中日本高速道路は、八王子支社管内の中央道諏訪南IC~諏訪IC間の小早川渡河部および弓振川渡河部にある小早川橋・弓振川橋下り線について、10月11日~11月30日の51日間両IC間の下り線を閉鎖し、上り線を対面交通規制にした上で、損傷した床版・壁高欄・遮音壁の取替および高性能床版防水の設置などを行った。凍結防止剤による塩害により、RC床版内の鉄筋が腐食膨張し、コンクリートのひび割れや剥落、漏水が発生していることから抜本的な対策として床版を取り替えるもの。弓振川橋は元々が単純合成桁として供用されていることから、プレキャスト床版への取替に当たっては、床版との合成効果を考慮せずとも成立する構造として設計を行う必要があり、鋼桁の補強を必要とするため、桁の下フランジに外ケーブルでプレストレスを導入するなどの工夫を施した桁補強を行っている。他、検査路に一部FRP製、桁塗り替えに循環式エコクリーンブラストなど最新の技術を導入している現場ルポをまとめた。(井手迫瑞樹)
平成9年度に床版増厚したものの再劣化
上下線合わせて約30000台の交通量、大型車混入率は3割弱
損傷状況および対策概要
小早川橋・弓振川橋は両橋とも1973年に供用された。橋長・橋梁形式は、小早川橋が132㍍の鋼3径間連続非合成4主鈑桁橋。弓振川橋は203.5㍍の4径間連続PC中空床版+鋼単純合成鈑桁+6径間連続PC中空床版橋だが、今回は39.250㍍の鋼単純合成4主鈑桁橋が対象となる。凍結防止剤散布による塩害(鉄筋近傍の塩化物イオン量は1立方㍍あたり約5㌔を検出)が顕著なことや、供用後の予測を上回る上下線合計約30,000台弱の交通量により、舗装は修繕箇所が多く、床版下面を回ると遊離石灰やかぶりコンクリートの剥落、鉄筋の露出・腐食が生じており、貫通クラックによる漏水も所々で生じている状況だ。RC壁高欄も塩害により被りコンクリートの剥落、鉄筋の露出・腐食が生じている。床版は平成9年度に既設床版(厚さ210㍉)上面を10㍉切削し、50㌢増厚(SFRC、界面接着剤は不使用)補強した上で、旧仕様による床版防水を行っているが、増厚コンクリートの新旧界面で剥離が生じていることが確認されるなど、最新の点検では前述のような損傷を起こしていた。
床版下面の亀甲状のひび割れ、遊離石灰(左)/増厚部界面の劣化も見られる(右)
床版の取替面積は小早川橋が1,074.8平方㍍、弓振川橋が321.6㍍。床版を撤去・再設置した上で、高欄・遮音壁を製作・設置し、高性能床版防水を床版全面および地覆立ち上がり部まで施工、高性能舗装を設置したもの。他小早川橋では4箇所、弓振川橋では2箇所の伸縮装置取替工も施工した。
小早川橋床版切断計画図(左)/弓振川橋床版切断計画図(右)
現場は10月11日から51日間、諏訪南IC~諏訪IC間を昼夜連続対面通行規制(下り線を通行止めし、上り線を対面通行にする規制)した上で、施工された。工事手順・日数はフロー図通り(下表)。人数は元請側職員12人、一次下請以下の職人100人という大規模なものとなった。
小早川橋(左)、弓振川橋(右)の施工フロー図
220㌧クレーンで片押し施工
128枚を撤去、64枚架設
床版取替
1.小早川橋
具体的には、まず準備作業として足場を設置した後、舗装切削・既設壁高欄・床版の撤去~架設までを11日で施工した。床版の撤去・架設は220㌧クレーン1台を使って、A2側からA1側へ片押し施工した。
舗装切削後はまず壁高欄を撤去する。壁高欄撤去工は床版撤去のためのダイヤモンドカッター工や、(吊上げのための)コアボーリング工などと並行して作業を行った。壁高欄(片側だけ存在。上下線はガードレールによって分離)は1ブロック当たり長手(橋軸)方向に7㍍(重量は約2.7㌧)ずつ、ワイヤーソーによる吊切りを行った。予め鉛直方向の縁切りを行い、25㌧ラフタークレーンで吊った状態で、水平方向の縁切りを行うもの。床版については従来通りにダイヤモンドカッターで縁切りを行った上で、ジャッキアップして桁との縁を剥がし、220㌧オールテーレンクレーンで吊り上げて撤去する。1枚当たりの撤去サイズは床版全幅を半分に分ける形で橋軸方向2.2×直角方向最大5.2㍍(厚さ250㍉、重量は1枚当たり7~8㌧)、1日にこれを22枚程度剥がし、橋軸2.0×直角10.15㍍のプレキャストPCパネルを11~12枚(厚さ220㍉、約14㌧)設置する工程を繰り返した。撤去枚数は128枚、設置パネル数は64枚。斜角は80度と多少あるが、工程短縮のためパネル形状も斜型に製作し、端部の現場打ちコンクリート打設工を省略している。
小早川橋の床版切断計画詳細図
床版取替施工時の小早川橋遠景(左)/運搬されたプレキャストPC床版(右)
ループ継手が見える(左)/撤去が完了した部分(右)。ここにプレキャスト床版を設置していく