免震橋化しA1橋台への地震力を減少
通常の橋梁では、耐力超過箇所の直接補強を行うことが一般的だが、名神供用下において橋台基礎工の補強を行うことは現実的でない。そのため支承を免震支承に取り替えることによりA1固定橋台に作用する地震力を減少させることにした。
免震橋化(HDR支承)
免震橋化にすることで、他下部工(P1、P2、A2)も地震力に抵抗する構造となり、長周期化による地震力が減少、免震化による地震力の減衰を図ることが可能となる。その結果、A1橋台は基礎工を補強しなくてもよくなった。反面、A1橋台の地震時の伸縮量は大きくなる。通常なら伸縮装置を取り換えるが、名神高速道路は重交通路線のため現実的には難しい。そのため、シミュレーションを行った上で、地震時には桁衝突はやむを得ないとし、フィンガージョイントの損傷(セットボルトの破損などを想定)を最小限にとどめ、桁の落下や大規模な段差は起きないと結論し、セットボルトの取り換えによる早期復旧で対応するとした。なお伸縮装置は地震発生直後早い段階でセットボルトが飛ぶため、拘束により減衰作用を阻害することはない。
P1、P2は橋脚を付け替え
梁端部でロッキングピアをサンドイッチ
具体的には、P1、P2は現在のロッキングピアに代わり鋼製梁・コンクリート柱による複合合成橋脚に付け替える。現場は国道1号と側道あるいは京阪電鉄の軌道に挟まれた非常に狭小な空間であり、基礎フーチングの大幅な拡大は望むことができない。そのため基礎はミニマムな大きさになるよう深礎杭(直径4.5㍍および5㍍、深さ6.5㍍および8㍍)で設計、施工した。
基礎の掘削 ライナープレートの取付状況
鉄筋の組立 コンクリートの打設
狭い施工ヤード ロッキングピア
基礎の施工後は、夜間に鋼製梁部をヤード内に搬入し、ロッキングピアをサンドイッチする形で鋼製梁の端部を設置し、さらに新しい橋脚を設置する場所(ロッキングピア間の中央部)に設けたベント上へ梁本体部(脚頭部と端部を除いた梁)を配置、その高さまで両側の梁端部をジャッキで上げ本体と接合する。鋼製梁部をさらに同じように所定の位置までジャッキアップしてベントで仮設した後、下に型枠を設置してコンクリートを打設してRC柱部を製作する。
柱部のコンクリート打設 埋め戻し・転圧状況
鋼製梁は脚頭部がコンクリート充填構造化されるため、充填部には孔明き鋼板ジベルを採用、また天端にはスタッドをつけて板自体が遊ばないようにすることで合成効果を高めるよう工夫している。下部からは(鋼製梁の充填部に)鉄筋を差し込む形で配置しており、鋼製梁とコンクリート柱は剛結され合成構造化される。打設するコンクリートは充填性を考慮して高流動コンクリートを使用、鉄筋もSD345では鉄筋径がD51クラスになるためSD490に高強度化することで鉄筋径の太さをD38に2ランク落とし施工性を向上させた。
保全においてこうした合成橋脚を建設するのは西日本高速道路管内では初めて。
免震支承は全4橋脚に対し1ピアに2個所、計8基取りつけた。支承はHDRを採用した。1支点の設計反力はP1で420㌧P2で470㌧強。仮受けを一時的に新しい梁の上に設けて桁を受け替える。仮受けのジャッキは700㌧のものを使っている。
その後はロッキングピアをだるま落としの要領で約1㍍ずつ、10~11ブロックに分け切断するが、そこで(ロッキングピアが存在した部分に空いた)穴をふさぎ、その後に免震支承を設置し、完成となる。支点の位置は完成前後では変わらない。
軌条設備を用いて夜間に鋼製梁を搬入
ジャッキで吊り上げてドッキング
ロッキング橋脚廻りの地組状況
課題は鋼製梁部の搬入および製作。「現場はヤードが狭く、いきなりこのような大きな部材を持ってくることはできないため、名神高速道路の桁をかわした位置でブロックを組み立て、軌条設備を設けて油圧ジャッキで横引き、縦引きさせて初めて所定の位置まで運んだ。また、梁の両端部の接合は、梁本体部を反力にして、上部にジャッキを設けて所定の高さまで吊り上げて施工した。なおかつこの上の設備は梁全体が(供用時に予定している)所定の高さになると(空頭が狭く)組めないため、低い位置で接合し、その状態で全体的なジャッキアップを行った」(三井造船鉄構エンジニアリング(現:株式会社三井E&S鉄構エンジニアリング))。梁の幅は16㍍(脚頭部は3.4㍍)に及ぶ。そのため鋼製部材を使って軽量化、コンパクト化した。梁を軽量化することでRC柱の躯体および基礎も小さくすることができた。
隅角部の地組立 隅角部の横取り 隅角部の縦取り
リフトアップ(左の写真が施工前、右が施工後)
ジャッキアップ(左の写真が施工前、右が施工後)