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首都高速道路 

塗装塗り替え工事の火災防止策について中間とりまとめ

公開日:2015.04.07

 首都高速道路は塗装塗り替え工事による火災事故再発防止委員会の中間とりまとめを公表した。当面の再発防止策、最悪事態の回避のための避難計画の作成が骨子。また、継続的な取組事項として塗膜剥離剤を含む可燃物の取り扱いを減らしていくこと、火災安全対策マニュアルの策定などが挙げられている。
 当面の再発防止策として、①施工計画の遵守、②安全設備・装備の使用、③危険物の管理、④安全管理体制の強化、⑤適切な工程の設定を挙げている。
 ①については、危険物を取り扱う場合は火災安全対策および詳細な作業手順を含む施工計画書の提出を義務付け、遵守されているかを現場で監視する。施工計画書記載外の作業を行う場合は予め変更した施工計画書を提出させる。
 ②は常時換気および可燃性ガスの検知警報器の常時配備、防爆性能を有する電気器具、帯電防止性能を有する防護服およびシューズカバーなどの使用を義務付ける。 
 ③は危険物などの数量及び保管方法についてチェックシートを作成し、その遵守状況を確認・担保する。また、危険物の保管方法、取り扱いなどについて事前に管轄する消防署へ確認するとともに受注者に対しても指導する。ほか難燃性または防炎性を有さないシートの使用を禁止、可燃物を保管する際、小分けにして難燃シートなどで養生するように受注者へ指導する。
 ⑤は安全面に配慮した作業計画に応じた適切な作業工程になるように受注者に指導するとともに、工期について柔軟に対応する。
 また、脱出・避難のための措置として避難計画の作成、警報機器の配備および視認可能な誘導灯の避難路への設置も受注者へ指導する。

 継続的に取り組む事項としては、施工方法の見直しとして、塗膜剥離剤を使用しない塗膜除去方法の検証が挙げられている。これは「塗膜剥離剤は、冬季に施工する際は剥離性能がどうしても落ちてしまう」(首都高速道路)ことなどを要因としている。
 また、安全管理体制の強化・充実として作業者向け「火災安全対策マニュアルの策定」、橋塗協など鋼橋塗装塗替え工事に係る業界団体などの意見交換の場を設けることなども挙げられている。

【記者の目】
 塗膜剥離剤はPCBおよび鉛等が含有された既存塗膜の剥離工法として広く使われている。その先鞭を付けた発注機関の1つである首都高速道路が継続的に取り組む事項として、剥離剤を使用しない塗膜除去方法の検討を明言した。その理由としては、可燃性もさることながら、冬季の剥離性能に難があり、剥離剤の使用量や工程が増えてしまう傾向にあることが今回の決定を後押ししてしまったように伺える。これは製品の性能もさることながら、塗膜剥離剤自体が新しい製品分野であり、施工者自体が慣れていないケースがあることも一因と言える。もちろん、先行する一部のメーカーでは供給会社が認めた資格を有している会社にしか施工させないシステムを採っている会社や独自のマニュアルを提供している会社もある。しかし、より塗膜剥離剤の信頼性を向上させるためにも公的な研究機関と共同で「塗膜剥離剤の設計・施工マニュアル(案)」のようなものを作成する時期にきているのではないか、と考える。また、冬季施工でも性能ができるだけ減退しない改良も行っていく必要もある(これは既に各メーカーとも取り組んでいる)。
 一方、発注機関も考えるべき点がある。元々塗膜剥離剤は、環境や安全に対して配慮できる工法として採用したものである。冬季には鋼桁の温度が非常に低くなるため、塗膜剥離剤の性能がどうしても減退する(暖気養生しても施工雰囲気だけ暖かくなるだけで桁温度の上昇という意味では焼け石に水である)――であるならば、冬季は塗膜の成分検証や設計・施工計画あるいは塗装作業以外の補修補強に費やし、桁温度が一定以上の時期に施工することを念頭に置くべきではないか。

 ともあれ、塗装作業は「作業時の安全」と「品質の安定(塗替え塗膜の耐久性向上)」が主眼であろう。その2点を満たすため、民間の企業努力と発注機関の今まで以上の配慮が求
められる。
(文責:井手迫瑞樹)

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