東日本高速道路東北支社は5月22日から7月2日にかけて、東北自動車道の吾妻橋下り線(福島管理事務所所管)において床版全面積(約1,910㎡)をプレキャストPC床版に取替えた。福島管理事務所所管では過去に福島須川橋と福島荒川橋の床版取替えを行っているが、高速道路リニューアルプロジェクトとしては第一弾となる同工事を取材した。(大柴功治)
床版増厚対策後22年で再損傷
1.劣化状況と対策
東北自動車道吾妻橋(福島管理事務所所管)の既設RC床版は、疲労および凍結防止剤による影響が顕著で、平成7年に床版増厚を実施したものの、舗装のポットホールや床版下面のひび割れなどが生じており、抜本的対策のために、まず下り線の床版取替えを実施した。また、上り線および、同事務所管内の大森川橋(下り線)、松塚川橋(下り線)は今後床版取替えを実施する。
吾妻橋は、東北道福島西IC~福島飯坂IC間の一級河川松川を渡河する橋梁で、昭和50年に供用され、建設後42年が経過している。橋長248.3m、有効幅員11mのPC単純合成桁3連+鋼4径間連続非合成鈑桁橋だが、今回は171.1mの鋼4径間連続非合成鈑桁橋が対象となる。
吾妻橋位置図
吾妻橋全景
橋梁図
27年度の福島西IC~福島飯坂IC間(下り線)の年平均交通量は約17,476台/日で、大型車両混入率が24.6%(≒4,306台/日)となっている。平成7年度には床版をSFRCで40mm上面増厚して250mm厚としたが、22年が経過し損傷が生じているため、抜本的対策として今回プレキャストPC床版(240mm厚、総枚数80枚)に取替える。
塩化物イオン量の最高値は7.3kg/m3
既設床版は、輪荷重によるコンクリートのひび割れや、冬期の凍結防止剤散布(平均で約2kg/㎡)の影響によるコンクリート内部への塩化物イオンの浸透により、断面欠損や表面の土砂化などのコンクリート床版の劣化や鉄筋に錆が発生し、舗装にもポットホールが生じている。とくに、走行車線は輪荷重が乗っている部分の浮きが激しく、追い越し車線は輪荷重よりも横断勾配により中央分離帯側に浮きが発生していた。
床版下面の劣化状況
舗装の損傷
平成27年6月には劣化状況の調査を行ったが、コア採取5箇所中3箇所で24N/mm2以下の圧縮強度低下が見られ、塩化物イオン量も4箇所で1.2kg/m3の発錆限界値を超え、最高値は下り線P5付近の床版中央部(横断方向)で検出された7.3kg/m3となっていた。上面増厚時に、床版防水(現基準でのグレードⅠに相当)を施したが撤去した床版を見ると鉄筋付近や増厚界面付近に水平ひび割れが生じており、土砂化も散見される。
撤去床版
地覆立ち上がり部の事前施工で工期短縮
そうした点を踏まえて、プレキャストPC床版への全面取替えに際しては橋梁の全幅員をひとつのプレキャスト部材として製作。さらに現場付近の一次コンクリート施工ヤードで地覆の立ち上がり部、高さ約17cmを予め施工して現場に搬入することで、工期短縮を図るとともに、弱点となる床版と地覆の目地部の品質を向上させている。PC床版の埋込鉄筋及び間詰部の鉄筋についてはエポキシ樹脂塗装鉄筋、床版防水は高性能床版防水(グレードⅡ)を採用するなど耐久性向上に努めている。
施工フロー