3540㍍の海洋架橋を10年間で施工
伊良部大橋の建設を振り返る
LRB積層タイプ支承を採用
溶射などで鋼材部を防食
ジョイント
PCと鋼橋部間のジョイントについては、マウラースイベルジョイントを採用した。遊間部は600㍉程度もあるため、開口部から塩分が滲入しないよう極力密閉する工夫を施した。
アバット部のジョイントにはマウラージョイントを採用した。両方ともL2地震時の直角方向の移動量が確保でき、大きな変形が生じた場合でもこれを吸収できる全方向可動タイプのものだ。アバット部の遊間は400㍉あり非常に大きい。だが、止水ゴム1本当たり最大80㍉の伸縮量が確保でき、なおかつユニットの数により伸縮量に対応でき、理論上制限はないため採用した。
支承
PC・鋼橋部とも通常のLRB積層タイプを採用している。特にPC部は32径間連続桁のため、最大で420㍉の乾燥収縮作用による変形が生じる。そのためA1側で2回のポストスライドが必要であり、そのためにもゴム支承である必要があると考えていたためだ。しかし実際は、高強度コンクリートを採用した効果もあり、乾燥収縮によるひび割れが想定されたより出ていないため、2回目のポストスライドの必要はなかった。
また、塩害に備えて、支承プレート部分の防食には配慮しており、主航路部のプレート防食はSGめっき+ナイロンコート、PC部はアルミマグネシウム溶射をそれぞれ施した。
支承はLRB積層タイプを採用。溶射などで防食
地覆・高欄・舗装
高欄部は塩害に強いアルミ製を用いた。地覆は桁と同様、エポキシ樹脂塗装鉄筋と7㌢厚のかぶりを採用している。なお、地覆部の高欄と繋ぐための先出鉄筋のみ紫外線劣化を考慮し、ステンレス鉄筋を採用した。
アルミ製高欄、ステンレス鉄筋を採用した
舗装については、PC床版上についてはアスファルト系シート防水を施工した上で舗設した。
アスファルト系シート防水による床版防水 舗装工の施工
鋼床版上面はショットブラストによりつなぎの防食(無機ジンクリッチ)を研掃した上で防水をかねた基層としてグースアスファルトを施工した。
海中道路
海中道路は埋め立て面積1.4㌶、道路の有効幅員8.5㍍、埋め立て高さ7.5㍍という構造。施工は伊良部島から採石した捨石をダンプトラックより直接投入して表面を均した後、北側を被覆ブロックおよび南側を被覆石と消波ブロックを設置。車道部となる部分については底版および間詰コンクリートを打設し、堤体を立ち上げた後に舗装した。
環境対策として、施工前には2重の汚濁防止膜を設置すると共に、投入前の捨石の洗浄を念入りに行っている。台風接近時には築堤部を被覆ブロック等で仮巻きし、通過するまで待機した上で通過後に改めて施工した。
海中道路及び海中道路連絡橋
開通式典には多くの市民が参加し、喜びを分かち合った
池間大橋、来間大橋と合わせて宮古島市の長大橋は3橋目になる
池田石工の遺構(日本でも最古級と言われる石橋。沖縄、宮古の橋梁魂)
進化する沖縄の橋梁長寿命化技術
伊良部大橋の成果は既に沖縄県内の他の橋梁にも活かされている。新本部大橋など海岸線に近い橋梁は伊良部大橋の鋼桁部で採用された防食が用いられている。また、同じくコンクリート部についてもフライアッシュやエポキシ樹脂塗装鉄筋、エポキシ樹脂塗装鋼より線などが、橋梁の長寿命化を図る技術として採用されている。