-分かっていますか?何が問題なのか- ㊽高齢橋梁の性能と健全度推移について(その5) ‐将来に残すべき著名橋になすべきことは‐
これでよいのか専門技術者
(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員
髙木 千太郎 氏
プレートガーダー橋・桁橋編を構造ごとに説明
2.構造の違いが健全度に影響するのか
対象橋梁数は2,385橋と、これまでと異なり約3倍に膨れ上がる。その理由は、1橋梁でも複数径間であれば構造が異なるのが一般的で、構造別の分類を行おうすれば径間を考えるので当然。対象数は増える。現行の定期点検では、複数径間ある橋梁の場合は、最も健全度が悪い径間を当該橋梁の健全度として評価している。ところが、これでは構造形式ごとの健全度を正しく表すことはできず、分析はできない。そこで、複数径間ある橋梁の場合は、各径間を構造別に再分類し、先に示した構造別に区分けし、その結果を使って構造形式別と健全度の影響分析を行っている。それでは、構造形式別の分析結果について説明を始めよう。
2.1非合成桁橋
非合成桁橋は、管理している径間数としては最も多く、全体の40.3%である962箇所である。架設年次による健全度の影響分析の際にも述べたが、今回の対象橋梁(正しくは対象径間)も当然明治年間から平成年間まで長期間にわたっている。
当初ランクが健全なAランク橋梁は、24.4%の235箇所である。ほぼ健全なBランク橋梁は、20.7%の199箇所である。やや注意のCランク橋梁は、39.6%の381箇所となっている。注意のDランク橋梁は、12.2%の117箇所である。最悪評価の危険Eランクは、3.5%の30箇所であった。概ね健全と評価される箇所は、45.1%とほぼ半数が管理上大きな問題ないといえる。10年経過した3回目の定期点検結果では、Aランク橋梁が14.3%の138箇所、Bランク橋梁が20.5%の197箇所、Cランク橋梁が40.7%の392箇所、Dランク橋梁が24.5%の235箇所、Eランク橋梁は0であった。概ね健全レベルの橋梁群は、10.3%減少し34.8%となった。中央値のやや注意Cランク橋梁は数字的に大きな動きは無いが、管理上問題とするDランク橋梁が12.3%増加した結果となった。
しかし、危険と判断されるEランク橋梁は、措置したことから皆無となった。非合成桁橋の健全度ランク推移グラフを図‐8に示す。健全度推移グラフを見て感じることは、AランクからDランクまでバランス? がとられたように、程よく散在している。標準的な構造形式で、古い橋梁から新しい橋梁まで存在し、ある程度の規模数があるとこのようになると思う。
2.2 非合成箱桁橋
次に非合成箱桁橋は、構造的に考えても優位性が低いことから当然数は少なく、1.6%の38箇所である。当初ランクが健全なAランク橋梁は、44.7%の17箇所である。ほぼ健全なBランク橋梁は、13.2%の5箇所である。やや注意のCランク橋梁は、42.1%の16箇所となっている。注意のDランク及び危険Eランクはなかった。10年経過した3回目の定期点検結果では、Aランク橋梁が31.6%の12箇所、Bランク橋梁が7.9%の3箇所、Cランク橋梁が28.9%の11箇所、Dランク橋梁が31.6%の12箇所、Eランク橋梁は0であった。非合成桁箱橋の健全度ランク推移グラフを図‐9に示す。比較的新しい橋梁が多く数も少ないが、剛性が高くたわみ難いことから健全度も比較的良く、推移も比較的落ち着いている。
2.3 合成桁橋
合成桁橋は、管理数としては2番目に多く、19.8%の473箇所である。管理数としては、高速道路会社の場合は、建設年次と合理的設計法導入などから非合成桁橋よりも合成桁橋の数が多いと考える。当初ランクが健全なAランク橋梁は、16.9%の80箇所である。ほぼ健全なBランク橋梁は、26.8%の127箇所である。やや注意のCランク橋梁は、35.3%の167箇所となっている。注意のDランク橋梁は、6.9%の47箇所である。最悪評価の危険Eランクは、11.0%の52箇所であった。
10年経過した3回目の定期点検結果では、Aランク橋梁が4.9%の23箇所、Bランク橋梁が21.8%の103箇所、Cランク橋梁が60.5%の286箇所、Dランク橋梁が12.8%の61箇所、Eランク橋梁は、非合成桁橋と同様に0であった。概ね健全レベルの橋梁群は、17.0%減少し26.7%となった。中央値のやや注意Cランク橋梁は35.3%が25.2%増加し60.5%と半数以上がCランクとなった。数字的に大きな動きは無いが、管理上問題とするDランク橋梁が5.9%増加した結果となった。合成桁橋の健全度ランク推移グラフを図‐10に示す。
健全度推移グラフの着目点は、非合成桁橋との対比である。設計基準の推移の際にも話したが、経済設計を追求した時代の配慮不足の橋梁が混在するからか、全体として健全なランクが少なく、やや注意レベルの橋梁が多くを占めている。このグラフを見て、合成桁形式イコール短命と考えるのは短絡的である。非合成桁と合成桁については、また別途詳細に話をする機会を作ることとしよう。
2.4 合成箱桁橋
合成箱桁橋は、3.5%の83箇所である。非合成箱桁と比較すると2.2倍管理数として多かった。当初ランクが健全なAランク橋梁は、14.5%の12箇所である。ほぼ健全なBランク橋梁は、60.2%の50箇所である。やや注意のCランク橋梁は、24.1%の20箇所となっている。しかし、危険Eランクは1.2%の1箇所が予想に反して存在した。
10年経過した3回目の定期点検結果では、Aランク橋梁が8.4%の7箇所、Bランク橋梁が10.8%の9箇所、Cランク橋梁が61.5%の51箇所、Dランク橋梁が19.6%の16箇所、Eランク橋梁は0であった。合成箱桁橋の健全度ランク推移グラフを図‐11に示す。
全体的に見ると、健全なAランク、Bランクが多く、推移も大きな変動が無い。しかし、BランクからBランク3度目がDランクとなった橋梁が18%の15橋もあったのは驚きである。それも、Bランクから一気に危険なDランク評価となったのは、データーとして可笑しいので、再調査が必要と思った。
2.5 鋼床版I桁橋
鋼橋しかない鋼床版桁橋は、5.8%の139箇所である。当初ランクが健全なAランク橋梁は、20.9%の29箇所である。ほぼ健全なBランク橋梁は、24.5%の34箇所である。やや注意のCランク橋梁は、45.3%の63箇所となっている。注意のDランク橋梁は、5.0%の7箇所、危険Eランクは、4.3%の6箇所であった。
10年経過した3回目の定期点検結果では、Aランク橋梁が11.5%の16箇所、Bランク橋梁が20.9%の29箇所、Cランク橋梁が59.0%の82箇所、Dランク橋梁が8.6%の12箇所、Eランク橋梁は0であった。鋼床版I桁橋の健全度ランク推移グラフを図‐12に示す。
鋼床床版桁橋は、変状として多いのは腐食が第一であり、問題の疲労亀裂は数少ない。全体としてCランクからの推移、Cランクへの推移が多いのは、やはり鋼材の防食機能の劣化、鋼材の腐食が多い。
2.6 鋼床版箱桁橋
最後が、鋼床版箱桁橋である。鋼床版箱桁橋は、3.3%の79箇所である。当初ランクが健全なAランク橋梁は、19.0%の15箇所である。ほぼ健全なBランク橋梁は、58.2%の46箇所である。やや注意のCランク橋梁は、22.8%の18箇所となっている。注意のDランク橋梁及び危険Eランクは0箇所であった。
10年経過した3回目の定期点検結果では、Aランク橋梁が10.1%の8所、Bランク橋梁が24.1%の19箇所、Cランク橋梁が63.3%の50箇所、Dランク橋梁が2.5%の2箇所、Eランク橋梁は0であった。鋼床版箱桁橋の健全度ランク推移グラフを図‐13に示す。
鋼床版箱桁は、鋼床版I桁と比較して剛度は高い。全体的にAランクからCランクまでバランス良く散在しているが、推移として大きな変動が少ないと感じた。以上が、非合成桁橋から鋼床版箱桁に関する健全度及び健全度ランクの推移について分析した結果を説明した。話を始める前は、全構造形式を当該編で取り纏めようと考えたが、全てを説明するとボリュームがかなりの量となるので、前年の反省を生かし、残りを次回以降に分割して説明することとする。