レベル2地震に特化、有機材不使用のため耐久性向上
低降伏点鋼の特性を生かした免震ダンパー
富士市にある施工総研は2016年1月28日、茨城県筑西市内の光陽精機試験棟内で、レベル2地震時の応答加速度(地震時慣性力)を大幅に低減できるように開発した伸縮装置付き座屈拘束型ダンパー(以下BRD、左が概要図)の公開実験を行った。公開実験には100人以上の産官学の関係者が参集した(左写真)。施工総研は平成24 年度から民間各社(川金コアテック、ビービーエム、西武ポリマ化成、ハナミズキブリッジプランニング)と、BRDの非線形弾塑性地震応答解析による既存の粘性ダンパーとの性能比較、実大試験体を用いた静的及び動的繰返し試験による履歴特性の検証等を実施してきた結果、レベル2地震において強力な耐震性能を有し、経済性も従来の粘性ダンパーと比べて約3割のコスト縮減となることが確認された。今回の動的性能試験では、座屈拘束ダンパーと衝撃力緩衝機能付き伸縮管の複合履歴の検証、及び0.8~3.0 秒の多様な周期帯における周期依存性の検証等を行い、広範囲な周期帯で粘性ダンパーよりも、地震エネルギーの熱エネルギーへの変換効率が優れ、その結果、地震時慣性力が大幅に低減できることを示した。今後は施工総研においてBRDの設計・施工ガイドラインの作成を行う委員会を設置し、年内にもガイドラインなどを上梓する予定。委員には藤野陽三横浜国立大学上席特別教授、前川宏一東京大学教授、宇佐美勉名城大学教授、山崎淳日本大学名誉教授,千々和伸浩東京工業大学助教などが内定している(委員会事務局は施工総研が運営予定)。これに伴い、今後の開発、改良は民間各社からなる(仮称)BRDダンパー研究会が引き続き担っていく。
新しいダンパーは、座屈拘束型低降伏点鋼(商品名「制震ブレースSUB」:横河住金ブリッジ製、左中写真)と、主に高層建築物の制震に使われている皿ばね(平和発條製、左下写真)という構造を用いた衝撃力緩衝機能付き伸縮管から成り立っているもの。座屈拘束型低降伏点鋼は圧縮力および引張力に対して降伏することで、極めて大きな減衰性能を発揮する(等価減衰定数で表すと約55%程度、鉛入り積層ゴム支承は同15%程度)。但し、歪み±1%程度の降伏点を超える繰返し正負載荷に対し50回程度、±2%だと10回程度で破損する性状があり、エネルギー吸収は大きいが繰返し載荷に弱いという課題があった。そのため伸縮装置により、レベル1地震およびクリープ、乾燥収縮、温度変化時に生じる橋桁の変形や移動に関しては、伸縮管により変形及び移動を拘束せずに自由に可動させ、低降伏点鋼にはそれらによる荷重は作用させないようにした。そして、レベル2地震動が発生した場合には、伸縮管のストロークエンド到達時点から座屈拘束低降伏点鋼が作動し、大きな履歴吸収エネルギーを発揮することを期待したダンパーである。