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第48回 鉄道橋梁の架け替えについて

次世代の技術者へ

JR東日本コンサルタンツ株式会社

石橋 忠良

公開日:2023.12.01

桁の施工
 内房線姉ヶ崎橋梁と磐越東線夏井・小野新町間の新橋架設例をひも解く

2.2 桁の施工
 鉄道線路を仮線で横に移動して、元の場所に新しい橋梁を造る工事なら、施工は一般的な方法が可能です。工期も一般に十分とれるので、支保工での施工や、カンチレバーでの施工など自由に工法を選べます。

2.2.1仮線施工の例1)
 仮線施工で改築した内房線の姉ヶ崎橋梁を紹介します。
現橋梁の下流側に借地をし、仮盛土、仮橋梁を造った後、線路を仮線に切換え、元の線路位置に新橋梁を造り、その後に、線路を新橋梁側に戻しています。施工手順を図3に示します。


図3 仮線施工で改築した内房線の姉ヶ崎橋梁の施工手順

 図4、写真4に、姉ヶ崎橋梁を示します。


図4 姉ヶ崎橋梁一般図 / 写真4 供用中の内房線姉ヶ崎橋梁

2.2.2活線施工の例
 橋梁延長が短く、線路の線形を変えないで橋梁のスパンを大きくする場合は多くは、活線施工での横取り工法が採用されます。現在の橋梁の隣に新設の橋梁を造り、列車の通らない数時間を確保して、在来の橋梁の撤去と、新設の橋梁の架設を行う方法です。隣に造った橋梁を横に動かして、本来の位置に据え付ける方法です。滑らす方法はPTFE(テフロン)板付きのゴムシューをステンレス板や、クロムメッキした鋼板の上に置き、その上に桁を載せてジャッキで動かすことが多く行われています。今はダブルツインジャッキで、連続的に移動させることができます。PTFE板付きのゴムシューはそのまま本設のシューとします。水平移動防止装置は別途施工します。

(1)架線のない区間の桁の横取り2)
 磐越東線夏井•小野新町間の現橋梁(16m×2連)から、位置を200mほどずらした計画で河川と交差する新橋梁(L=53m)に改築した例を紹介します。これは河川改修事業で行われています。写真5は、桁の横取り前、写真6は横取り後です。


写真5 桁の横取り前 / 写真6 桁の横取り後

 図5はこの橋梁の下部工です。線路内の工事をすくなくするために線路の外に杭を施工し、線路下の桁を受ける梁は、線路の外から、挿入した鋼角に鉄筋とコンクリートを充填して杭と接合する構造としています。図6は桁の側面図、図7は横取り架設の概要図です。図8は横取りの設備の全体図です。


図5 磐越東線夏井•小野新町間の新橋下部工一般図 / 図6 磐越東線夏井•小野新町間の新橋側面図

図7 横取り架設概要図 / 図8 横取り設備全体図

 表1は横取り架設の工程の計画と実績です。単線で、架線がない事例となります。


表1 横取り架設の工程の計画と実績

架線のある区間での横取り架設~斉内川橋りょうの施工例~

(2)架線のある区間での横取り3)
 次の例は同じく単線ですが、架線のある事例です。写真7に横取り前の状況を示します。写真8に横取り後の列車の通っている状況を示します。写真9は横取りに用いているジャッキです。連続的に牽引できます。図9は旧橋梁と、新橋梁の側面図です。


写真7 斉内川橋りょう横取り前 / 写真8 斉内川橋りょう横取り後

写真9 ダブルツインジャッキを用いた施工 / 図9 旧橋梁と新橋梁側面図

 表2は横取り架設の工程の計画と実績です。

 

 架線がないか、架線があってもランガーのアーチの高さを、架線の位置よりも低くできるなら、横取りの時に架線の撤去、再施工の工事が不要となります。
架線があり、スパンが大きく、桁高さが大きく、横取り時に架線と当たる場合は、架線を横取り前に撤去して、横取り後に復旧する作業が必要になります。そのための時間と、工事費が必要となります。
 桁下の位置を向上することが必要な場合もあります。その場合、桁の構造のみで対応できば良いが、レールの高さを変えないと対応できない場合は、橋梁の前後も含めて軌道を扛上することが必要となります。桁の横取りの当日に軌道扛上も一緒に実施する場合と、事前に軌道扛上をしておく場合があります。当日の作業量や、列車を止められる時間に応じて、事前作業の範囲を選ぶことになります。

 表1,2を見ると、桁の横取りの作業は1時間程度で終えています。事前のレール撤去や、既設桁の撤去、事後のレールの接続などは当日にやらざるを得ない作業です。その他の作業は横取り当日の作業時間が少ない時は、事前に準備するなどで対応することも必要となります。

最近増加しているJES橋台について

2.3 橋台の構造4)
 架け替えには架け替えには橋台、橋脚が先に施工されます。橋台の構造は、最近はJES橋台が増えています。JES橋台とは、線路下に角型鋼管(JESエレメント)を何段か差し込み、線路の外側に柱と基礎を造り一体化した門型の橋台です。基礎は線路外に施工でき、また桁を受ける梁は線路外から角型鋼管を挿入して造るので、列車への影響が少なく施工できるので、経済的にも、工期的にも優れています。図10に施工手順を示します。図11は橋台側面図です。横取り前に、線路下に橋台を造っておきます。
 過去に多く行われている方法は、工事桁で軌道を受けておき、その下を掘削して橋台を造る方法です。地下水対策がコストをかけずに可能ならばこの方法でもよいでしょうが、地下水対策が必要になるとその工事費が大きくなり、コスト面で不利となることが多いです。


図10 JES橋台の施工手順 図11 橋台側面図

【参考文献】
1)村上和也,津吉毅、柳原雅樹、高木秀太郎;内房線姉ヶ崎•長浦間姉ヶ崎橋梁上部工の施工、SED19号、JR東日本構造技術センター、1002.11
2)湊 卓也、鈴木隆裕;磐越東線夏井川谷津作橋りょう横取り架設.SED40号。JR東日本構造技術センター、 2012,12
3)坂本峻、木村正喜、鈴木隆裕、小林香野;開床式PRCランガー桁の施工、SED57号.JR東日本構造技術センター.2021.5
4)松沢智之、瀧内義男、影本多加夫、高木芳光;HEP工法による活線における橋台の構築(奥羽線野呂川B).SED12.JR東日本構造技術センター、1999.5

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