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床版増厚等対策も約20年経過し再損傷

東北自動車道 福島須川橋で床版取替

公開日:2014.11.16

 東日本高速道路東北支社は、9月中旬から10月上旬にかけて、東北自動車道の福島須川橋下り線(福島管理事務所所管)において床版全面積(約800平方㍍)をプレキャストPC床版に取り替えた。今後の維持管理のモデルケースの1つとなる同工事について詳細を取材した。 (井手迫瑞樹)

 4橋の床版取替を順次施工

 1、劣化状況と対策  東日本高速道路東北支社は所管する東北自動車道福島須川橋下り線の床版取替えを施工中だ。疲労および凍結防止剤による影響が顕著で、平成7年に床版増厚を実施したものの、ポットホールや床版下面の剥離などが生じ、抜本的に対策するため、福島須川橋上下線および福島荒川橋上下線の4橋で床版取替えを実施するもの。今年秋に、福島須川橋の下り線、来年GW明けに福島須川橋の上り線と福島荒川橋の上り線、来年秋に福島荒川橋の下り線をそれぞれ施工する。


           福島須川橋(下り線)の橋梁概要

 同橋は昭和50年に供用された東北道福島西IC~福島飯坂IC間の一級河川須川を渡河する箇所にある橋長88㍍、有効幅員10㍍の鋼2径間連続鈑桁橋(RC床版)。同橋を含む区間の年平均交通量は約21,000台(下り線)だが、大型車混入率が3分の1の7,000台に達している。平成7年にはB活荷重対策として床版をSFRCで5㌢上面増厚しているが約20年経過し損傷が生じているため、抜本的対策として今回プレキャストPC床版に取り替える。


                         床版下面のコンクリート剥落および鉄筋露出状況

撤去した床版を見る。増厚床版界面近傍部の水平ひび割れ(左)、床版上面の土砂化(中)、端部の土砂化(右)

1立方㍍あたり15㌔の塩化物イオン量

 既設床版は、車両の大型化などによる輪荷重の繰り返しで生じたコンクリートの微細なひび割れや冬季間の凍結防止剤散布の影響によるコンクリート内部への塩化物イオンの浸透により、コンクリート床版の劣化や鉄筋錆が発生し舗装にもポットホールが生じている。平成25年10月には床版下面のコンクリートが剥落したが、その範囲は橋軸4.4×機軸直角1.3㍍という比較的大きな範囲で、剥落箇所を測定したところ1立方㍍あたり15㌔の塩化物イオン量が含まれており、塩害が構造物に顕著な影響を与えていることを確認している。
 上面増厚時には既に既設床版部が相当程度傷んでいたことが推測される。また、その際は床版防水を行っていなかったことに加えて、「増厚は全幅を数分割して行われたため、それによって生じる縦目地や地覆との取り合い部分から塩化物イオンを含んだ水が浸入していった可能性もある」(同社)。また、増厚時の接着界面は現在のようにエポキシ樹脂系接着剤を塗布していない。平成15年には再度補修を行い、床版防水も設置したものの通常のアスファルト系防水層であり、現在の基準ではグレードⅠにあたる。このような諸条件に加えて、2011年に起こった東日本大震災の影響により大型車も含めた交通量が一時的に著しく増加したため、損傷を促進したことも考えられる。
 実際の撤去時にも切削面から漏水が発生しており、増厚コンクリートと建設時の床版の間に滞水していたことが伺われた。また、撤去した床版を見ると上側鉄筋近傍や増厚海界面付近に水平ひび割れが生じており、表面は土砂化している。また地覆部には雑草が生えるなど端部からの水の侵入による影響が顕著だったことが伺える(上写真)。鉄筋も腐食により細くなっている状態(設計φ19㍉が14㍉に)も見られるなど凍結防止剤による塩害の影響も確認された。

目地部の品質を最大限向上  エポキシ樹脂塗装鉄筋を採用

 そうした点を踏まえて、プレキャストPC床版への全面打ち取り替えに際しては橋梁の全幅員を1つのプレキャスト部材として製作し、さらに工場で地覆の立ち上がり部、高さにして16㌢までを予め施工して現場に搬入することで弱点となる床版と地覆の目地部の品質を最大限向上させている。また、目地コンクリート部は現場打ちとなるが、これもプレキャスト部材と同様の形状で全幅および地覆までを一体化した型枠施工により打設している。比較的塩化物イオン浸透による錆の影響が出やすい場所打コンクリート部の鉄筋については、エポキシ樹脂塗装鉄筋床版防水は高性能床版防水(グレードⅡ)を採用するなど耐久性向上に努めている。


          現場打ちでも地覆までを一体化して施工(左)、エポキシ樹脂塗装鉄筋を一部採用(右)

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