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景観的特徴を変えず補強

愛知県 橋暦90年 歴史的名橋「殿橋」の上部工連続化による耐震補強

公開日:2015.12.16

埋設ジョイントの損傷が周囲に影響
 旧軌道部は主桁間が狭く頑丈な作り

 補修補強工事前の概況(主桁、床版やコンクリート部の劣化、過去の更新状況)
連続化工事は、主として耐震性能向上を図るために行うが、遊間からの漏水という損傷要因を物理的になくす副次的な効果も狙っている。というのも、現行の桁端部の遊間は全て(漏水の抑制などを狙って)埋設ジョイントを設置しているが、それが損傷した結果、中性化や塩害といった損傷が目立っている。

 床版防水は未設置だが、(前述の桁端部を除き)床版自体の損傷はそれほどなかった。排水勾配も1%程度有していた。また、中央部は昭和2年に供用時に市電を通していたため26㌧のボギー車仕様で建設されており、車道に比べて主桁間が狭く頑丈な作り(左の上部工断面図参照)となっていることに加え、鉄道部の床版厚は200㍉と車道部(160~190㍉)に加え厚く、損傷はそれほど生じていない。加えて市電の軌道敷は床版上に10㌢ほど存在している(内容は施工の項で後述)。歩道部は建設時からあり、昭和63年度に車道をいじめて少し拡幅しているが、(新しく打設した箇所はないため、歩車境界部にありがちな漏水による)劣化はしていなかった。車道部桁は12㌧仕様で、昭和54年に20㌧化(主桁と床版下面に鋼板接着を行った。主桁は全面に施工済み、床版は荷重増対応ではなく、劣化対策として鋼板接着をした様子が観察される)。また主桁のかぶり厚は34㍉程度、床版のかぶり厚は20㍉程度しかなく、もともと被りが薄く(床版下面の設計被りは20㍉程度)、鉄筋などが見えた関係もあり、それも踏まえて、補強というより補修の観点で鋼板接着を行ったような形跡が見られる。疲労損傷の目安となる大型車交通量は6.4%(24時間交通量は23,542台)。

4つの構造を比較検討

対策工の選定(耐震補強)
 連続構造としては、4つの構造が考えられた。それは①PC連結桁と同様の連結構造、②床版連結構造(リンクスラブ)、主桁、床版連続構造(中間支点部打替え)、④主桁、床版連続構造(鋼板や炭素繊維成型板接着などによる連続化)である(下表1)。これに対し殿橋の工事にあたっての固有条件として、a.供用下の工事、段階施工が必要、b.橋長(連続化により橋長は若干縮んで113㍍になる、c.移設や撤去の即時対応が困難な多種の占用物件があり、施工範囲が限定される、d.過去に行った既設コンクリート補強構造(主桁や床版の鋼板接着)との関係――があり、最終的に④の構造を採用した。


連結構造の比較表

 ④は鋼板でジョイント(遊間幅は10~20㍉)の前後の計約1㍍の主桁ウエブを鋼板接着によりつなぐもので上面の床版は炭素繊維プレートを鉄筋代わりに用いて連結する(詳細は後述)。
 連続化することによって得られるメリットは3点ある。第1は支間中央における上部工活荷重応力の低減だ。連続化により支点付近に負曲げ応力が発生するが、支点中央の主桁下面の正曲げ応力が低減(連続化前の5,558kN/平方㍍が連続化後は4,254 kN/平方㍍へ)されるため、既設構造物に懸かる負担が軽減される。第2は活荷重や経年の影響により劣化している橋面舗装および伸縮装置部について打ち替え、交換が必要になっている。またこれに合わせる形で桁端部を含めた橋面床版の補修、床版防水工の設置(現在未設置)も施工しなくてはならない。上部工の連続化工事は、こうした工事と同時施工できるため最も経済的である。最後は形状を大きく変えなくてもよいため、景観面でも優れているという点である。

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