九条跨線橋左岸側アプローチに繋がる橋梁を建設
鴨川東岸線「橋梁上に交差点を作る珍しい構造」
京都市は、鴨川、JR奈良線、京阪本線、師団街道など重要河川や鉄道、道路を跨ぐ九条跨線橋の両側アプローチ橋の補強およびそれに交差上に繋がる新橋の架設を進めている。建設と保全が複雑に入り組む現場を取材した。(井手迫瑞樹)
鴨川東岸線 阪神高速京都線鴨川東出入口との結節点
近傍に雨水幹線 橋脚を立てることができない
左岸側
現在、京都市は鴨川左岸部を南北に通す鴨川東岸線の建設を進めている(右絵参照、京都市公開資料より)。鴨川左岸の出町柳(北端)から十条通(南端)までを南北に結ぶ主要幹線道路として計画されている路線。阪神高速京都線鴨川東出入口との結節点としても重要な道路で、いわゆる「師団街道」(旧国道24号)とほぼ並行して走る線形となっている。
現在は出町柳から塩小路通までの区間及び第一工区(松風橋から十条通まで)の312㍍の建設が完了しており、中間部715㍍の工事を行っている。中間部のうち橋梁は274㍍を占めている。
橋梁構造は連続PC中空床版橋であり、府道143号九条跨線橋の左岸側アプローチ部(RCラーメン橋)に繋がる形で建設される。すなわち「橋梁上に交差点を作る珍しい構造」(京都市、イメージパース参照)。既に下部工は完了しており、現在は南側(172㍍)のアプローチ部との接続部60.7㍍の上部工を施工中。記者が取材した9月23日は既に2径間の現場打設及びPC緊張を完了しており、PCのグラウト注入工を施工している段階だった。
PCグラウト注入工の施工
さて、面白いのは現場条件とその対策である。最大の注意を要する現場条件は既設アプローチ橋の近傍に雨水幹線があることだ。そのため近接して橋脚をたてることができない。対策として接続部となる既設アプローチ桁の橋脚に新設桁を受けるための梁を増設する方法を採用した。
近接する雨水幹線(写真、中央やや下の2つの長方形の坑口)
既設橋脚の一部をマイクロパイル&RC巻立てで補強
受梁はNAPP工法を用いてPCで補強 支承は全高70㍉のHIPを採用
ただ、そうした対策を行うと既設橋脚が構造的にもたない。そのためP25~P28の基礎に高耐力マイクロパイル工法を用いて、隣接する道路に影響を与えないよう考慮して補強している。さらに橋脚柱をRC巻き立てで補強すると共に柱同士を横梁でつなぎ、新設桁を受けるための受梁はNAPP工法を用いてPCで補強している。なお、支承は全高70㍉と極薄のHipsを採用している。加えてP26~P28間の床版のみ最大100㍉のPCMを用いた下面増厚(吹付)工を用いて補強している。
マイクロパイルを用いて既設橋脚を補強/支承は極薄のHIPを採用
NAPP工法を用いてPC補強(施工前の写真)
新設部の上部工架設は支保工足場上での現場打ち施工であるが、交差道路上のクリアランスは3.5㍍という制限があり、その中で組んだ足場内での作業となる。型枠や鉄筋を組む際の作業高さは僅かに60㌢しかなく「自動車を修理する時に使うような台車を用いて」(元請のIHIインフラ建設・木原組JV)配筋や型枠設置をしなければいけない個所もあった。
桁本体のコンクリート打設は夏場施工ということもあり、遮光ネットで全体を覆ったうえで施工した。また高性能AE減水剤を用いてスランプを12㌢程度確保している。スパイラル型バイブレーターを使用して密実なコンクリート打設に努めたほか、夏場であることを考慮し、交代要員を多めに配置し、熱中症災害を予防した。
交差点部の最大幅員は35㍍に達する
九条跨線橋との接続は、まず西行道路を1車線分通行規制した上で、ダイヤモンドカッターおよびブレーカーで接続部の張出床版、高欄を撤去した。その次に桁同士をつなぎ合わせるが、交差点部のため最大幅員は35㍍に達する。これを(ゴムジョイント)荷重支持型縦型両側歯型ジョイントで繋ぐ構造とした(遊間幅は300㍉)。止水型ジョイントを採用しているが、フェールセーフ構造として受樋および導水パイプを設けて、止水性能の低下による漏水が生じても橋脚や支承に損傷が生じないよう配慮している。
交差点部のため最大幅員は35㍍に達する。
これを(ゴムジョイント)荷重支持型縦型両側歯型ジョイントで繋ぐ構造とした
当該区間の上部工工期は11月15日に完了した。