45°の斜角 エンドバンド継手を採用
プレキャストパネルも斜角に
床版取替え
以上のような損傷が生じていたことから、菅野川橋では床版を全て取り替える(上下線とも面積は700平方㍍弱ずつ)。ここで課題となるのが、同橋が斜橋であるということである。斜角は45°と著しい。当初は床版のプレキャストパネルについて真角のものを採用することも考慮していたが、「それでは横締PCの配置などを考慮すると場所打ちで施工する面積が著しく拡大してしまう」(同)ため、プレキャストパネルを橋梁形状に沿って斜角にし、場所打コンクリートの量を最小限に抑制した。これは、場所打ちコンクリートをプレキャストパネルにすることで床版部分の高耐久化や交通規制時間の短縮を期待したものである。プレキャストブロックの寸法は1パネル当たり縦(橋軸方向1.775㍍×横(橋軸直角方向)14㍍、(間詰めコンクリート部は橋軸方向に0.385㍍×横は同じ)で地覆立ち上がり部の95㍉まで一体化した形で製作している。
エポキシ樹脂塗装鉄筋、高炉スラグ微粉末を採用
シラン系表面含浸材で予防保全
なお鉄筋は、床版内部は通常のタイプを使用するが、地覆・高欄との接合部およびパネルどうしの継手部はエポキシ樹脂塗装した鉄筋を使用している。また、床版パネルの継手構造はエンドバンド鉄筋を採用。現場打ち部を1個所当たり500㍉程度に抑制でき、なおかつ床版厚さも230㍉程度に薄くすることを可能にした。また、継手部の耐久性向上を図るため、間詰めコンクリートには高炉スラグ微粉末コンクリートを採用した。置換率は50%。同コンクリートを採用することで凍結防止剤に含まれる塩分の影響を抑制できる。また、壁高欄の前面、天端、背面および張出床版下面には、コンクリートを塩害、凍結融解の影響からの予防保全対策として、シラン系表面含浸材(アクアシール1400)を塗布した。
鋼主桁のたわみ差による付加応力の問題を解消
斜角の力学的影響及び対策
斜角構造の床版についての設計の考え方は、道路橋示方書[鋼橋編]「図-解9-2-1」、道路橋示方書[コンクリート編]「7-4-3-(3)、図7-4-1」に準拠した。 本工事の設計においては、図-1に示すPC鋼材の配置方向(斜方向)を床版支間とした道路橋示方書[鋼橋編]に準拠した検討を行った。加えて、活荷重載荷によって生じる主応力方向(主桁に直角方向)に対しても、図-2に示す主桁直角方向を床版支間とした道路橋示方書[コンクリート橋編]に準拠した検討も実施している。
(上)図-1 斜(PC鋼材配置)方向を床版支間した設計断面図(道路橋示方書[鋼橋編]) (下)図-2 主桁に直角方向を床版支間した設計断面図(道路橋示方書[コンクリート編])
なお、図-2での検討においては、PC鋼材配置方向(プレストレス力作用方向)と床版支間方向が異なるため、道路橋示方書[コンクリート橋]に記載されているように、検討支間(鋼桁直角)に対する方向成分を考えた有効成分を考慮して検討を実施している(図-3)。
図-3 主桁直角を床版支間したケースでのプレストレス力概念図
また、プレストレス力が鋼桁直角方向支間に対して、斜角の影響によりプレストレスの有効成分(鋼桁直角方向)にて、検討を行うため、PC鋼材量は増加する。 本設計における、直版と斜版の必要PC鋼材配置(本数)を図-4に示す。
図-4 直版と斜版でのPC鋼材配置比較
当初はプレキャストパネルの直角配置や直角配置でも外側からの片引き緊張も考えた。しかし、図-5のように通常の緊張方法では施工が不可能であり、片引き緊張では場所打ち部が大幅に増加してしまう。加えて、本橋のプレキャスト床版を鋼桁直角方向に配置した場合、鋼主桁のたわみが大きく異なる箇所にプレキャスト床版を設置することにより、プレキャスト床版に付加応力が生じることが懸念される。
これに対してプレキャスト床版を斜め配置にすれば、鋼主桁のたわみ差が少ない箇所への設置が可能となり、鋼主桁のたわみ差による付加応力の問題はなくなると判断した。
図-5 床版構造の比較 PC床版配置方向は直角方向は難しい(上段、中段)、最終的には斜型のパネルを採用(下段)
なお、エンドバンド継手構造での間詰め部の斜め配置については、当該工事以外においても九州縦貫道向佐野橋(交通量 約10万台/日)で施工された事例がある。