国道16号横断桁を550t油圧クレーンで夜間架設
横浜市 金沢シーサイドライン延伸工事が進む
横浜市は、金沢シーサイドライン金沢八景駅の京浜急行金沢八景駅までの延伸について、工事を進めている。同駅は金沢シーサイドラインが計画された当初から、京急の同駅までの乗り込みを計画していたが、同駅付近の計画が再開発か土地区画整理かで決まらなかったことから現在の駅舎を仮駅として設置していた。現在は土地区画整理で決定したこともあり、京急の駅まで延伸させるべく工事を進めているものだ。金沢区住民の重要な公共交通というだけでなく、観光面でも大きな効果が期待できる同現場の進捗状況を取材した。(井手迫瑞樹)
全体一般図
駅舎は75.5mの連続鋼箱桁2層ラーメン構造
2次施工分は連続2主鋼箱桁
橋梁構造
橋梁は大きく金沢八景新駅舎部分と国道16号~既設桁接続部に至る部分の2つに分けられる。
駅舎部分は橋長75.5mの4径間連続鋼箱桁2層ラーメン構造で、基礎はφ4500の場所打杭を採用している。基礎杭は全部で10本計画され、鴻池・長野JVと松尾・土志田JVがそれぞれ6本、4本担当して施工した。地盤は片流れ構造になっており、支持層深さは最大で約20mに達した。
2次施工分はすでに施工している部分も合わせると約160mの鋼4径間連続2主箱桁橋となるが、施工前は2径間と僅かな張り出し部を含む約70m分を架設し、その端部を駅舎として供用している状況にある。既設橋脚は3基(P432、P433、P434)がRC、1基(P435)が鋼製橋脚であるが、既に建設されていた鋼製橋脚は使用されておらず、傍らに仮設駅舎の鉄骨や歩道橋が設置されていた。そこに上下線および亘り桁の3本の桁を支持するため、新たに逆Lの鋼製部材(高さ11m、横断方向の長さ20m)を既存鋼製橋脚に溶接で取り付けて、門型ラーメン橋脚を製作した。基礎杭も新たにφ1,500、深さ23.5mを4本、TBH工法を採用して施工した。歩道橋など邪魔になっていた構造物は門型ラーメン橋脚施工の際に事前撤去している。
TBH工法で施工した
歩道橋部の撤去(下記フローチャート写真12)
2次施工分の継ぎ足しは2径間、84.5mで、市道平潟104号線と国道16号を横架する。継ぎ足し部分と既設高架の閉合箇所は中間支点上にあり、ボルト添接で接合した。
延伸部の鋼重は合計で1580tに達する。
道路橋にはない亘り桁構造
床版は水準3mで3mm以下の高い仕上げ精度を要求
既設桁との接合、床版製作上の注意点
金沢シーサイドラインの新設桁と新設床版の製作に当たっては、既設桁や既設床版に悪影響が出ないよう、事前検討を厳重に行った上で、桁や床版の製作や架設を施工している。
新交通特有の特徴としては、亘り桁を有する点がある。金沢シーサイドラインの運用上、車両が上下両線に渡ることができるように分岐している構造を指すが、道路ではこのような構造はない。亘り桁があるため、複雑な構造になっているのに加えて、今回架設する上下線2本の桁は曲線構造であり、それを既設の桁形状に合わせつつ新設のラーメン橋脚にすりつけなければいけない。そのため事前測量を厳重に行い、線形がきちんと合うように既設の桁を調査して製作・施工したものだ。
床版は一般の道路橋とは比べ物にならない平坦性を要求される。新交通において走行路の平坦性は水準3mで誤差3mm以下の高い仕上げ精度を要求される。平坦性は安全と乗り心地にダイレクトに影響するためだ。桁上には200mm程度の厚さの床版を打つが、その上に打設される厚さ310mmの走行路コンクリートの上を車両が走る。精度を要求されるのはこの走行路コンクリートである。
コンクリートはひび割れを防止する必要があるが、切削目地(+シール)を設置し、膨張材や混和材などを使ってコンクリートの配合を工夫や、打設のスパン割を調整していく手法などが考慮されている。国道16号上での施工となるため、圧送距離が長く、最長で50m超に達することが予想される。そうした現場条件を勘案して施工を検討していく必要がある。
駅舎部施工は昨年2月から現場入り
橋脚の架設は4か月で完了
施工フロー
上部工および下部工の一部を施工するJFEエンジニアリング・北日本機械JVは、一昨年の10月に現場の試掘調査(障害物の有無など、ボーリングはそれ以前に試掘済み)や既設桁接続部の調査を経て、昨年2月から現場入りした。(京急駅舎側に新設する)駅舎部の基礎アンカーフレームの据え付けから現場施工を開始。次いで駅舎部の橋脚(約12m、幅14m)を架設した後、橋脚の縦梁を施工した。橋脚の架設は平成28年9月1日から始めて12月末に完了している。
施工フローチャート
写真1 既設桁仕口の計測
写真2 門型ラーメン橋脚部の場所打杭の施工/写真3 駅部高架橋のアンカーフレームの設置
写真4(左) 駅部高架橋の場所打杭2次施工/写真5(中) 門型橋脚部のアンカーフレーム設置
/写真6(右) 門型橋脚部のフーチング躯体工
P435の既設橋脚との接合は現場溶接
金沢シーサイドライン側のP435は同年5月から新設ラーメン橋脚の柱部の場所打ち杭の施工に入り、フーチングまでを8月いっぱいで完成させた。次いで11月末に柱部の建設を完了、ラーメンの横梁スパンを調整(現地計測により梁部分の原寸を図って製作に反映)し、梁部分の架設を1月24日に行った。既設橋脚との接合は現場溶接により1週間かけて行った(h=2250mm、w=2100mm、t=22mm~31mmの全断面溶接)。
写真7 駅部高架橋の橋脚柱部架設
写真8 既設橋脚のフーチング増厚
上部工は、最初に架けたのが金沢シーサイドラインの駅舎から国道16号に向かって市道を跨ぐ部分。1月25日に一発目を架設し、次いで2月に下り線(陸側)と亘り桁、4月6日に上り線(海側)の桁の一部を張り出し架設(約10m、陸送可能な長さの最大)し、残る国道16号を跨ぐ桁(22m、31t)を4月9日に架設した。
写真9 駅部高架橋上部工の横梁部架設/写真10 同縦梁架設
写真11 門型橋脚柱部の架設
写真13 門型橋脚梁部の架設