天竜川橋の床版取替えと辰野TN補修補強を施工
NEXCO中日本 中央道辰野TN~伊北IC間改良工事の現場を公開
中日本高速道路は7月4日、報道陣に中央自動車道の天竜川橋の床版取替え工事および、辰野トンネルの補修補強の現場を公開した。同路線は供用から36年が経過しており、天竜川橋はRC床版部分にひび割れや遊離石灰の析出が見られるなどの損傷がある。また辰野トンネルは経年劣化の影響により、天井や側壁コンクリートにひび割れや損傷が点在していることから、今回特定更新事業として、床版取替えやトンネルの大幅な補修補強工事を行うもの。その現場をレポートした。(大柴功治)
増厚対策後も補修を行うが、損傷が発生
天竜川橋
1.概要
天竜川橋は、橋長100.3m、有効幅員8.5mの鋼2径間連続非合成鈑桁橋。直橋で、横断勾配は2%、縦断勾配は0.29%となっている。交通量は約38,000台/日(大型車混入率28.5%)で、凍結防止剤の散布量は17t/kmとなっており、「松本管内は比較的多い散布量」(NEXCO中日本)としている。
天竜川橋と辰野トンネルの位置図
天竜川橋 全景
天竜川橋構造一般図
今回施工するのは上り線部(下り線は施工済み)。平成9年度には、既設床版を20mm削って、60mmの増厚(合計で40mm)をしているが、増厚床版と母床版との間で剥離損傷したことにより、平成25年度に変性エポキシ樹脂(「アルファテック380」)を注入する補修を実施して延命化を図っているが、床版裏面に2方向ひび割れや鉄筋露出、遊離石灰の析出が確認されていることから、本格的な対策としてプレキャストPC床版(床版厚220mm)への取替え(上り線全面852㎡)を行うことにしたものだ。
床版(右)と壁高欄(左)の損傷
エンドバンド継手が特徴のSLJスラブを採用
2.既設床版の撤去・架設
既設のRC床版は、コンクリートカッターにより、①壁高欄、②地覆部、③中間床版部に分割して切断し、個々のブロックに分けて撤去した。中間床版のブロックのサイズは、橋軸2m×直角4.2~4.3mで、約5tだった。桁から既設床版を剥がす際、現場で原図面に載っていない箇所に鉄筋が存在し、撤去の際の阻害要因になることがある。本現場も鋼非合成鈑桁構造であり、ずれ止めをスラブアンカー鉄筋により接合しているため、ジャッキアップして剥がす際、床版下面側から事前にスラブアンカー鉄筋を切断し、床版にコア削孔した孔に吊り上げ用の冶具を取り付け、剥離・吊り上げ撤去した。
床版の撤去
撤去・架設には大型クレーンを用いずに160tオールテーレンクレーンを使うことで、クレーン旋回時の下り側への影響を少なくし、作業効率を向上させている。
新しく取替えるプレキャストPC床版は標準パネルのサイズが橋軸1.845m×直角9.852m(端部は地覆・高欄立ち上がり部90mmまでを一体施工)で47パネル(1パネルは約10t)。両端部のプレキャストPC床版のみ橋軸1.250m×直角9.852m(1パネルは約9t)を使用した。継手部は46箇所だが、1箇所あたりの重ね継手長は285mmと最小限にし、床版厚も220mmに抑えている。
床版の架設とエンドバンド継手
こうしたことが可能なのは、エンドバンド継手が特徴のSLJスラブを採用しているため。従来のループ継手と異なり、鉄筋の端部に鋼管を圧着したエンドバンド鉄筋を用いた重ね継手を採用しているため、通常の重ね継手に比べて半分の継手長で同等の終局耐力と変形性能を確保でき、加えて継手部の床版厚も抑制できる。また、ループ継手では継手内の横方向鉄筋を橋の側方から挿入する必要があるが、エンドバンド継手では継手内の横方向鉄筋を予め仮配置して、プレキャストPC床版を架設できるため、市街地や鉄道等との交差など床版を取替える橋の立地条件によらず、容易に施工できる。
間詰め部のコンクリート打設
こうした撤去・架設を1台のクレーンを使って1日6パネル、片押しで施工し、実働8日間で施工を完了している。
床版架設後は、壁高欄を現場打ちで製作し、次の床版防水の工程に移る。
壁高欄の配筋とコンクリート打設
3.床版防水
床版防水工は新設コンクリート床版に対応する高性能床版防水、いわゆるグレードⅡを採用した。採用工法はHQハイブレンAU工法(反応樹脂型アスファルトウレタン系)で、現場で吹付け防水を行った。
床版防水工
端部養生後、床版用接着剤を塗布し、ついで防水材を散布、舗装用接着材を施工して、珪砂を散布し、端部の保護材を塗布した。養生後、基層にFB(フラットボトム)13、表層に排水性舗装施工し、同橋上り線のリニューアル工事を完成させた。施工に要した日数は夜間を含めて2日間。面積は床版と同様852㎡。
橋面の完成状況