塗膜除去に「EPP工法」採用
16tラフタークレーン用いて1日10枚程度架設
施工
施工はSMCシビルテクノスが担当した。最初に生じた課題は「鋼製ブラケットの補修については指針がなく、どのくらいの損傷であれば取替に値するか手探りで進めた」(同社)こと。結果的に取替数量は、積算時に比べ施工時で1割ほど増加した。また、取替に際しては既設塗膜に鉛が含まれていることから塗膜剥離剤(ここではJFEエンジニアリング「EPP工法」を採用)で剥がしたうえで、施工している。
EPPを用いて既設塗膜を剥離/ブラケットの補強鋼材を取り付け
補強部の再塗装状況
床版の取替は下り線側を一部通行止めとし、上り線側を交互通行規制した形で施工している。「サクセムを用いたプレキャストパネルは羽田空港のD滑走路で採用されているが、道路橋床版での適用は初めて」(同社)。幅2050mm(地覆込)×長さ2000mm~3000mm×厚さ80mmのパネルを38枚、16tラフタークレーンを用いて1日10枚程度架設していった。架設に当たっては「パネル架設前にスタッド位置の測量を丁寧に行って、位置ずれを生じないように施工した」(同社)。パネル重量は長さ2000mmで1.1t、3000mmで1.6tであり、当初は25tラフタークレーンでの施工を計画していたが、作業半径を検討し、旋回時に反対車線の上り車線側に車体がはみ出さないように計画し、16tラフタークレーンを選定した。それによりクレーンの据え直し回数を減らす事が可能となり、クレーン据付時1回当たりの架設枚数を多くすることができた。また、パネルの玉掛吊り具には、六角ボルトにて固定し360°回転できる自在型の吊り具を用い、電動工具で締め付け、玉掛け作業サイクルの短縮を計り、架設作業を安全・迅速に終えることが出来た。
床版架設前の状況/16tラフタークレーンを用いてサクセム床版を架設
架設完了状況
歩車道境界部からの漏水を防止
パネル同士の継手は、接続部に深さ50mm程度の切り欠きを入れて、鉄筋組立後、無収縮モルタルを打設してパネルを一体化している。また、鋼製ブラケットの損傷が歩車道境界部からの漏水によって生じた可能性が大きいことから、床版表面には塗布型防水工をしっかりと施すとともに、歩車境界部の界面から鋼床版の車道側へ網状ルーフィングの補強を貼り伸ばし、歩車道ブロック設置時に防水工が傷まないよう施工した。
継ぎ目部に無収縮モルタルを打設
網状ルーフィングの施工/塗布型防水工の施工
舗装を打設して完了
塗り替えは既存塗膜の除去が課題
今後は、来年度に最後の区間の歩道床版を取り替える
床版取替後は、塗装の塗り替えに着手する。塗装は外面部が4~6年周期、内面部が5~7年周期で塗り替えているが、現在まで全て3種ケレン相当で塗り替えており、膜厚は一部で1000μmを超えている。また、既設塗膜には鉛が入っていることが想定されており、PCB含有の有無については未把握の状況だ。塗装面積は外面だけで約5,000㎡に達する見込み。よって、既存塗膜の除去について課題をクリアする必要があるといえそうだ。
城ケ島大橋 中央の赤い部分が鋼桁部