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名神高速道路 蝉丸橋・追分橋の耐震補強

公開日:2015.03.16

 西日本高速道路関西支社滋賀高速道路事務所は、名神高速道路の蝉丸橋、追分橋の耐震補強を進めている。両橋とも名神高速道路が初供用された昭和38年7月に供用された橋梁で50年以上が経過している。1日交通量は両橋とも10万台を超える。桁下には京阪電鉄や国道1号、吾妻川、NTTの鉄塔などの道路や施設がある。適用示方書は両橋とも昭和31年鋼道路橋設計示方書であり、建設以来耐震補強は行われていない。「阪神・淡路大震災や東日本大震災レベルの大地震が生じて万が一落橋した場合、名神道の不通はおろか国道1号や京阪電鉄といった直下を走る構造物にも影響を与えることから耐震補強を進めている」(西日本高速道路滋賀高速道路事務所)。様々な制約下で特殊な耐震補強が施工されている注目の現場を取材した。(井手迫瑞樹)

 形式
 蝉丸橋は、名神道の大津トンネルと蝉丸トンネルの間に位置する橋梁で、全橋長78㍍(上り線)、88.2㍍(下り線)で、主径間が上下線ともに橋長62.1㍍の上路式鋼2ヒンジスパンドレルブレースドアーチ橋、側径間部は上下線ともRCラーメン(アーチ形状)だが、上り線はA2橋台側2径間に対し、下り線側は4径間(A1側はいずれも単径間)という構造だ。一方、追分橋は上り線が橋長97.643㍍、下り線が同106㍍の鋼3径間連続箱桁橋。こちらはロッキングピア(柱の上下にヒンジ支承を有している柱状の橋脚)を有している。


                 蝉丸橋諸元(左)、追分橋諸元(右)

直接的な補強を極力避ける
 重量の増加を抑制

 蝉丸橋
 現況の地震力照査(道示波に加えて鉛直成分を有するサイト波(建設地点における過去の地震発生履歴や周辺における活断層、地質、直下地盤性状など固有の地震地盤環境に基づいて求められる模擬地震波)を考慮し、有限変形理論により照査した)では、主要部材のほとんどが降伏に達し、特に主部材であるアーチリブや補剛桁の超過率は約1.5倍という結果になった。当然補強を行う必要があるが、耐震的な補強を行えば重量の増加を伴うため、補強箇所だけでなく他部材の応答値が増加することになり、更なる補強が必要になる。そのため、補強対策は中繋ぎ材追加による有効座屈長の低減、水平補剛材の追加による局部座屈耐力の向上などで担い、対傾構の一部を除いて直接的な補強を極力避けた。


                       蝉丸橋


                           蝉丸橋の補強概要

 例えば斜材は、制振ブレースに取り替えることで重量の増加を伴わず地震力を吸収できるように対策している。ただ、疲労設計を行った結果、一部で継手強度が足らない個所が生じたため垂直材疲労対策ブラケットで補強する。端横桁部もRC巻立てにより補強する。

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