道路構造物ジャーナルNET

-分かってますか?何が問題なのか- ③「道路メンテナンス会議」は本当に機能し始めたのか

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2015.07.01

2.天井板落下事故で類似している米国・ボストBig Digと中央道・笹子トンネル

 

写真‐2 米国・ボストンBig Digテッド・ウイリアムズ・トンネル事故

 笹子トンネルの天井板崩落事故の6年前、ミネアポリス橋梁崩落事故の1年前である2006年7月10日、米国・ボストン高速道路のテッド・ウィリアムズ・トンネルにおいて天井板が崩落する事故が発生、不幸にして走行中の車両1台が押しつぶされ1人が亡くなられた。事故の詳細は、1993年に建設された市街地トンネルにおいて、最上部のコンクリート内壁から鋼材によって吊り下げられた約2トンの天井板10枚が落下した事故である。事故の詳細、事故の原因とも中央道・笹子トンネルの天井板落下事故と類似している。  笹子トンネルの建設年次は、1977年であることからBigDigトンネルより16年前に建設されたトンネルである。

写真‐3 天井板崩落で押しつぶされた車両

 私が大きな問題と感じていることは、海外情報の把握と問題意識の薄さがあるのではないかということである。Big Digトンネル事故の1年後に発生したミネアポリスの橋梁崩落事故は国内で大々的に取り上げられ、現地調査団を組織・派遣、直ぐに「国の有識者会議」設置、その後の適切なメンテナンス実施への取り組みを全国的に展開している。

写真‐4 ミネアポリスI-39W崩落事故2007年8月

 ではなぜ、ボストンBig Digでの天井板落下事故発生を教訓として活かせなかったのかということである。私の記憶では、ボストンBig Digも韓国の清渓川(チョンゲチョン)と同様に環境改善を目的として市街地高速道路を地下化した代表的な事例として、日本の行政技術者が山のようにボストン市を訪問し、関連資料を持ち帰っているはずである。  ボストンを訪れた行政技術者の多くは事故を知れば、「なぜ事故が起きたのか? 国内のトンネル設備は大丈夫か」と考えるはずである。しかし、残念ながら事故は報道もされずに、活かされもしなかったのが事実である。ボストンBig Digと同様な事故は国内には起こるわけはないと高を括っていたのではないだろうか。とても残念である。日ごろから海外に向けた情報収集、情報発信をテーマとして行っているはずの産官学の技術者は何を行っていたのか? 中央道・笹子トンネルの事故が起こった時にニューヨークの大学教授が私に「日本人は米国に何を学んで、どのように生かしているのですか? 笹子トンネル事故には、アメリカの教訓は生かされなかったのですか?」と問いかけられた時には日本の技術者として恥ずかしい思いがした。今年もまた多くの日本の技術者が海外の多くの国を訪問し、情報収集にあたっているが国内に活かされるのであろうか?

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