白鬚橋はグレーチング床版を鋼床版に全面取り換え
蔵前橋で床版上コンクリートを打ち替え バックルプレートも一部交換
白鬚橋は昭和3年9月に着工され、昭和6年6月に竣工した橋長169.8㍍、幅員22.8㍍の鋼ブレースドリブタイドアーチ(中央径間部)+ポニートラス(即径間部)橋。明治通り上の隅田川渡河部(東京都墨田区堤通り~荒川区南千住)に架かる橋梁だ。関東大震災での被災は免れたが、当時の橋梁が木橋であったことや老朽化していたことから、民間が賃橋として運営していた権利を当時の東京府が買い取り、都市計画事業として新たに建設したもの。建設時の設計は増田淳(増田橋梁事務所)、下部工は大林組、桁製作は川崎造船所、桁架設は宮地鉄工所(現宮地エンジニアリング)が担当した。白鬚橋の名前は近くにある白鬚神社に由来する。塗装色は優美な白色である。
グレーチング床版から鋼床版に取り替え 慎重に取り替えている
配置された鋼床版 白髭橋全景
今回の長寿命化対策は現状のグレーチング床版を12㍉厚のバルブリブ型鋼床版に取り替えるもの。元々建設当初はRC床版だったものを昭和46年にグレーチング床版に打ち替えており、今回の取替えは43年ぶりとなる。
グレーチング床版から鋼床版に変更することで耐久性の向上はもちろん、床版部の重量を1,250㌧から750㌧に軽量化することができる。
P1、P2のケーソン基礎の耐久性が、平成8年道路橋示方書の基準に照らし合わせると「少し足りず、若干地震時の水平力を弱めてあげる必要がある」(第六建設局・高瀬照久氏)ため、補強の必要があったが、基礎をいじる大規模な補強は難しい。そのため、上部工を軽量化することで「ケーソン基礎にかかる地震時の水平力を1割程度減少させることができるため下部工や基礎の補強を不要にした」(第六建設局・高瀬照久氏)もの。
床版取替えは橋上での作業を伴う。主要幹線道路である明治通り上に位置しているため、約7ヶ月間警視庁と協議を行った上で施工計画を立て、実施においては交通車両に配慮しながら慎重に施工している。取替え面積は2,720平方㍍でこれを3等分し、下流側、中間部、上流側の順に取り替えている。長さ約4.42㍍×幅2.5㍍以内のサイズを1パネルとしてグレーチング床版を切断撤去し、鋼床版に取り替えるもので、切断に当たっては、ダイヤモンドカッターが桁を傷つけないように、切断位置を調整しつつ、慎重に作業している。また、付近の住民に配慮して撤去した床版は、別の場所に運んだ上で破砕処理している。
鋼床版の架設に当たって一番難しかったのは接合部の取り合い。新設橋であれば工場で予め桁と孔明け位置を合わせた上で添設してもほとんど支障は無いが、既設橋では図面と微妙に異なることが多く、床版に予め添設孔を設けず現場で位置を照らし合わせながら、孔を明けることで解決している。また、長期耐久性を確保するため添接部近傍については1種ケレンを施した上で弱溶剤系のポリウレタン樹脂下・中塗り、ふっ素樹脂トップコートによる重防食塗装を施している。
足場は桁下全面に設置しているが、隅田川渡河部に位置しているため、行き来する船舶の航路幅40㍍を確保しなければならず、「全面足場ではあるが、中間部から足場内に入ることはできず、両側から入らなければならないため多少手間を要している」(元請の宮地エンジニアリング)。
床版工事とは別にアーチ部下弦材の当て板補強とゲルバー部橋軸直角方向の変位制限装置も新たに設けている。
白髭橋長寿命化対策工事概要図
設計は日本構造橋梁研究所。元請は両橋とも宮地エンジニアリング。