神奈川県東部漁港事務所は、三浦市の三浦半島本土と城ケ島の海峡部に架かる城ケ島大橋の歩道部床版(RC構造)を超高強度繊維補強コンクリート床版(サクセム)に取り替えを進めている。設計基準強度180N/㎟を誇る同素材の床版架替への採用は初。その現場を取材した。(2017年4月1日、井手迫瑞樹)
城ケ島大橋補修仕様一般図
西側歩道部の方が腐食拡大
東側に比べて取替数量は約7倍に拡大
城ケ島大橋は昭和32年に起工し、35年に建設された橋長575m、有効幅員10.6mのPC・鋼複合橋。詳細は城ケ島側の側径間が192.7mのPCポステン単純T桁×5連、中央径間が235.6mの鋼3径間連続鋼床版箱桁、三浦半島側の側径間が146.7mのPCポステン単純T桁×4連という構造だ。下部工を清水建設、上部工は鋼桁部を横河橋梁製作所(現・横河ブリッジ)、PC桁部をオリエンタルコンクリート(現・オリエンタル白石)がそれぞれ担当して建設された。平成14~18年にかけて下部工の耐震補強を施工、スレンダーなその特徴を毀さないためPCM(マグネライン工法)によって巻き立てたのは記憶に新しいところだ。平成19年に城ケ島大橋単独の長寿命化対策検討委員会(委員長=倉西茂東北大学名誉教授)によって、橋梁劣化状況を確認した上で翌20年度に計画を策定し、21年度から各種補修補強に入っている。
既にPC桁部の補修は完了しており、現在は鋼桁歩道部のブラケット補修、床版取替を進めている。既存のRC床版は床版下面にひび割れ、遊離石灰、コンクリート剥落が見られたことから、床版の取替を判断したもの。平成25年に三浦半島側上下線(56.8m×2)、26年度に中央支間部下り線(100m)、27年度に同上り線(100m)、現在は城ケ島側支間(78.8m)の下り線を取り替えている。
鋼製ブラケットは、腐食が大きかったことから個所によっては下フランジあるいは上フランジ丸ごとの交換などかなり大規模な補修を行っている。傾向として下り線側(桁の東側)より上り線側(同西側)の方が海風の吹き方(西側からの巻き上げ)の影響か損傷が大きく、補修に使用した鋼材量は、25年度に施工した56.8m分で東側1tに対し西側は7tに達した。
超高強度繊維補強コンクリート(「サクセム」)を採用したのは、他の素材と比べて「50年間のLCCで最も縮減できる」(同事務所)と判断されたため。比較検討の結果、最もコストが近いPC構造と比較しても「1割程度縮減できる」(同)ことが評価された。(鉄筋を使用しないため)薄く、軽量化できることも特徴だ。
サクセム床版製作に用いる型枠/専用の鋼繊維を投入
二次養生状況/サクセム床版の出来形