縦目地を作らず拡幅、鋼管集成橋脚を犠牲橋脚に
阪神高速西船場ジャンクション工事の設計概要
拡幅部では既設橋脚の補強は困難
大阪港線拡幅部では、街路直上に位置するため空間的余裕が無く、さらに多くの地下埋設物が存在するため、既設橋脚の補強は困難である。そのため、図-4に示すように既設橋脚間の分離帯に犠牲橋脚を新設して地震時水平力を分担し、常時の荷重は梁を延長した既設橋脚によって支持することとした。犠牲橋脚には後述する損傷制御設計の思想に基づく鋼管集成橋脚を採用した。また、既設橋脚の延長した梁は外ケーブルにより補強する。図-5に既設橋脚拡幅および犠牲橋脚の一般図を示す。
図- 4 犠牲橋脚のイメージ(大阪港線拡幅部)
図- 5 大阪港線拡幅部一般図
最大支間長98㍍の曲線橋
信濃橋渡り線
純粋の新設橋となる信濃橋渡り線は、最大支間長98㍍の曲線橋となっている。線形の関係等から既設橋脚の改築では対応出来ないため、新設橋脚を設けることとした。北側の歩道に地下埋設物が多数あることと、都市計画時の市との協議において歩道には柱を設けない事としていたため、門形橋脚とせず張り出しの大きい逆L形鋼製橋脚とした。図-6に平面図・縦断図を示す。
上部工形式は、新設ケーソンが地下鉄駅に近接することから、基礎の設計への影響を考慮して軽量な鋼床版とした。
図- 6 信濃橋渡り線縦断図・平面図
鋼管集成橋脚
鋼管集成橋脚は、阪神高速で開発された新しい形式の橋脚であり、平成24年に供用した淀川左岸線海老江ジャンクションで初めて採用された(写真-1)。この橋脚は4本組を基本単位とし、履歴減衰機能を有するせん断パネルを組み込んだせん断リンクにより、鋼管を互いに接合することで単一の柱としたものである。死荷重や活荷重などの鉛直荷重を一次部材である鋼管柱で支持し、地震時慣性力などの水平荷重には二次部材であるせん断リンクで抵抗するものである。
大規模地震時においては、二次部材であるせん断リンクに損傷を集約する損傷制御構造の採用により、一次部材である鋼管柱を健全に保つことができるため、地震後直ちに供用可能となり、仮に復旧が必要な損傷を受けた場合でも、せん断パネルの交換だけで元の性能に戻すことができることから、地震時ライフサイクルコストの低減に寄与するものと考えられる。
製作・施工性についても、既製品であるスパイラル鋼管を使用すれば、コスト縮減も期待でき、4本それぞれの鋼管断面は比較的小さいことから、製作時や架設・運搬時のひずみ・変形が生じづらく、現場施工時に目違い等の補正が必要ないため、急速施工が可能となり、都市内での狭隘な現場条件における交通規制時間の短縮に寄与できる。
以上より、本橋脚は安全性、供用性、修復性といった観点から高い耐震性を有しつつ、製作性・施工性・経済性を向上することができる次世代スマートストラクチャといえる。
写真- 1 鋼管集成橋脚(海老江ジャンクション)
異種構造にも関わらず連続性を持たせた景観
景観設計
西船場ジャンクションは人通りの多い街中に位置する構造物であるので、景観にも配慮した。特に中央大通り上に位置する大阪港線拡幅部では、歩道からの視点に配慮した設計としている。
壁高欄外側面については、図-7に示すように雨水による汚れやカビが歩道から目立たないよう内側に角度を付け、またフェイシアライン(橋床版の見附の厚みの部分のライン)の連続性を強調するため、外面下端から1/3の位置に折り目を付けた。
図- 7 壁高欄断面形状
また、梁端部に関しても、通常は垂直面となり漏水による汚れやカビが見られることも多いことから、ここでは図-8に示すように角度を付け、高欄外面と同じく歩道から目立たないようにした。この角度は、既設橋脚梁延長部と新設の犠牲橋脚で揃えることにより、異種構造にもかかわらず連続性を持たせることとなり、さらにシャープな印象も与えられる。
図- 8 橋脚梁の形状
この高欄形状、梁形状についてはいくつものケーススタディを実施し、図-9に示すようなCGを作成して歩道からの見え方を比較し、決定した。
図- 9 大阪港線拡幅部景観設計のポイント
おわりに
現在西船場ジャンクションは平成28年度の完成を目指して鋭意施工中である。工事の進捗状況等は阪神高速のホームページで随時紹介されているので是非御覧頂きたい。
http://www.hanshin-exp.co.jp/company/torikumi/building/nishisemba/smooth.html