電磁波レーダー搭載車でスクリーニング、極小径のコアを開けてカメラにより詳細調査
Single i 工法、床版キャッチャーを北海道で試験施工
現場では、取得データの精密さを担保(どの深さに損傷が出ているかを正確に)するため削孔前にレベリング調整を行ったうえで、舗装上からφ5㍉で削孔し、次いでひび割れに含浸する色付きの特殊樹脂を注入した。同樹脂はMMA(メタクリル樹脂)系の2液混合型でこれを注射器のような形状の低圧注入機で注入するもので、損傷部の判別と再削孔時の角欠け防止を考慮したもの。15分ぐらい養生し、特殊樹脂が硬化した後に、再度φ9㍉で同位置に削孔し、極小径の内視鏡を挿入した。すると樹脂が含浸したひび割れ部は色が変わっているため、その場においてモニターで視認できた。
また画像は円周画像だけでなく、一部分を二次元的に切り取った画像表示もでき、より損傷を視認しやすくできる機能も兼ね備えていた。また別途、内視鏡を一定速度で動かして撮影した動画を専用ソフトウェアで画像処理し、ひずみ差の少ない展開図としてほぼ同時に出力できる機能も備えており、数分後にはどの位置にどのような微細ひび割れが生じているか現場でチェックすることが可能だ。
レベリングを調整しつつ削孔/ゆっくり押し込んでいく/削孔した箇所に色つきのMMA樹脂を注入/極小の削孔径
削孔内部に内視鏡を挿入すると/このようにくっきりと内部の状況が分かる/撮影後はリペアミックスS-iで補修
撮影した画像は上記のように連続展開できる。展開モデル図(左が上部)
点検後、削孔した跡はSingle i工法用専用充填材「リペアミックスS-i」で補修する。トクヤマエムテックが同工法のために開発した無機系およびアスコン系の充填材であり、施工後早期の養生で車両通行可能だ。
留萌開発建設部の岡田慎哉道路計画課長は「構造物をほとんど傷つけず微破壊で内部検査可能な工法は、既設橋床版等のコンクリート構造物の内部を調査する手法としては非常に良いと考えている。今後、現場での積極的な適用を考えていきたい」と語っていた。
高砂橋のように削孔すれば、上面に鋼板が設置されているかどうかが分かるなど、現場の損傷と床版キャッチャー、Single i工法とを掛け合わせて調査することで、図面に記されていない補強内容なども構造物への負担をほとんどかけることなく調査できると考えられる。
こうした床版下面に損傷が出ていても舗装の状態が良い橋梁はままあり、その理由を確かめられる(写真はイメージです)
鋼板補強部においては、今次の試験施工では行わなかったが、アドラーで鉄板を最小限削孔し、その後にSingle i工法で施工することで、強度を損なうことなく内部のコンクリート状況を調査することが可能だ。既に下面を鋼板補強している箇所で鋼板に孔開けし、交通規制をすることなく床版の健全度調査を行っている。