OFFランプ部に道路トンネルでは初めて
阪神高速大和川線常盤工区で矩形シールドによる全断面掘進を採用
矩形シールドマシンで225m掘進
シールドマシンは小割にした部材を半年かけて搬入・組立
次にOFFランプの施工である。OFFランプは地上の一般道との合流部については開削で施工する一方で、OFFランプ延長の中央部付近に専用の立坑を構築し、地下の分岐部に向けては矩形シールドマシンで225m掘進する。矩形シールドマシンは現地条件から大型ブロックでの搬入・組立が不可能なため、小割にした部材を半年間かけて立坑に搬入・マシンの組立を行った。
工場仮組立時の矩形シールドマシン全景/シールドマシン発進状況
シールドマシンの搬入・現場組立状況
同工法は、厳密には矩形泥土圧アポロカッター工法とよばれるもので高さ8.09m×幅8.48mの面を矩形に掘進していく。矩形形状にしたのは、「通常の円形シールドでは、当社の都市計画上の事業認可幅をはみ出てしまうため」(阪神高速道路)。
6面鋼殻セグメントを採用
コンクリートセグメントに比べて部材厚を減らすことが可能
道路トンネルにおいて、矩形シールドマシン単体で全断面構築するのは「日本初」(同)ということ。施工を担当するのは鹿島・飛島JVだが、鹿島として矩形シールドは3現場目である。過去2回は、6年前の東急東横線の渋谷~代官山の複線断面、および8年前の阪神なんば線の駅の地下通路部での事例ある。鉄道と道路の違いはやはり縦断勾配。ここでは8%の勾配で掘進している(下写真)。平面曲線半径はR=600mとなっている。過去の知見を踏まえて、今回の現場では使えると判断し、開削工法から変更を行った。矩形シールド内径は幅6.5m。ランプ車線3.25m、路肩が左右合計で3.25mとなっている。セグメントは6面鋼殻合成セグメントを採用した。6面体の鋼殻の中にコンクリートを充填し、合成効果で強度を確保することでコンクリートセグメントに比べて部材厚を減らすことができるもの。1リングを8ピースのセグメントで構成している。
六面鋼殻セグメント概要
六面鋼殻セグメントの一部、これを繋げて1つのリングにする(井手迫瑞樹撮影)
1日平均1~3m掘進
施工は8時から最大21時まで行う
掘進に用いているシールドも特殊だ。赤いカッターヘッドが1周約4分で反時計回りに回転し直接地面を削る。しかし、カッターヘッドの回転だけでは万遍無く掘ることができないため、黄色い揺動フレームがクランクシャフトの用に作動し、さらにその下にあるグレーのドラムが左右に公転する。その組み合わせで確実に掘進する。1日平均掘削距離は固い改良体の箇所を通る時は1m、通常の地盤を通る時は3m程度。セグメントの1リングは幅1m、即ち1日に1~3リング程度を掘り進める。施工は8時から最大21時まで行う。到達部では、地中で拡幅した躯体に接続し、シールドマシーンの外殻を残して内部を解体する。
矩形シールドマシンの構造概要図
切羽設備全景/セグメント組立状況
セグメントなどを現場まで輸送する機械/設置したセグメントを反力に利用してジャッキで押していく
(いずれも井手迫瑞樹撮影)
一度構築した土留め壁を地中で切り開く
本線とOFFランプ分岐付近の拡幅部(シールドマシン到達側、延長約46m)も工夫をしている。直上の生活道路を全面通行止めできないというのは分岐部も同じ。そのため一度構築した土留め壁を地中で切り開く工法を採用している。最初から土留め壁を最外側のラインに打つことは施工条件として地上の生活道路が通行止めとなるためできない。
一次土留を打設し、前提的に本線を支え、次いで二次土留を構築し、矩形シールドと繋げる
そのため、図に示す緑のラインで一次土留めを打設し、暫定的に本線を支える(壁ではなく)仮柱を設ける。本線開削部の掘削途中段階で作業構台を設け、導坑を施工後、そこから薬液注入を行った上で二次土留めを施工し、完了後一次土留めと二次土留めの間を掘削、生じた空間に拡幅部の躯体を製作し、矩形シールドと繋げる。具体的には二次土留めの杭打ち後、天頂部分をパイプルーフで拵えて、その後に、この狭い空間を上から掘り下げていく。下まで掘り終わると、通常の開削トンネルと同じで、底版をコンクリートで構築し、壁を打設して、最後に頂版を仕上げるという形で逆「コ」字ができあがる。拡幅部と本線の躯体を繋げた後は、仮柱の必要がなくなるので、最後に撤去して、全断面が完成する。
切開き部床付け/切開き部底版完了状況
左右の柱は仮のものだ。完成時には撤去される予定(井手迫瑞樹撮影)
矩形シールドは6月初旬に到達予定。切り開きは8月の中旬ぐらいまでかかる予定。仮柱を取るのは秋ごろの予定だ。