床版増厚は層間剥離により損傷
東北道福島西IC~福島飯坂IC間での2橋同時施工による床版取替
東日本高速道路東北支社は、5月24日~6月25日にかけて、東北自動車道の福島須川橋上り線、福島荒川橋上り線(福島管理事務所所管)において床版全面積(福島須川橋約800平方㍍、福島荒川橋約1,700平方㍍)をプレキャストPC床版に取り替えた。昨秋の福島須川橋下り線の床版取替に次ぐもので、今秋には福島荒川橋下り線の床版を取り替える予定だ。(井手迫瑞樹)
1、劣化状況と対策
両橋とも疲労および凍結防止剤による影響が顕著で、平成5(福島須川橋)、15年(福島荒川橋)に床版上面増厚を実施したものの、ポットホールや床版下面の剥離などが生じている。
抜本的に対策するため、福島須川橋上下線および福島荒川橋上下線の4橋で床版取替えを実施するもの。すでに昨秋に、福島須川橋の下り線を取り替えており、今年秋に福島荒川橋の下り線を施工する。
福島須川橋は東北道福島西IC~福島飯坂IC間の一級河川須川を渡河する箇所にある橋長88㍍、有効幅員10㍍の鋼2径間連続鈑桁橋(RC床版)。福島荒川橋は荒川を渡河する箇所にある橋長187.9㍍のRC単純中空床版+鋼4径間連続非合成鈑桁橋(取り替える箇所は鋼桁部170.25㍍のRC床版)。両橋とも昭和50年に供用した。両橋を含む区間の年平均交通量は約21,100台(上り線)だが、大型車混入率が3分の1の7,000台に達している。平成5年および15年にはB活荷重対策として床版をSFRCで5㌢上面増厚しているが最長約20年経過し損傷が生じているため、抜本的対策として今回プレキャストPC床版に取り替える。
両橋梁の一般図
構造概要
写真(左)位置図/(右)航空写真
既設床版は、車両の大型化などによる輪荷重の繰り返しで生じたコンクリートの微細なひび割れや冬季間の凍結防止剤散布の影響によるコンクリート内部への塩化物イオンの浸透により、コンクリート床版の劣化や鉄筋錆が発生し舗装にもポットホールが生じている。平成25年10月には、福島須川橋の上り線の床版下面のコンクリートが剥落したが、その範囲は橋軸4.4×機軸直角1.3㍍という比較的大きな範囲で、剥落箇所を測定したところ1立方㍍あたり15㌔の塩化物イオン量が含まれており、塩害が構造物に顕著な影響を与えていることを確認している。
上面増厚時には既に既設床版部が相当程度傷んでいたことが推測される。また、その際は床版防水を行っていたが、「増厚は全幅を数分割して行われたため、それによって生じる縦目地や地覆との取り合い部分から塩化物イオンを含んだ水が浸入していった可能性もある」(同社)。また、増厚時の接着界面は現在のようにエポキシ樹脂系接着剤を塗布しておらず、接着力不足や母材と増厚層の弾性係数の違いにより界面にかかる圧縮ひずみの影響による剥離も考えられる。平成15年には再度補修を行い、床版防水も設置したものの通常のアスファルト系防水層であり、現在の基準ではグレードⅠにあたる。このような諸条件に加えて、2011年に起こった東日本大震災の影響により大型車も含めた交通量が一時的に著しく増加したため、損傷を促進したことも考えられる。
実際の撤去時にも切削面から漏水が発生しており、増厚コンクリートと建設時の床版の間に滞水していたことが伺われた。また、撤去した床版を見ると上側鉄筋近傍や増厚界面付近に水平ひび割れが生じており、表面は土砂化している。また地覆部には雑草が生えるなど端部からの水の侵入による影響が顕著だったことが伺える(下写真)。鉄筋も腐食により細くなっている状態(設計φ19㍉が14㍉に)も見られるなど凍結防止剤による塩害の影響も確認された。
そうした点を踏まえて、プレキャストPC床版への全面取り替えに際しては橋梁の全幅員を1つのプレキャスト部材として製作し、さらに工場で地覆の立ち上がり部、高さにして16㌢までを予め施工して現場に搬入することで弱点となる床版と地覆の目地部の品質を最大限向上させている。また、プレキャストPC床版の間詰めコンクリート部は現場打ちとなるが、これもプレキャスト部材と同様の形状で全幅および地覆までを一体化した型枠施工により打設している。比較的塩化物イオン浸透による錆の影響が出やすい場所打コンクリート部の鉄筋については、エポキシ樹脂塗装鉄筋、床版防水は高性能床版防水(グレードⅡ)を採用するなど耐久性向上に努めている。
4日間かけて慎重に切り替え
2、現場(全体工程)
5月14日14時から開始。18日6時まで各種規制を行い、18日6時から6月21日までの34日間で既設床版の撤去、PC床版の架設、地覆や高欄など橋梁付属物の設置、床版防水および舗装の設置、交通安全施設工を行った。
両橋上り線の床版を取り替えるため、工事中は一部区間で下り線を対面通行にするよう切り替える必要がある。そのため、4日間程度の時間をかけて慎重に切り替えた。