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鋼床版厚が12㍉の既設橋部

新利根川橋でSFRCを用いて鋼床版を補強

公開日:2015.02.16

 WJによりグースアスファルトを除去
 22カ所で8㍉以上のデッキプレート報告亀裂を発見

 今次工事のフローは下の通り。


         施工フロー

 鋼床版調査・補修工を行うためには床版上面のグースアスファルトをきちんと除去しなければならない(そうしなければUTやMTで調査できない)。既設アスファルト舗装は2~3㌢を残して切削(鋼床版を傷付けないようにする配慮)した上でバックホウにより剥がしたが、グースアスファルトは接着力が強くはがれない。ショットブラストで除去するには非常に手間がかかることが予想されるため、ウォータージェット(WJ)により表面のグースアスファルトを除去した。


着工前の状況                   切削状況                バックホウにより剥がす

   一次研掃                               UTやMTにより調査

 除去後にUTやMTにより調査してみると、亀裂がデッキプレート方向に8㍉以上走っている箇所が22カ所、Uリブ溶接部のビード亀裂が17カ所で見つかった。また、以前の切削により上面に大きな傷が入っている個所も多数散見されている。前者は上から当て板、後者は下から当て板し、それぞれ補修した。


  デッキプレート方向に8㍉以上亀裂がある箇所は上から当て板(左)し、溶接部の亀裂は下から当て板(右)した

 補修完了後、ショットブラスト(150㌔/平方㍍を2回投射)により1種ケレン相当の研掃を行った上ですぐにエポキシ樹脂系の防錆材、次いで1週間以内にエポキシ樹脂系の接着材を塗布し、炭素繊維格子筋を施工厚さのちょうど中間の高さに配置した上でSFRCを打設する。


    ショットブラストで二次研掃        接着剤を塗布           炭素繊維格子筋を配置

 ここで用いているSFRCは低収縮型早強性SFRCである。普通セメントもしくは早強セメントに特殊混和材を入れることで1.5日程度の養生により、設計基準強度に到達できるよう材料設計しており、スランプは6.5㌢±1.5㌢程度まで硬くすることができる。


 スランプは6.5㌢±1.5㌢程度まで硬くすることができる     鋼繊維の混入量を減らして施工性を向上させた

 専用のサイロも必要としないためコンクリート製造工場の負担も少ない。SFRCもファイバーボールができないようにひび割れ抑制効果を確認した上で鋼繊維の混入量を従来の120㌔/平方㍍から100㌔/平方㍍に減らし、施工性を向上させている。その結果、収縮が材齢91日で-300×10の‐6乗程度に抑制でき、コストも既設床版の増厚で使われることの多かった超速硬SFRCの材料費と比べ70%程度縮減することが可能になった。
 SFRCの打設に際してはアジテータ車で運搬し、バックホウで敷き均し、コンクリートフィニッシャーで締め固める方式を採った。


       SFRCの打設(左はバックホウの敷き均し、右はコンクリートフィニッシャーの締め固め)

 また、ひび割れを抑制するために負曲げが生じる主桁直上に幅50㌢の炭素繊維格子筋を配置している。幅50㌢は従来の鋼床版補強時のSFRC施工と比べて約半分の幅。「FEM解析によって、その程度の配置で良いことを確認し」(鹿島道路)コストを縮減した。
 打設後のSFRC表面は冬季施工であること、河川上で風が強いことを考慮して、表面の乾燥を避けるべくエアキャップと「コンガード」とよばれる電気マットを上面に敷いてしっかりと封緘養生する。


     給熱マットを上面に敷いてしっかりと封緘養生    輪荷重走行試験機により動的疲労載荷試験

 SFRCの採用にあたっては、供試体(12㍉厚の鋼床版、当て板補修、40㍉のSFRCを打設したもの)を製作し、日本大学生産工学部において輪荷重走行試験機により動的疲労載荷試験を行い、所定の耐久性能を確認している。

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