国土交通省常総国道事務所とNEXCO東日本水戸工事事務所が事業を進めていた圏央道神崎IC~大栄JCT間9.7㌔が6月7日17時に開通する。同区間の開通により圏央道と東関東道水戸線が繋がることになる。それに先立ち2日に報道関係向けに現場公開を行った。その詳細をリポートする。
軟弱な地盤
同区間は、茨城県南部の田園地帯、利根川南岸付近から千葉県境を越えて大栄JCTに至る道路。国土交通省が橋梁・切土・盛土の本体構造の建設を担当し、NEXCOは防水層や舗装などいわゆる「薄皮」や付属物の施工を担当した。
橋梁区間は約1㌔で、ほとんどを切土および盛土が占めている。切土量(約110万立方㍍)に比して、盛土量は約230万立方㍍と120万立方㍍不足しており、90万立方㍍は公共の流用土で補い、30万立方㍍分は購入したものを使用した。盛土高は最大で10㍍に達する箇所もあり、一部で軽量盛土(EPS)を採用している。
田園地帯のため、地盤は軟弱で長期的には盛土部はどうしても多少の沈下を免れえない。沈下によって段差が生じた個所は舗装打ち替え時に舗装厚を厚くすることで調整する方針だ。供用開始は当初3月を予定していたが、その時点では神崎IC付近の地盤が軟弱で盛土部分の沈下が収まらなかったことから、沈下しないことを確認した上で今月の開通となった。
新設ICである下総IC前後など約3㌔は4車線であるが、その他は暫定2車線で供用している。しかし用地は4車線を前提として買収している(写真1)。
写真1 下総IC付近約3㌔は4車線で供用、他は暫定2車線で供用
安全に配慮
下総ICではランプ部の舗装に色付けすることによって逆走を防止している(写真2)。即ちオフランプの舗装には水色、オンランプの舗装にはオレンジ色をそれぞれ着色している。オンランプの舗装が途中でオフランプの水色の舗装に横断されているのはオフランプが優先であり、オンランプの走行車両は一旦停止しなくてはいけないことを示している。夜間でも認識しやすいように照明によって照らしているほか、舗装には光反射ガラスビーズを埋め込んでおり、走行車のライトによって認識できるように工夫している。加えて、高速道路の合流部にはラバーポールを配置(写真3)し逆走を防止している。
写真2 舗装に着色 / 写真3 ラバーポールを設置して逆走防止
また、同区間には約50万ボルトの電圧の送電線が構造物の直上を走っている箇所があることから当該個所における高圧線からの静電誘導の発生を防止させるため、電界誘導ポール(仮称、写真4)を設置している。
写真4 電界誘導ポール(仮称)
大栄JCTは当面、茨城方面のみ接続
大栄JCTは現在のところ、東関東道と圏央道の茨城方面のみがランプで接続された状態にある。東金方面を結ぶランプは今後建設を進める予定だ。しかし、現状茨城方面のオンランプ直上に建設する(東金方面ランプ橋の)橋台部のみ、茨城方面のランプを供用以後は建設できないため、先行して構築している(写真5、6、7、図1)。
写真5、6 大栄JCT
写真7 ランプ直上に橋台を先行構築
図1 大栄JCT 供用開始時と圏央道延伸時(今後の予定イメージ図)
圏央道計画延長300㌔中、約230㌔供用に達する
神崎IC~大栄JCT区間の開通で、圏央道は約300㌔の延長のうち、約230㌔が供用され、圏央道と放射状に配置されている東名道、中央道、関越道と常磐道、東関東道が全て接続された。また、今年度中には桶川北本IC~白岡菖蒲IC間10.8㌔、境古河IC~つくば中央IC間28.4㌔が供用予定で、東名道から東関東道水戸線が圏央道で直接結ばれることになる。
茨城県内では、圏央道の開通に伴い企業立地が進んでおり、昨年度は太陽光発電を除く企業立地件数および面積で日本一となった。同じく圏央道の一部をなす、さがみ縦貫道路が3月に開通した神奈川県では、県央湘南都市圏発展のカギを担う道路として期待されている。
今回の開通により北関東方面と成田空港を結ぶ新たな広域ルートが形成されることになり、観光需要の喚起など新たな効果が期待できそうだ。(井手迫瑞樹) (最終修正6月4日10時14分)