通勤だけでなく、物流や経済的効果の高い道路とされている。同線の仙台駅北側には宮城野橋があり、本年3月に暫定供用(幅員34.3mの4車線、本供用時は6車線を計画)を開始した。同橋は東北本線と新幹線の間に橋を差し込む形で建設された。仙台市内は東北本線の上に高架で新幹線が走っているところが続いており、ほかにもそうした個所はあるということだ。「縦断を取るために、前後やクリアランスの関係を考慮しなければならず、設計が大変です。保全はJRに委託することになると思います」(同市)。
 現在、事業を進めているのはJR仙石線宮城野原駅付近の五輪工区(延長1,217m)で、西側の約850m(Ⅰ工区)が今年度末に供用開始予定だ。五輪工区東側の約367m(Ⅱ工区)でJR貨物線のアンダーパス部分はこれから設計に入る。
 南小泉茂庭線・宮沢根白石線は、仙台駅南側の若林区で国道286号から仙台市の東部に直接行ける広幅員の道路で、都心の混雑緩和や物流機能の拡充で重要な路線となる。宮沢根白石線の南鍛冶町工区(延長約790m)では、元寺小路福室線と同じように東北本線と新幹線の間に橋梁があるが、工事は完了している。現在はその南側で橋梁形式から平面に戻る部分(平面タッチ)を施工している。アプローチ部の橋梁は、橋長182.3mのPC8径間連結プレテンション方式中空床版橋で、今年度は下部工を橋台1基、橋脚2基の計3基施工中だ。



宮根地区橋梁下部工の進捗状況

 宮沢根白石線の舟丁工区(延長約250m)は、用地取得段階で、平面構造を採用している。宮沢根白石線では、仙台市の北部に浦田工区(延長約823m)も有している。地形的に盛り上がっているのでボックスカルバートを採用した。その工事はすでに完了しているが、供用にむけて別工事を行っている。30年度中の供用開始を予定している。
 南小泉茂庭線(延長約300m)では広瀬川を渡る宮沢橋を計画していますが、事業着手をした段階で、これから設計等に入る。予備設計ではPC3径間連続箱桁。

286号BP 橋梁3橋、トンネル2か所を予定

 もう1つこれから事業が本格化する路線として、国道286号バイパス計画(延長約2.7km)がある。現道国道286号は隣接の川崎町との境ではかなり急峻な山あいを通るため、安全性の向上と周辺市町村との交流強化を目的としたバイパスとなる。そのやめ、仙台市としては珍しく、トンネルを2箇所、(橋梁が3箇所)設置する予定だ。バイパス西側部分1.3kmを宮城県が施工し、東側1.4kmを仙台市が施工する。現在は用地測量や用地取得を進めていて、橋梁予備設計を今年度に発注する。

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