国土交通省 年内に提言をまとめる
落橋防止装置等の溶接不良に関する有識者委員会を開催
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国土交通省は13日、落橋防止装置等の溶接不良に関する有識者委員会(委員長=森猛法政大学教授)の第1回会合を開催した。委員会では勧進橋の経過報告、溶接不良対策の現状と今後の予定、溶接不良の程度とその影響度合い、原因究明および再発防止の議論の方向性について話し合われた。今後3、4回の開催を経て年内にも提言をまとめる予定だ。
勧進橋については、一部不良箇所(今回は落橋防止構造の上部構造の取付部材)について、引張試験を行った結果、溶接不良箇所も母材破断であったことから強度は十分にあるとの結果が出た。ただし、他の箇所の不良が引張試験を行った部材と同様である保障はなく、また通常の検査で用いる超音波探傷試験では内部の溶け込み不良の大きさや形状を正確に把握することが難しい。また、溶け込み不良の大きさや形状、外力の加わり方など様々な不確定要因があることから、補修あるいは取り替えについても検討していく方針だ。なお、久富産業が関わった98橋の不良については全て補修もしくは取り替える方針。瑕疵担保期間中のものは全て「元請に要請していくことになる」一方、瑕疵担保期間外のものについては、今回議論の俎上には載せなかった。また、久富産業以外の製作会社が携わった箇所の溶接不良も見つかった(国道1号久能高架橋)が、現在のところはサンプリング調査を進め、全橋調査は行わない方針だ。
原因究明、再発防止については、発注者のチェック、請負会社・製作会社のチェック体制、検査会社の検査方法をそれぞれ改善しなくてはいけない認識で一致した。製作後のチェックだけではなく、溶接時のチェック(溶接時の電流や電圧、溶接直後の写真撮影、記録といった)、プロセス管理も有効ではないかと意見も出た。また、発注者もしくは発注者が別途検査会社を発注する形で、発注者に対して責任を負う検査会社により抜き打ちあるいは全数検査を行うことも必要ではないかという意見も出された。
(記者の目)
委員会後の記者ブリーフィングで森委員長は、「性善説が覆された」という言葉で、現状を表現していた。しかし、少なくとも久富産業の溶接不良は5年以上前から行われていたわけで、性善説はとうの昔に喪われていた可能性がある。とすれば今後は性悪説に立たねばならない。コンプライアンス、技術者倫理が守らなければ、管理を厳しくするしかないわけで、それには最終段階での発注機関自身での検査の導入は必須だろう。インハウスエンジニアの強化はもちろんだが、それが追い付かない場合は外部の技術者の力を借りることも必要だ。その分コストは上がる。検査コストもさることながら受注者のコストも上がる(すなわち予定価格も上がる)。しかしそれは甘受すべきだろう、耐震は地震国日本の安全の要であるのだから。