コンクリート系床版 UFC、PC床版など
“The devil lives in a detail.
コンクリート系の軽量床版として、UHPFRC(略してUFC)床版が最近使われているようです。
以前、羽田のD滑走路で施工されている状況を見学させていただいた時に、UFCパネル間の継目が現場打ちなので、そこからの水漏れが心配になった記憶があります。UFCも鋼材も、単体としては耐久性はOKかもしれませんが、接合部や継手部が必ず存在し、そこが弱点になる場合が多いようです。鋼構造の場合は、溶接やボルト継手部ですね。
“The devil lives in a detail.” (悪魔は重箱の隅に宿る)です。
■継手の話
鋼構造の場合、今の継手は溶接か高力ボルトですが、昔はリベットでした。
東京タワーはリベットですが、スカイツリーは溶接ですね。東海道新幹線頃から鋼橋は溶接が主流と教わっています。当時までは現場継手はリベットでしたが、その後はほとんど高力ボルトでしょうか。最近は、防食や見た目の面から現場溶接も増えてきているようです。
20年くらい前と思いますが、TGVの合成桁の架設現場を見せてもらったときに、何で現場溶接?と質問したら「エステティック」が答えでした(TGVも初期の橋はPCでしたが、後の方はほとんど100%合成桁を採用しているとの話でした)。
TGVの合成桁 現場溶接を採用している(筆者提供)
因みに、最近海難事故で話題になったタイタニックもリベット構造で、以前の映画の中で、氷山にぶつかったときにリベット継手部が破断する場面を覚えておられる方も多いと思います。何れにしても、リベットから溶接に替わって、だいぶすっきりして軽くなりました。船は今は完全に溶接ですが、軽量化と引き換えに、脆性破壊や疲労の問題に憑りつかれることになります。飛行機は、疲労に弱いので、未だにリベットですね。
そういえば、鉄骨や橋には高力ボルトを使いますが、高力ボルトの船は聞いたことがありませんね。確かに重くなるのと、水漏れの問題があります(沈没します)。
高力ボルトは、リベットに比べて施工は容易になりましたが(軸力管理や摩擦面の管理は増えましたが)、水漏れや腐食による軸力抜けなど、耐久性ではリベットよりも劣っているかもしれません。因みに、リベットは頭がなくなっても大丈夫ですが、高力ボルトは軸力が抜けてしまいます。
フォース橋や紀ノ川橋梁など、リベット橋は100年以上経っても現役で頑張ってますが、高力ボルトの橋が100年もった事例は、未だありません。高力ボルトの橋は、リベット橋よりも苦労するかもしれませんね(逆に言えば、技術開発の宝庫かもしれません)。
フォース橋(筆者提供)
■おわりに
以上、初回としてはこんなところでしょうか。
特に結論めいたものもありませんでしたが、白黒決着をつけることを求められてはいないと思います。次回はもう少しテーマを絞って書いてみたいと考えてます。拙い文章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
と書いたところで、静岡の落橋事故のニュースが入ってきました。先ずは、亡くなられた方のご冥福と、怪我をされた方のご快復を心からお祈り申し上げます。
私は架設の経験もなく、架設に関しては素人同然なので、コメントは差し控えようと思いましたが、他の執筆者の方もコメントされるということですので、素人ながら以下のようなことを考えてみました。
事故原因については、これからの調査で明らかにされると思いますが、橋脚の梁端部から桁が落下したように見えますので、桁が梁端部よりも外側に転がり落ちないような落下防止装置(ステイケーブルのようなもの)があれば、梁上でバランスを崩しても下に落ちることはなかったのではと思いました。以前見学させていただいた桁の送り出し工事で、桁が暴走した時のためにストッパーやアンカーケーブルのようなものを設置されていたような記憶があります。
人も機械も必ずエラーは生じるものと考えれば、それらを想定した上で、フェールセーフ的な装置は必要と思います。今回も当然設置してあって、それでも落ちたのかもしれませんが、何れにしても調査結果待ちですね。いつも言われることですが再発防止が業界挙げての責務と思います。(次回は9月1日に掲載予定です)