鋼材部はガス切断
だるま落としの要領で撤去
ロッキングピアの撤去はコンクリート充填部の鋼材をガス切断し、その後コンクリート部分をワイヤーソーで切断する。(橋脚高は9㍍程度)これも桁下での作業になるが、大きなジャッキを持ってこれないため、約1㌧をめどに撤去ブロックの切断長を決めた結果、1ブロック当たりの高さは1㍍程度になった。コンクリートの切断は湿式のワイヤーソーで施工した。鋼材部については、当初は鉄ごと切断する案も試みたが非常に時間がかかり、ブレードの摩耗も激しかったため、現在の施工法に落ち着いた。
ロッキングピアの撤去設備 ロッキングピア撤去(ガス切断) ロッキングピア撤去(ワイヤーソー)
ロッキングピア撤去(引出し) だるま落とし状に撤去していく
撤去が完了したロッキングピア(左)、右写真は撤去部材
現場はP1の施工を完了し、P2の施工に入っている。P1は一昨年の12月から基礎工を掘り始め、基礎フーチング工が完成したのが昨年3月。そこから鋼製梁の仮設や地組みを行い、6月半ばに鋼製梁が所定の場所に据え、7月前半から8月半ばにかけてコンクリート柱部を打設。7月半ばから9月にかけて支承の設置、ロッキングピアを撤去した。「基礎から完成まで9カ月」(三井造船鉄構エンジニアリング(現:株式会社三井E&S鉄構エンジニアリング))。空頭制限、狭小なヤード、現場溶接の採用など「施工が困難だった」(西日本高速道路)。
支承の設置
施工を完了した追分橋のP1
側道を使って片側相互通行規制を回避
施工は両橋とも基本的に昼間に行うが、鋼製梁の搬入などについては夜間、国道1号を片側相互通行にして搬入した。また補修補強のうち、国道1号および京阪電鉄上空にかかる個所については夜間に施工している。
もっとも追分橋は「現場の道路条件に恵まれた」(西日本高速道路)。国道の脇に側道が1車線あり、これを国道1号本線とほぼ同様の幅員に改良し、そこを臨時に国道代わりとして使用することで3車線のうち2車線は必ず使えるようにしたため、国道1号の片側通行規制などをしなくても昼間の施工が可能になっている。
追分橋全景。3車線のうち2車線を常時確保し、片側通行規制を回避した
一方で足場を含めた部材の搬入は名神道の本線上から行う必要があり、その際は本線を車線規制している。
同工事では耐震補強の他に塗装の塗り替え(3種ケレン、当初発注では約14,700平方㍍)、腐食・損傷している部材の補修、検査路の取替なども行う予定だ。
ロッカーピアは631基、ロッキングピアも58基未対応
補強は「必須」ではないが……
追分橋のようなロッカーピアやロッキングピアは、名神高速道路でロッカーピアが27橋918基、ロッキングピアが8橋34基ある(詳細は別表)。「すべてを補強する必要があるわけではない」(西日本高速道路本社技術部)ものの、同形橋脚の耐震補強のケースとしては貴重な経験といえる。
関西支社管内でロッキングピア、ロッカーピアを有する橋梁、橋脚数
元請は三井造船鉄構エンジニアリング(現:株式会社三井E&S鉄構エンジニアリング)。一次下請は西日本高速道路メンテナンス関西、河西運輸、ハンシン建設、関戸工業、今村工業、ニッカ技研など。
耐震補強用の部材は、支承が川金コアテック、制振ブレース材は横河住金ブリッジ、アップリフト対策用緩衝ピンはシバタ工業、ヘッド付アンカーバーは東京ファブリックなど。