同橋は、床版にひび割れが発生しやすい構造に加え、老朽化や重交通による劣化の影響もあり、平成21年の床版詳細調査では、写真-2「下面状況写真」に示すように、A1-P1間の床版打継目までおびただしい数のひび割れが確認されている。また、それ以前の詳細点検等においても、床版下面のひび割れや鉄筋の露出、鋼桁ハンチ部からの泥漏水が確認されており、同時にポットホールの発生が頻繁に報告されるようになった。(写真-3)こうした床版損傷に対して、応急対策として平成25年度の集中工事では樹脂注入などを施していたが、床版本体の抜本的補修が必要と考えられた。
写真‐2 下面状況写真(デジタル画像によるひび割れ調査) 写真‐3 路面及び床版下面の損傷状況
3.施工方法の検討および設計細部に関する事項
過年度のスパン別劣化度判定においてA1-P1間で劣化が著しく緊急な補修が必要、P1-A2間は劣化が大きくなりつつあり適切な時期に補修が必要と判定されたことから、A1-P1間を床版取替え、P1-A2間を床版上面増厚として施工方法の検討を行った。また、現場条件を整理した結果、当該区間は上下線の間に高低差のあるセパレート区間であるため、下り線を対面通行にしようとしても、構造上『上り方向が八王子JCTに接続できない』という結論に達した。このことから片車線規制による半断面ごとの施工方法の検討を行うこととした。以下にその主な概要を示す。
① 施工時期は、昼夜間の連続車線規制が必要な工事であるため、毎年5月に実施している中央道集中工事をターゲットとした。
② 重機の配置は、セパレート区間の上下線空間部(NEXCO所有地)の活用により、追越車線についても走行車線と同様にクレーンなどの重機が車線の高架下に配置が可能であると判断した。
③ 床版の施工目地は、現行の車線運用では構造中心と車道中心のズレが大きく、床版取替え時の規制形態を考慮すると施工目地を構造中心付近とする必要があった。そこで、橋梁幅員10.7mのうち左路肩の余裕を活用して、橋梁を含む前後の区間(約412m)を走行車線側にシフトさせ、車線センターを構造センター近傍の縦桁位置に合わせて交通運用を行うこととした。(図-2)以上の検討を踏まえ、床版取替にあっては、これまで高速道路における半断面プレキャストPC床版(以下「PCaPC床版」という)の取替実績はないものの、施工は可能であると判断した。また、隣接している床版上面増厚工法は、床版取替えに伴う工事ヤードが制限されるなかで、集中工事での施工は可能であると判断した。図-3に補強範囲の概要図を示す。
(左)図‐2 施工目地を構造センターとするための走行車線シフト (右)図-3 補強範囲の概要図
図-4 PCaPC床版配置図