道路構造物ジャーナルNET

1日約3万5500台の重交通が通過する県下有数の重要橋

大分県 新大分川架橋が進捗~幅30㍍に及ぶ8主桁を同時に送り出し~

公開日:2016.03.23

 大分県は、地域高規格道路大分中央幹線道路の一部をなす都市計画道路庄の原佐野線(元町・下郡工区)の建設(延長1.2㌔)を進めている。大分市内の都市活動の活性化、大分川架橋部における混雑緩和、大分自動車道大分IC並びに東九州自動車道大分米良ICへのアクセス強化が目的。その中で最大の構造物である新大分川架橋(仮称)を中心に進捗状況、技術的特徴について報告する。(井手迫瑞樹)

盛土構造を高架構造に一部変更

1.路線概要
 大分中央幹線道路は大分自動車道大分ICから市道(都)下郡中判田線(県道中判田下郡線)を結ぶ延長6㌔の地域高規格道路である。その中の東側、大分市六坊南町(「芸短大北交差点」)~大分市大字下郡(「下郡工業団地入口交差点」)間1.2㌔(元町・下郡工区)は、立体化したJR久大本線の下をくぐり、国道10号との交差部は跨道橋をかけて立体化、大分川渡河部に工事中の新大分川架橋を経て(都)萩原鬼崎線(市道下郡工業団地線)に至る(右写真は路線完成イメージ)。
 国道10号跨道橋と新大分川架橋の間は盛土構造で考えていたものの、旧万寿寺(大友氏菩提寺)跡の遺構が出土したため、高架構造(109.5㍍のPC3径間連結少数主桁橋)に変更している。全体事業費は約140億円。

桁を3分割して順次架設

2.国道10号跨道橋
 アプローチのため、西側については現行4車線区間を跨道橋の下部工工事のために潰して、通行車線は平面部の両側(片側1車線)に切り替える車線変更工事を進めていたが、このほど切り替えが完了し、国道10号跨道部の下部工工事本体工に着手している。上部工工事も年度内発注の見込みだ。同橋は橋長66㍍、幅員17.5㍍の鋼単純鋼床版箱桁橋。
 国道10号跨道部のため、上部工架設は夜間に通行規制をかけて施工する方針。施工方法はトラッククレーンベントで、桁を3分割して順次架設する。防食は、「錆汁などの発生が許されない」ため、重防食塗装を採用する。設計は西日本コンサルタント。上部工の請負業者は未定(現在入札手続き中)。

大分川河口部では弁天大橋以来半世紀ぶりの新設橋

3.新大分川架橋
 同橋は、橋長349.9㍍(支間長57.25㍍+4@58.25㍍+57.25㍍)、幅員31.3~36.3㍍、鋼重2828.2㌧の鋼6径間連続非合成鈑桁橋(8主桁)である。大分川河口部の橋梁としては最長を誇り、「河口部では弁天大橋以来半世紀ぶりの新設橋」(大分県大分土木事務所)の架橋となる。供用時には1日約35,500台の重交通が通過する県下有数の重要橋になることが見込まれている。


大分川河口部では最長、河口部では弁天大橋以来半世紀ぶりの新設橋となる

新大分川架橋の下部工

 架設は両側堤防付近の高水敷上のみトラッククレーン+ベントで行い、中央の277㍍は左岸から右岸に向けて先端に手延べ桁を設けて送り出す方式でかけ、最後に1.6㍍程度所定の位置に桁を降下させる手法を採用している。


架設計画

延長91㍍、幅30㍍の軌条設備
 6支点に桁送り装置を配置して施工

 桁架設は「10月~翌4月末までの限られた期間内に工事を進めなくてはならず、手戻りなく、ミスせず、施工を進める」(笹本英樹・三井造船鉄構エンジニアリング横河ブリッジJV監理技術者)必要がある。スムーズな施工のため、河川内に14本のベントを設置、B14、B15とP2~P5の6支点に20㌧水平ジャッキと移動後の盛替え用200㌧鉛直ジャッキからなる桁送り装置を配置、左岸側に延長91㍍、幅30㍍の軌条設備(主桁に合わせて8本のレールを配置)を設けた。


桁を直下から写す

反力管理を徹底している

 実際の送り出しは4回に分けて施工している(①56㍍、②82㍍、③74㍍、④65㍍)。軌条設備の台車の上に所定の桁をトラッククレーンで地組みし、約40㍍の手延べ桁を使って送り出すもの。「幅員30㍍に達する8主桁を同時に送り出す」(同)ため、各受点のジャッキで反力管理を徹底しているほか、後方台車には逸走防止と送り出し補助の役割を担わせたレールクランプジャッキを設置し、安全に配慮している。実際の桁の送り出し量については、盛替えが全受け点同時にできないこと、桁継手部で高さ調整がそのつど発生すること、また手延べ桁の先端の鉛直たわみ量は800㍉程度あることからそうしたたわみ差にも配慮しながら施工しなければならない――などにより一日平均15㍍程度となった。ピークの施工人員は技能者が30人(棒芯およびとび職人が25人、ジャッキ操作が5人)、JV職員が5人という体制となっている。

耐候性鋼材を採用 最外桁には表面処理、支点部はD-5塗装系
 防汚の観点から橋脚に「アクアシール1400」を塗布

 防食は耐候性鋼材を使用しており、景観的に目立つ最外桁(G1桁およびG8桁)の外面部のみ、耐候性鋼材用表面処理剤「ラスコールN」を塗布し、早期の錆汁発生を防いでいる。また橋脚、橋台支点部は湿気がこもりやすく悪性錆が生じやすいことから、D-5 塗装系を塗布する対策を施している。また、初期の錆汁によって橋脚が汚れないよう、防汚の観点から橋脚全面にシラン系含浸材「アクアシール1400」を塗布し、錆汁を弾き汚れが目立ちにくくなるように対策している。


最外桁の外面部にはラスコールNを塗布(左)/橋脚、橋台支点部にはD-5塗装系を塗布(右)

アクアシール1400を使って防汚対策

 4回の送り出し完了後は、A2側、次いでA1側のそれぞれ30㍍前後の桁をトラッククレーン+ベントにより4月末までに架設完了する予定。次の渇水期(10月)からはRC床版を現場打ちし、平成29年3月末には打設を完了する予定だ。


1月31日の桁送り出し状況

送り出しがほぼ完了した現況

 新大分川架橋の製作・架設は元請が三井・横河JV。一次下請が岩崎工業(とび)、オックスジャッキ(ジャッキ)、聖晃産業、松浦重機(いずれも重機)。

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